―023― 聡介とスケルトン ※一部改定
聖水を500mlで50ギル→500ギルに修正しました
―023― 聡介とスケルトン
あれから緊張がほどよくほぐれた一行は、スケルトン以外の魔物に合うことも無く順調に坑道を下っているところだ。
あれからしばらくして1体のスケルトンにまたもや出会った一行だったが、今度はそれを聡介がきっちりと葬った。
人間の骨格ではあるが生の人間では無かったから普通に躊躇せずに切れたのかな?というのが聡介の内心である。
一方ジョージ達はというと、骨だけとはいえ人間と姿が似ているスケルトンは少し躊躇するんじゃないかな?と思っていただけに、聡介が簡単に斬ったのを見ると拍子抜けした。
そして、実はそれ以外にも驚いたことがある……というよりもこちらの方の驚きが強いぐらいなのだが……。
それはなんと聡介の剣がスケルトンの首を斬り飛ばした時に起こったものだった。
通常ならば斬り飛ばしたならばそのまま頭蓋骨が地面に叩きつけられるのだが、聡介がクラウ・ソラスで斬り飛ばして頭蓋骨が宙に舞った瞬間、頭蓋骨は灰色の霧となってそのまま空中に霧散した。
今まで見たことが無い突然の光景に目を見張る3人が聡介の剣を見たが、黄金色に輝く以外は呪文を彫った跡も何もない。
《私には不浄を浄化する力があるんです。アンデッド系などの敵ならば、剣先が触れる程度で相手は触れられた箇所が吹き飛ぶぐらいの威力ですよ。直撃すれば言わずもがな……ですね♪まぁ正確にいうならば、触れた場所を起点に私の光の精霊としての力を爆発させて吹き飛ばしているって感じですね》
剣に視線を落とした聡介に、聡介だけに分かるような小声で教えてくれたのはクラウだった。
一人この現象がなぜ起こったのか理解して、なるほどと言わんばかりに納得の表情をうかべた聡介に、後ろから近づいた3人が声をかける。
「ソウスケ、今何やったの!?」
真っ先に口を開いたのは、はたして好奇心旺盛なエミリーである。
といっても、その横に並ぶジョージもジャックもいかにも興味津津と言ったかんじに剣を見つめている。
「……え~っと、この剣に浄化作用があるのを忘れてた……」
「「「浄化作用ですって!?(だと!?)(だって!?)」」」
クラウに今教えてもらったことを簡潔にまとめていうと3人は予想以上に驚いて返事を返してきた。
狭い坑道に響いたほどだったので聡介も少々驚いた。
そんなに大声だしてもいいのだろうか?とは思ったが場の空気的にも聡介はその疑問はスルーした。
「……おいおい、浄化作用なんていったら超一級品じゃねぇか」
ふ……所詮俺達には手の届かない武器さ……などと言いつつ、この狭い坑道で明後日を見るような遠い目をするジョージの目には一体何が映っているのだろう。
冒険者とは本当にトップレベルにならないと贅沢な暮しはできない意外と世知辛い職業なのだ。
その分、財宝や高額懸賞金などの一攫千金、夢一杯、希望一杯なのが売りなので冒険者に憧れる若者は後を絶たない。
話を戻して、その背中に本格的に哀愁が漂い始めたところでジャックが話を変えようと聡介に話しかける。
「あ~、でもそれだとソウスケの訓練にならないなぁ……。う~ん、エミリー。エミリーの剣を聡介に貸してあげれる?」
このアンドッドひしめくダンジョンではあまりに反則装備なので訓練になりそうにないと判断したジャックは、聡介にその剣を貸すようにエミリーに言うが、そこに聡介の爆弾が落とされた。
「あ。エミリーの剣にもその効果あるかも……」
…………
…………………
…………………………
「謀ったなぁぁぁ!!エミリィィィィィィィィィィィィィィ!!!」
「し、知らないわよ、そんなことぉ!!」
血涙を流しながら、エミリーの方に振り返るジョージはもういっそ哀れにしか見えない。
エミリーはそんなジョージにたじろいでいて、ジャックはといえば、あちゃ~……といいながら呆れた表情をしている。
数分後、ジャックになぐさめられたジョージは見事に復帰して先頭を歩いて坑道を進んでいく。
だがしかし、その背中からは次に出会った魔物に憂さ晴らしをしてやるといわんばかりの気迫がゆらゆらと揺らめいている。
しかし哀れにも敵は後方からやってきて、それはエミリーが早々に退治してしまった。
斬り飛ばしたスケルトンが灰色の霧に変わって霧散するのを見たエミリーは、本当に自分の剣に浄化作用があると知って大喜びだ。
対するジョージは敵を視界に捉えて憂さ晴らしをしてやると意気込んだにもかかわらず、剣を抜く間もなく戦闘は終了してしまったので沈んでいる。
そして、口を尖らせて更に拗ねてしまったジョージを先頭に進んでいくと今度は前方の曲がり角からスケルトンが出てきたが、もうヤル気が無くなったのか無造作に剣を振るって倒してしまった。
無造作といっても、スッパリと頭蓋骨を一刀両断にしたのは流石といったところだろうか。
その後も、何度かスケルトンが出てきたが、あとは聡介の訓練ということで、聡介が全部倒していった。
無論ジャックと剣を一時的に交換してやっているので、ちゃんと聡介の力にはなっている。
そうして進んでいくと、一行はそこそこ広い大きさの部屋にたどり着いた。
そこには既にリッチという先客が部屋の中央付近に陣取っていて、その脇には操られてしまったのだろう元冒険者が2人立っている。
何故ゾンビではなく直ぐに操られている冒険者だと分かったのか。
それは皮膚表面が全く腐敗していないのと、向かって右側のリッチの脇に立つ元冒険者の口元から漏れる『助けて』という小さな声がかすかに聞こえてきたからだ。
リッチのほうも4人が部屋に入ってきたのが分かったのか、ゆっくりと右腕を胸の高さまであげると元冒険者を操って突っ込ませてきた。
死ぬこともできず僅かに残った精神が、人を襲う化け物になってしまったことを嘆いているのだろうか、名前も知らぬ冒険者の頬には一筋の涙が流れている。
リッチの魔力で強化された元冒険者達の動きはさきほどまでのスケルトン達と比べると何倍も速く、操られていてもう助からないけれどまだ命がある存在なんだと思って動きがとまっていた聡介の目の前に現れる。
敵が目の前まで来て剣を振り上げようとしていることにハッとして我に返った聡介は、水平に剣を掲げて、剣の腹に手を添えることで相手の剣を受けきった。
「ボーッとするな、ソウスケ!リッチともう一体はこっちで相手してやるから、お前はそいつを自力で倒せ!」
ジョージの叱咤を受けた聡介は、目の前で再度剣を振る敵を正面に見据えた。
操られている関係で細かな動きの出来ない敵の動きは直線的で単純なものだが、魔力で強化されているので一撃は重い。
今度は胴体に薙ぎに来た一撃をバックステップで後ろに避ける。
今までに剣を使った実戦経験がほとんど無いのにここまでできるのは、一重に身体能力が大幅に向上したからだろう。
追撃を掛けてくる敵を横にかわして、すれ違う際に斬りつけるが……浅い。
これはやはり命を持つ者に対して剣を振るということに抵抗があるためだ。
その証拠に今の聡介は敵の顔を見ないようにしながら戦っている。
おそらくは表情を見ないことで平静をたもとうという無意識の行動によるものだろう。
しかし、聡介もこのまま倒してしまっても『殺人』という罪の意識を克服することはできないと決意を決めたのか、顔をあげて文字通り正面を見た。
敵の顔は無表情でありながら、その頬には涙が何度も流れて乾いた痕が残っていて、口からは『助けて』というか細く枯れた声が聞こえてくる。
「ゴメン!!」
これ以上聞いて怖くなってしまわないうちにと聡介の振った剣は、剣を振り上げていた相手の腕を斬り落として、その下にあった右肩を捉える。
そのまま進む剣は僧帽筋を断ち、鎖骨や胸骨、肋骨を次々と切断して、心臓や肺などの様々な臓器を裂いて左脇腹から姿を現す。
現れた剣には、様々な内臓を傷つけたからだろうか、大量の血と様々な体液が混ざり合っててらてらと光を反射している。
斬られた体は切断面からずるりという音と共に、固い土の地面に滑り落ちて夥しい量の血と臓物を晒している。
それをハッキリと見てしまい、吐き気がこみ上げてくるが、今は戦闘中だと自分に言い聞かせて、せり上がってきていた胃液などを飲み下す。
「オラァァァァァアアアアアアア!!!」
前方から聞こえた声に反応して聡介が目をあげると、もうひとりの元冒険者はちょうどジョージが相手の剣ごと首を切り落としたところだった。
残ったリッチの方はジャックが動きまわって魔術を交わしながら翻弄していたところを、後ろから忍び寄ったエミリーが斬りつけて灰色の霧に変えたところだった。
「ふぅ、それにしても久しぶりにリッチとやったら意外と緊張したなぁ。目標地点を指しながら魔術を唱えるから避けるのは簡単だけど、その分魔術が強力だから厄介だよ」
「そうよね。おまけに呪いや毒とかのバッドステータスなんかもついちゃうから回復薬を持っていないと自然に治るのをまつことになるし……。まぁ薬はあるから問題ないんだけどね」
リッチを倒した二人が明るく雑談しているのを見ると、さっきまで命がけの戦闘を――聡介以外は楽勝だが――していたのが嘘だったかのように思えるが、背後からは血の匂いが漂って来てその存在を主張している。
「それにしてもこの冒険者達も運がなかったなぁ。……まぁこのまま放っておいても魔物の餌になるし、せめて供養してやるか」
自分が倒した元冒険者と聡介が倒した元冒険者を見たジョージは、腰につけていた袋から白色の陶器の瓶にいれられた『聖水』を取り出して死体に振りかけた。
聖水を掛けられた死体は、まるで雪が解けて地面に染み込むようにして消えていった。
ちなみに『聖水』とは、教会が水を清めて作られるもので、死んだ人に振りかけた場合、死体は母なる大地に還るとされ、アンデッドなどに振りかけると、量によるが浄化作用が働いて灰色の霧に変えるという作用がある。
そして、500mlで500ギル――50000円相当――と非常に高いので大量に購入することは個人では難しく、PT内で死んだ者が出た時用に少し持っておくのが冒険者の間でのマナーである。
聖水をかけたおかげで、血の匂いを振りまいていた元冒険者の二人の死体はすっかり綺麗に消えてしまい、リッチが浄化されて灰になって消えたこともあって、この場に残っているのは聡介達4人だけだ。
「さて、ソウスケ。操られているとはいえ生きている人間を斬ったわけだが、今はどんな気分だ?」
「……気持ちのいいものじゃないけど、前みたいに塞ぎこむほどじゃないよ。一度乗り越えたからかな、死体をみて吐きそうにはなったけど、今はもう落ちついてる……。ありふれた言葉だけど、その人の分まで精いっぱい生きようって思ってる……かな」
「そうか……よし!多少の戸惑いはあるだろうが、あとは慣れるしかないだろう。これぐらいで聡介の特訓も終わりにしよう!」
さぁ帰るぞ!と言ったジョージが、剣を背中に掛けるためのベルトを取るために、手に持っていた大剣を地面に突き刺した途端
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
という音と共に広場に入ってきた方の通路が崩落して通れなくなってしまった。
どうやらリッチの魔術によって限界ギリギリで保たれていた均衡が、ジョージにトドメを指されたことで傾いてしまったらしい。
じとっとした視線を送る3人に、いや、俺のせいか!?俺のせいなのか!?と必死に弁明するジョージに、さきほどまでのリーダーシップはない。
仕方なく、少し進んでから地上へ戻るルートを探すことになった4人は、埃っぽい坑道を再び進んでいく。
雑談をし、時に襲いかかってくるスケルトンや、グールなどを蹴散らして進んで15分たったぐらいだろうか、聡介達はY字になった場所にでた。
あぁこれで地上へ戻れるな、などと呟いた4人は、Y字のVのところを鋭角に曲がって地上を目指して歩いていく。
しばらく進んでいると、さきほどリッチが出現した場所よりもかなり広い広場にたどり着いた。
右手に木造の小屋らしきものがあるということは元は工夫達の休憩所兼避難所といったところだろう。
他にもトロッコやスコップ、ツルハシがそのまま放置されたままなので採掘が行われていたことを想像しながら広場を進んでいった。
放置されてボロボロになったその小屋をちょうど通り過ぎた時、ドズンッという音が後ろから響いてきた。
ゆっくりと振り返った聡介の目に映るのは巨大なスケルトン。
巨大なスケルトンといっても単体が大きくなったわけではなく、大量のスケルトンがひっつきあうことで一つのスケルトンを構成しているので、形は所々ボコボコとして歪だが、間違いなくスケルトンではある。
そんな単体として存在する群生するスケルトンを見ていた時だった。
「……ねぇジョージ……。アレ……勝てる?」
「あれだけくっついてたら一つ一つの力が弱くても相乗効果でかなり強いだろうなぁ……。ランクでいうとCランクぐらいのレベルなんじゃないか?」
話し合うジョージもジャックもお互いに冷や汗を浮かべているが、目の前の巨大スケルトンはそれから動かない。
「…………つまり……どうするのよ………?」
巨大スケルトンに視線が固定されたままのエミリーがジョージに答えを求める。
「どうするって……………そりゃあ…………」
見上げる聡介の視線の先で、合体したスケルトンの目が何もないがらんどうの闇から真っ赤な炎にかわって全身を彩り始める。
「逃げるに決まってんだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
最後に巨大な眼窩に燃えあがる炎が灯った瞬間、ジョージの叫びで全員はありったけの力を込めて全速力で走り始めた。
後ろからはドズンドズンと言う音が広場に断続して響いてきていた。
5546文字です。
たぶん次で採掘場編は終わります~。
それにしても最初に下書きした時は巨大スケルトンなんて出ない予定だったのに書いてる内になぜか登場。
自分にもわけがわからない(´・ω・`)
…………まぁいいや>□<♪
そういえば、ランキングだんだんと上がってきているようで嬉しい限りです。
さぁ皆さんがんばって評価点をつけるのです!
……1点でも……泣いたりしないんだからね……;□;!
……
次回も…お楽しみにッ!