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廻る世界の錬金術師(元:面倒事が嫌いな錬金術師)  作者: 空想ブレンド
第二章:土の国デザートランド編
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―020― 移動と王都 ※地図はココに載ってます!

―020― 移動と王都



挿絵(By みてみん)




「ん・・・・・・ふわぁぁぁ・・・・・・朝・・・・・・か・・・・・・」



目を開けて飛び込んできた朝日の眩しさに目を細めつつ、体を起こそうと力を入れる。



「アイタタタ・・・・・・」



体を起こそうとして力を入れたが全身が痛くて、眩しさとは別の意味で目を細めることになったが、それも当然の話でいくらクラウが温度を調整してくれたとはいえ、堅い岩の上に寝ていたのである程度の痛みは仕方ない。


上半身だけ起こして正面を向くと、ちょうど朝日が昇ってきているところだった。


確かに体は痛かったが、心の方はと言えば軽やかな気分だった。


新たな覚悟を決めて迎えた朝日のなんと綺麗なことだろう。


昨日までと何ら変わらない風景すらキラキラと朝日を反射してとても美しいし、川辺の朝のスッキリと澄んだ空気もまた格別だ。


深呼吸をして爽やかな空気を目いっぱい吸い込んだ後は、川の水を両手で掬い顔を洗う。


ヒヤリと冷たい水で眠気もすっかりと吹き飛んだ聡介は体を伸ばすと馬車の方へとゆっくりと歩いていく。


途中で小さな子供の狐が目の前を駆けていったと思うと、その後ろから更に小さな子供の狐が転がる様に追いかけていった。


かわいいなぁ・・・・・・と小さな癒しを貰った聡介の顔には自然に笑みがこぼれる。


馬車を停めてある場所まで行くと、既に起きだして朝食――といっても水とサンドウィッチだが――の準備をしていたジョージ達と目があった。


ジョージ達は一瞬固まったが、聡介の顔を見ると何かあったことを悟って、心配は杞憂だったと分かり、いつも通りに接しようと決めた。



「おはよう、皆。今日はどこまで進む予定だっけ?」


「え~っと・・・・・・あぁ、昼過ぎには王都につくと思うよ~」



聡介が聞くと、丁度地図を傍らに置いてサンドウィッチをつまんでいたジャックが返事をする。


地図を見ようとジャックの隣に腰かけると、ジャックが見やすいように少しずらしてくれたので地図を覗きこむ。



「今がこの川の曲がっているここだから、ここから真っ直ぐ街道沿いに進むと王都だよ」



ジャックが道程を指でなぞりながら教えてくれる先を辿ると、確かに指の先に城らしきマークが見えた。


地図を確認し終えた後は、エミリーに勧められるままにサンドウィッチを頬張り、しばらく休憩した後に馬車の荷台の中に乗り込んだ。


その後は何事も無く、鳥の囀りを聞きながら王都への道を辿っていった。




■□■□■□■□■□■□



「なんか緑が減ってきたけど、本当に道あっているの?」



王都に近づくにつれて緑が段々と減っていっていることに気付いた聡介は少し不安そうに尋ねた。



「知らないのかい?ここは土の国だからね、基本的には緑が少ないんだよ。あの街は水の国と直ぐ近くだからそのおかげで緑があるんだ。あそこは本当に例外だね。でも道はちゃんと合ってるから大丈夫だよ。」


「なるほど……。じゃぁ王都の近くだと作物があまり育たないんじゃない?」



現実世界で日本と言う国が外国からの輸入に頼る国だということを思い出した聡介はそのことについて聞いてみる。


すると、御者からはすぐにそのことに対する答えが返ってくる。



「ん~まぁそうなんだけど、この国は鉱物資源が豊富だからね。それを使って他国……まぁ水の国が主だね、野菜とか果実とかを仕入れているんだよ。」



「そうなんだ。……あっ、でもそれだと水の国が野菜とかの輸出を止めたら、食糧が少なくなって簡単に国を乗っ取られない?」


「いや、この国は鉱物資源が豊富なだけじゃなくて、それらを扱う鍛冶師自体のレベルが高いから質の良い武器を色々な国に輸出しているんだ。向こうにとってもそれらを戦争で失って輸入できなくなったら軍の質が落ちるからそれはしないだろうし、それこそ止められたらこの荒野で鍛えられた強靭な踏破力を持つ軍が動くだろうさ。まぁ、持ちつ持たれつでバランスが取れてるから戦争はないよ」



技術を持つことで、手出しをさせないというのは日本と同じだなぁと聡介は感じる。



「ふむふむ……なるほど。どこの国もそんな感じなの?」


「あぁそうだな。それこそ大昔は全部の国を巻き込んだ大戦があったらしいけど、今は大体のとこが平和だなぁ………そういえば、闇の国は政治が上手くいっていないらしくて内乱寸前だそうだよ。もし商売で行くことがあるなら気を付けた方がいいかもよ」


「ありがとうございます。」



御者の忠告に感謝の言葉を返した聡介は考える。


土の国でなら自分の知識と錬金術を使って元の世界の物を再現したり、想像上の物を創ればそれが認められるかもしれない。


そうすれば安定した収入を得ることに繋がるし、有る程度の地位を築くことが出来るだろう。


それを使って国と繋がるようになれば、エドガーの時のようなことは起こらないかもしれない。


そう考えた聡介は、土の国で成功できるように頑張ろうと決意した。


しかし、聡介はすっかり失念していた。


その頼るべき国自体が自分の技術を利用しようと企むかもしれないということに……。





■□■□■□■□■□■□



「おーい、王都が見えてきたぞー!」



荷台で昼寝を――昼食前だが――していた4人を起こすように声を張り上げた御者の声が聞こえてくる。


その声に反応して荷台の床に敷いた布の上から体を起こし、前方を御者の横から覗きこむと確かに王都が見えた。


聡介の目に最初に飛び込んできたのは巨大な鉄製の門だ。


コンスタンティヌスの凱旋門――高さ25m――を一回りほど小さくしたぐらいの大きさの門は、流石に鉄鉱物を主な資源とする国に相応しく、要所要所にあしらわれた鉄の装飾が重厚な雰囲気を放っている。


その巨大な門の扉は25㎝程の分厚さの鉄で出来ており、たとえ軍隊が攻城兵器を持ってきて突破しようとしたところで徒労に終わるだろう。


かといってその門を避けて通ろうとしたところで、街全体を環状に取り巻く長大で分厚い石の壁がその行く手を遮っている上に、その壁の上では兵士が弓を構えて巡回しているので超えることすらできそうにない。


さすが、首都というだけはあると言った感じのある種の感動?――上京した時にスゲェ!と感じる時と同じ――のようなものを感じつつ、馬車はどんどんと進んでいき、門での審査を受ける。


門をくぐると巨大な門に邪魔されて見えなかった城や街並みが見えてくる。


すぐ目の前に広がる市場は、多くの露店でごった返していて、砂が舞い上がりつつも活気よく商売をしている。


目につく人々は強い日光を避けるためかゆったりとした長袖をつけ、アフガンストールのような布地を首に巻いているのが特徴的だ。


それらの奥へと目線を送ると中世の城とはまた違った高さがあまり無く、実用性を重視した城が見えてくる。


こちらも門と同じで重厚な造りの城で、とても頑丈そうなのでちょっとやそっとの攻撃などではびくともしそうにない。


それらに見惚れていると審査を終えた御者が声をかける。



「このあとはどこに行けばいいんだい?もしまだ決まって無いなら、商工ギルドへ行って手続きをしてくるといいよ。ギルドカードがあるならそれを見せれば簡単に済むはずだよ」


「わざわざありがとうございます。ちょっと時間かかるかも知れませんが、ここら辺で待っていてもらえますか?その分の料金は出しますので」



御者の親切に素直に従うことにして、荷物番をしてもらう代わりにある程度のお金を渡すと、聡介は教えてもらった右斜め前方にある商工ギルドへと向かおうとする。



「おーい、ソースケ。俺たちはその間どうしておけばいい?」


「あっ、ごめんごめん。ちょっと時間かかるかも知れないから自由に行動していていいよ~。今からだいたい2時間後にまたここでね~」



ジョージ達のことをすっかり忘れていた聡介は内心あわてつつ、表面上は平静を装って返事をする。


自由行動をもらった3人はちょっと話していたが、直ぐにそれぞれのしたいことをやりに散り散りになっていった。


商工ギルドへと入って行った聡介は手続きを済ませようとするが、登録をしようにも店舗が決まって無いことを受付で手続き中に指摘されて気付いた聡介は、受付のおじさんに苦笑されつつ店舗を紹介してもらうことになった。


受付のおじさんから紹介された不動産屋に案内されたのは、表通り沿いの物件と表通りから一本入ったところの物件、郊外に建てられた物件の3つだった。


表通り沿いの物件は、もちろん表通りということもあり、集客率が多く見込めて売り上げも伸びるだろうが、賃金が高いのが難点である。


表取りから一本入ったところの物件は、表通りから一本外れているということで、集客率はまずまずにはなるが、賃金も普通の値段でバランスの取れた店舗なので名が売れているわけでないならオススメらしい。


最後の郊外の物件は、集客率はほとんど見込めないが、賃金がとても安いので、作って武器屋に収めるだけなら最適な場所かもしれないとは不動産屋の言葉だ。


3件の候補があるということで少し悩んだ聡介だったが、エドガーの時のようにまた面倒事に巻き込まれるのは勘弁してもらいたいので

表通りの店舗は一番に候補から外す。


とすると、残るのは自然と表通りから一本入った通りの店舗と郊外の店舗の2つになるが、作るだけ作って武器屋に卸して終わりでは、相手の反応を見る楽しみが無いため郊外の店舗も却下する。


バランスが取れているし、場所的にもそこまで面倒なことに巻き込まれないだろうと考えた聡介は、消去法で決まってしまった残る1つを新しい自分の店とすることにした。


一緒に回っていた不動産屋に話をつけ、家賃を1000ギルほど払って契約完了とする。


元の世界で引っ越しといえば、電力会社やガス会社、水道局、郵便局、電話回線etc…などの煩雑な手続きがたくさんあって大変だが、この世界はそこまで文明が発達していないのでそれらの手続きはほとんどしなくてもいい。


することと言えば、店舗兼住所も決まったことなので商業をする場所の登録と住所の登録ぐらいだろう。


その残った二つを早く終わらせてしまうために聡介は数十分前に訪れたばかりの商工ギルドへと再度入っていく。


中ではこれまた数十分前にいた受付のおじさんが座っていて、手続きの準備をしていてくれた。


手続きを終わらせた聡介は1軒隣りの役所に入り、住所の登録をさっさと済ませて外に出た。


腕を持ち上げて腕時計――元の世界と時間の進み方はほぼ同じ――を見ると、約束していた時間を5分ほど過ぎていたので、慌てて集合場所へと向かう。


5分という僅かな遅れさえも気にしてしまうのは元の世界でも日本人ぐらいなものなので、この世界の人々も気にしてはいないだろうがそれでも焦るのは日本人の(さが)だろう。


聡介が集合場所へと向かうとそこには既にジョージ達3人が既に揃っていた。


3人はそれぞれに自由行動をした成果をその手に掴んで持っている。


ジョージは街の通りで開かれていた力自慢達による賭け腕相撲でその時のチャンピオンに勝ったらしく、賞金がたくさん入った袋を持ち、満足そうな顔だ。


ジャックの手には寂れた街の古書店で買ったという古書が2冊おさまっていて、その顔はジョージと同じで満足そうなものだ。


エミリーはというと、その手には……というか両手には屋台で買ったらしいケバブやタコスのような食べ物や、チュロスやドーナツなどの甘い食べ物が握られている。


冒険者ということをしていると色気よりも食い気の方が勝ってくるのだろうか、食べている顔は幸せそうなので一向に構わないが……。


ともあれ満足そうな3人に新しい店が決まったことを伝えると、荷物をそこに移しにいくことになった。


街の入り口付近で待機していた御者のところまで戻り、店が決まったので荷物を持っていく旨を伝えると4人は馬車に乗り込んで店の前まで進んでいく。


店の外観は少々砂埃で汚れてしまってはいたが、洗い流せば問題なさそうな程度で、内装も備え付けの物が比較的キレイな状態で残っていた。


構造もガーランドの街の店とほぼ同じで、違いといえば倉庫がもう一つついたぐらいだろうかというぐらいだ。


新しく出来た倉庫のおかげで、今度からは武器などの重要な品物を入れておく金庫と、材料などを入れておく倉庫とで分けておくことが出来るようになるだろう。


更に店の中を見ていくと蜘蛛の巣などもなく一見綺麗に見えるものの、床には隙間から入ってきた砂がうっすらと積もっているので掃き出してしまわなければいけない。


4人で協力して店の中に荷物を運び終え、ジョージ達から見えないように錬金術で一つの倉庫の中を金庫仕様にしあげると、『安全守る君』を店の扉に取り付けて鍵をしてから外に出る。


数日間とはいえ王都への旅を共にしてきた御者を見送るためだ。


御者はこれからガーランドへ向けて帰るらしく、既に冒険者風のお客を数人乗せている。



「初めは大変だとは思うが、この街でもしっかり商売していくんだぞ!」



と、励ましの言葉を聡介へと掛けた御者は、ピシッという音を立てて馬の尻を叩いて北門を通って出て行った。


随分あっさりとした別れ方だが御者とそのお客という関係はこういうものなのだろう。


御者と別れ、振り返った聡介の視界に広がるのは砂埃舞う土の国の首都『荒野地帯(デザートランド)』の街並みとその城塞。


今度こそは……と決意を新たにする聡介はこれからの予定を立て始める。



「そうだ、まずはあいさつ回りからしよう」



聡介の新たな日常はご近所さんへのあいさつ回りから始まるのであった。





5420文字です。

今テスト期間中ってか明日もテストです。

マジ死ぬ。しかし、進路は決まってるのでおざなりだったり。

乙。ってかなんかテンションおかしいです。ハイ。

さて、今回は満足いく話にならなかったので、ちょっと批判覚悟。

それでは、次回もお楽しみに~。

P.S.  745,977アクセスと、ユニーク114,603人ありがとうございます

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