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―001― 死亡と世界の仕組み ※文章一部改定

文章一部改定しました!7月19日20:32

夜の道に流れるヘッドライトの人工的な光が都会の中で放つ鋭さは、まるで夜闇にまぎれて獲物を狙う眼光のようで。


その鋭い眼光は、まっすぐに道をわたる自分のことを睨みつけると、レシプロエンジンの高いうなりをあげて猛然と駆けてきた。


なぜ。と思う間もなく鉄で形成された鎧をもつ無機質な猛獣が、自分の体をはるか上空へと吹き飛ばしていた。


もちろん、他人から恨みを買うようなことは…あまりしてないはずだし、それもただの友人同士の喧嘩ぐらいで、殺されるほどの強烈な恨みを誰かに植え付けたわけではない。


意識が闇へと吸い込まれる寸前に見た、街頭の明るい光に照らされた緑の色をした金属のボディは、若者の――自分も十分若者だが――好きそうな色をしていた。


どうせ、酒でも飲んで気が大きくなったどこぞのバカが改造した愛車をカッ飛ばしたのが原因なんだろうなぁ。


そんなことを思うだけで、気持ちが恨みへとドス黒く変化していく前に自分の意識は更に深い黒い闇の中へと葬られていった。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・




ふと、目を開ければ死んで見えなくなったはずの目に飛び込んできたのは、ただただ白い、距離という概念が存在しないような――何も比べるものがないため、ホワイトアウトと同じようなもの――空間だった。


はて?自分は死んだはずではないのだろうか。死後の世界がこのような何もない世界というのはなんとも味気なく、天国も地獄もへったくれもありゃしないじゃないか。


と思ったのが何も分からない今の自分が思った最初の感想だった。




自分は確か、夜のコンビニにネットゲームをする合間にジュースを買ってこようと思い立って、独り暮らしの自分の牙城から暗い夜の世界へと足を踏み出したのだった。


しばらくの間、コンビニで見かけた車や、ファッション、ミリタリー関連の雑誌を取りとめもなく眺めて少しの暇をつぶした後スポーツドリンクとスナック菓子を買って店を出た自分は、青に変わった歩行者用の信号を見て横断歩道を渡った。


青になったのをしっかりと確認したはずだし左右も確認したが、それでも車はやってきた。


曲がり角から白煙を巻きながらドリフトをしてきた車は、アクセルを全開にして凶暴なまでのスピードでライトグリーンのボディを夜の闇に躍らせて、赤のままの交差点へとヘッドライトの光を向けた。


まったく減速をする様子もなく交差点へ侵入した車は、自分に逃げる余裕さえ与えずに体重62kgの21歳の翼も生えてない肉体を、軽々と上空へと吹き飛ばした。


衝撃でバキバキになった骨はいくつもの鋭い刃となって、柔らかな内臓を串刺しにした。


その時点で上空に吹き飛ばされた自分の意識はブラックアウトしていたのだが、実際は肉体は重力に従って地上へと加速していき、鈍い音とともに着地すると同時に生命活動に完全にトドメをさした。



死んだところまで思い出した自分は、我に返った途端に聞こえた声に動きが固まった。


それもそのはず、自分にとってここは死後の世界のはずで誰もいはいはずなのだから。



「ふむ…君は何もしゃべらないがこの空間に対して何も思わないのかね?私としてはてっきり慌てふためいて喚き散らすのではないのだろうかと思っていたのだが…いや、君が落ち着いた子供であって実に満足だ」



しかし、このまま何も行動しないままでは一向に事態は進展しないと思った自分は、かけられた言葉に反応して自分の体へと停止解除信号を送ったのだった。


後ろへと振り返る間に考えたことは、なんだかこの人偉そうだなぁ。とか、この空間が不思議過ぎて言葉が出てこないだけだ、そもそも自分は子供ではない青少年だ、子供扱いするなコノヤローとか、生産性のない言葉を考えただけだった。


はたして、自分はまたもや肉体へと停止信号をおくるハメになったのだった。


それもそのはず、常識から考えて人語を話しているのだから人間なのだろうと、無意識のうちに決めつけていた自分の常識が打ち破られそうになっているのだから。


後ろへと振り返って目に飛び込んできた映像はとても奇妙なもので、もしや、自分の目は事故のせいで幻覚を映しているのじゃないだろうかと、思えるほどのものだった。


言葉を発したであろうと思われる人物は、その実『人間』ではなく白い世界に浮かぶ、闇よりも深い色の真っ黒い球体のようなものだった。


もちろん顔はないので表情も分からないし、口が無いのでドコから言葉を発したのだろうか、という疑問もわいてきたがここにきて疑問を子供のように喚き散らすのも癪な気がしたのでそのままのみこんだ。



「いや、分からないことが多すぎて何が何だかわからないんだけど…」



とりあえず、無難な受け答えが出来たと一応満足することにした。



「ふむ、まずは説明することにしようか。単刀直入にいうと君を連れてきたのは私だし、事故を装って殺してしまったのも私だ「ちょっと」黙っていたまえ話しているのは私だ。さて……話の続きだが、これは私にとっても不本意なことでね。君を殺してしまったのはまったくの勘違いによるものなのだ。ドッペルゲンガーというのは君も聞いたことがあるだろう。それの姿形どころか、同姓同名な上に年までも一緒な者がいてね。それの死期が来たので狩ろうという話になったのだが、世界までもが誤認してしまってね。君のほうを殺してしまったのだ」



衝撃的すぎる事実に待ったをかけようとした瞬間に睨まれて――目も何も無いので感覚的なものだが――しまった。


どうも、自分が中心的な考えの持ち主らしい…こういうときは黙って聞くほかないのだろう。



「流石にこれは理不尽な気がしたが、一度存在を消してしまって存在することを拒否した時は流石に元には戻せん。まだ寿命も有り余っているからこのまま消してしまうと何かと不都合なことが起きるのだ。生き返すといって元の世界には戻せないから君には別の世界へと行ってもらう。・・・元の世界には家族もいただろうし友人もいただろう。本当にすまないと思っている。生き返すのもこちらの都合な上に、頼れる人間が一人もいない世界に君を独りで生き返すのだ。文明は君の世界より大幅に遅れている世界だから生活は厳しいだろう。そこで君には2つだけ特殊な能力をつけてやろう。あぁ不死や不老はやめてくれ。寿命の関係で送るのにソレでは意味がなくなってしまうからね。それ以外なら君が望むならなんでも叶えてやろう」



どうしよう……本当に死んでしまったらしい。


そのうえ生き返れるが、そのかわりに愛すべき家族や友人を失って、それに加えてたった独りで見知らぬ土地――正確には世界だが――に生きなければいけない。


何でもいいという特殊能力は破格なものだけど、何があるか分からない世界なら下手な能力の選択はそのまま死につながるだろうと思われる。


無敵能力なんて論外だ。


敵や生き物がまわりにいない場所にでたのなら無用の長物以外の何物でもない。


なにか生産性のある能力・・・それも生活に必要な色々なモノを生み出せる能力が必要だろう。


・・・『錬金術』なんてどうだろう。


とマンガや、小説、ゲームと様々なことをしてきた自分の考えはそんな答えに行きついた。


熟考しても悪い考えではなさそうだったので、とりあえずはコレを選択することにした。


次にもう一つの能力だが、ただの錬金術では何かと制約があると考えたので――たとえば等価交換や、性質の把握など・・・ただ単に制約されることが面倒なだけとも言える――これらの『世界における法則からの脱却』を求めることにした。



「え~っと、色々言いたいことはあるけど、もぅメンドクサイからいいです。どうせ言っても変わらないんでしょうし。ただ……怨むぐらいはさせてください。……それから望む能力は、『錬金術の使用』と、『ソレの使用におけるすべての法則の無視』。これら2つの能力でお願いします」



「分かった。希望どおりにかなえよう。他に質問があれば聞こう」



とりあえずは、『自分の住むことになるだろう世界について』ある程度のことを聞かなければ話にならないだろう。


まずは知識を手にいれなければ始まらない、情報の有無は時として生死にかかわるのだから。



「僕が行く世界のことについて教えてもらえますか?」



そう聞くと真っ黒な球体は満足げにその輪郭を微かに震わした。


ちょっと気持ち悪いと思ったが、言葉には出さないでおく。



「君が行く世界は、魔法や、ファンタジーあふれる下位世界だよ。君がいた世界ではそういうものにあこがれる人は数多くいただろうね。もちろん文化レベルは高くはない。機械はないし、銃も有るには有るが実用レベルではない。あぁ大砲レベルはさすがに開発されているがね。基本的には剣や盾などの白兵戦が主流だ」



ひとつだけ、引っかかる言葉があった。


文化レベルうんぬんは有る程度予想はしていたが、予想外の単語の登場に少し違和感が生まれた。



「すいませんが……下位世界とはどういうことですか?魔法とかがあるなら、普通は神の加護とかが有るっていうことで、え~っと……上位世界になるんじゃないんですか?」



そう尋ねると真っ黒な球体は少し考えるように会話に間が空いた。



「あぁそういうことか。それは君の世界の勝手な解釈だよ。実際には未発達な下位世界だからこそ、神の加護が必要なのだ。この神の加護がなければ、たちまち人や動物は衰退するだろうね。文化レベルが高くなり、機械などを使えるようになって、つまり、魔法がなくとも自立ができるようになった世界は神の加護を必要とする世界に対して上位の世界となるのだ。そのため神の加護をなくす代わりに下位世界に対して、上位世界の人間は神の加護がなくても生きていける強力な生命体として認識される。そういえば君もまた上位世界の人間だったね。下位世界では、君もまた強力な生命体として認識されるから、ちょっとやそっとじゃ死なないし、そこらの生き物なら素手でも負けることはまずないだろう。……あぁそれと神の加護は世界に住む全ての物に対して等しくかけられるから、君もおそらく魔法を使用できるだろう。まぁ魔法については生まれついての機能が無いから、ちょっと力のある魔法師と変わらないぐらいだろうがね」



これで実際に与えられる能力は『肉体強化』と『魔法の使用――少しらしいが――』、『錬金術の使用』、『錬金術使用時の法則の無視』の4つとなったわけだ。


これぐらい有ればそぅ困ることはないだろう。


これで生き抜くための術は揃ったはずだ。



「さて、他に質問がなければ、君をめくるめくファンタジーの世界へと送り込みたいんだが?すこし時間がおしていてね。なに、私もそれなりに忙しいんだ」



初めてこの真っ黒な球体がおどけたような口調で話しかけてきた。


それは不思議と、人間味があるような仕草に思えた。



「いえ、これ以上はとくにありません。いつでもいいですよ」



元の世界に決別をつけるため、記憶をずっと覚えていられるよう焼きつけるために目をつむる。


その閉じたまぶたを通しても明るく白い光が感じられた。


きっと、今自分は白い光の奔流の中に身を横たえて、新たな世界へ旅立とうとしているのだろう。


目をあけると眩しくて荒々しいが、どこか温かみのある光が全身を覆っていた。



「そういえば……あなたは神様ですか?それとも悪魔……なわけはないですよね?」



答えを期待せずに何気なく投げかけた言葉はそれでもしっかりと真っ黒な球体へと届いていたらしい。



「さぁどっちかな?もしかしたら神様かもしれないし、悪魔かもしれない。はたまた、そのどちらでもあるかもしれないし、どちらでもないかもしれない。真実とは時に明確であり、時に曖昧なものなのだよ」



そういわれて、なるほど確かにそういうものなのかもしれない。


と、思い言葉を返そうとしたときには、既に自分の意識は温かい光の中に沈んでいっていた。


いやぁそれにしても難しいですね@@;

全然話が進んでくれない。まぁ第一話はこんなもんです。実際に異世界で動き始めるのは次話以降になると思われます。楽しみにしてくれているひとがいれば嬉しいです。感想なんか書いてくれちゃったりすると期待されてるんだな~って思って尻尾ふって喜んでますのでなにとぞ~。

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