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廻る世界の錬金術師(元:面倒事が嫌いな錬金術師)  作者: 空想ブレンド
第一章:土の国ガーランド編
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―015― 受け渡しと試し切り

向こうの作者様とも話し合いをし、無事解決することが出来ました。

詳しいことは後書きにて。

―015― 受け渡しと試し切り


雲一つない青い空に日が高く上ったころようやく聡介は夢から覚めた。


よく寝たことでスッキリと目が覚めた聡介は、ベッドから身を起してストレッチをするとそろそろ工房から出ることに決めた。


壁際に立て掛けているそれぞれのために創った剣を腕に抱えると、工房の分厚い扉の内鍵を開け、扉を開け放った。


店内にはエミリーが一人だけカウンターで肘を付きながら足をブラブラさせていた。


工房の扉を開けるギィという音に反応したのか、エミリーは足を止め、工房の扉の方へ顔を向けた。



「ソウスケ!今終わったの?」


「うん、待たせたかな?」



実はさっさと終わらせてずっと寝てたなんて言えないと思いつつ、笑顔を向けてくるエミリーに返事を返した。



「待ってて、今ジョージ達を呼んでくるから!」



そう言って二階へ駆けあがっていったエミリーを見送り、剣をカウンターに置くと聡介はカウンターの椅子に座った。


カウンターに座ると同時ぐらいに二階からドタバタと音を立てながらジョージ達が降りてくる。



「ソウスケ!剣が出来たってホントか!?」



そして、階段から顔を覗かせたジョージは聡介を見つけるなり声を掛けた。



「出来たよ。今渡すから皆来てくれる?」



カウンターの上で剣をキレイに並べ直しながら返事をする聡介。


その様子を見つつ近づいてきたジョージ達に椅子をすすめて座らせる。


3人が席についたことを横眼で確認すると、こほんと息を吐いてからジョージの大剣を持ち上げて渡す。



「この剣が新しい剣か……。だいぶ軽いな、これで威力でるのか?」


「確かに重量がないから遠心力で威力を上げることは難しいけど、この剣は切れ味が高いから、今まで重い大剣を振っていた速度と併せると切れ味は最高だよ。それは補償するよ。でも、軽いから今までに重さで叩き潰すような斬り方をしていたなら、今度からはちゃんと斬る方に重点を置くようにしてね」


「分かった。気を付けておくことにする。ところでこの剣の名前を教えてくれないか?自分の剣の名前ぐらい覚えとかなきゃかっこわるいからな」


「そうだね。この剣の名前は『デュランダル』。意味は『不滅の刃』。大切に使ってあげてね」



「不滅の刃『デュランダル』か……。よし、大切に使わしてもらうぞ!」


と言ったジョージはソレを背負い、聡介に礼を述べた。


それを嬉しそうに笑いながら受け取った聡介は、次にジャックの分の剣を渡すためにカウンターの上から一振りの剣を持ち上げた。



「ジャックは決まった武器が無いって前に言ってたよね?だから、今回は一般的なロングソードの形状にしたよ。材質はジョージの剣と一緒のモノを使用しているから、もちろん通常の剣よりも軽いから扱いやすいと思うし、切れ味も頑丈さも併せ持つ剣だよ。それとコッチのダガーは武器のサブとしても、サバイバルでも使えるように創っておいたから自由に使ってね」



ジャックにロングソードを渡してから説明をし、説明の終わりに手元に置いていたダガーを取り出してジャックに渡した。



「うん、軽いし扱いやすそうだね。切れ味は実際に試し切りしなきゃ分からないけど聡介が創ってくれたのなら心配し無くても大丈夫だね」


「でも一応試し切りはしてどれほどのものかは把握しておいてね。あ、それとその剣の名前は『ジュワイユーズ』で、『喜びに溢れた』っていう意味だよ」


「『喜びに溢れた』かぁ。良い名前だね。大切にするよ。……それでコッチのダガーはなんていう名前なんだい?」



『ジュワイユーズ』を腰元に差したジャックは、渡されたダガーを観察しながら聡介に聞いた。



「う~ん、そっちのダガーには名前は無いんだ」


「へぇ……。これも業物に見えるけどなぁ……。何でなのか理由を聞いてもいい?」



ダガーの刀身を見ていたジャックが顔をあげて聡介に理由を求める。



「なんで名前をつけないかは、名前が入った物を気に入って、いざというときに使い捨てられなかったり、サバイバル用の汎用道具として使うのを躊躇ったりするのを避けるためだよ。戦闘以外でも使用することが多いと思ったから名前を付けなかったんだ」


「……なるほど。確かに名前が有ったら愛着が湧いてそうなるかも……。使用者のことよく考えてるね、全然気付かなかったよ」



一度立ってダガーと剣を腰に差したジャックは、最後に置かれている白銀の剣を見た。


そして、ジャックのその横では、エミリーが自分の番を今や遅しといったふうに待っているのだった。


それにしてもエミリーは最初からこの白銀の剣しか見ていない。


やはり女の子だから綺麗な輝きを放つこの剣を見つめていたのだろうか。


いくら冒険者をしていても、こういう女の子らしい一面はもとの世界の女性たちとあまり変わらないなぁと、聡介は思うのだった。


そんなことはさておき、自分の番を待っているエミリーを待たすのも悪いので考えるのを止めて白銀の剣『オートクレール』を左手に握る。


左手に握った剣を水平にし、右手の上に刀身を寝かせて置いてエミリーの方へゆっくり差し出す。


「はい、これがエミリーの分の剣『オートクレール』だよ。この剣は、二人の剣とは材質が違って『ミスリル』っていう金属を使っているんだ。この金属は魔法と相性が良くて、魔法を付与することができるのが特徴だよ。……あぁそれと、エミリーは魔法を使うって言ってたから術式補助と身体強化の魔法を掛けておいたよ。」


「魔法剣!?……どうりでこれだけキレイに輝いてるわけね。最初は磨いて輝かせてるのかと思ったけど……。でも、本当にいいの?魔法剣なんて超高級品よ?」


「うん、そのかわり大切に使ってあげてね。あ、注意点を言っておきたいんだけどいいかな?」



魔法剣という言葉に反応したジョージとジャックも加わって、共に『オートクレール』を観察しているエミリーに声を掛ける。



「あ、ゴメンゴメン。何かな?」


「この剣を扱う時の注意なんだけど、この剣は切れ味は確かにいいんだけど、ジョージ達の剣みたいに刃こぼれしないってことはないし、普通の剣よりは頑丈だけど無茶な使い方をしたら壊れちゃうから気を付けてね。もし、刃こぼれしたり切れ味が悪くなってきたら修理するから持ってきてね」


「分かったわ。その時はお願いするね」



返事を返したエミリーは『オートクレール』を鞘に収めると腰元に差した。


カウンターの上を見て、3人の武器を全て渡し終えたのを確認した聡介は、御茶を入れてくると言って奥に引っ込んだ。


棚から小さな手鍋を引き出し、錬金術で火を出して熱湯を作り、火を止めてから4人分の茶葉を入れて蓋をし、蒸らしたら茶漉しを通してそれおれのカップに注ぎ分けていく。


本当ならティーポットを使いたいところだが、今回はお茶をするわけでもないので時間短縮のために手鍋で入れる方法を採った。


入れるときは、プロを意識して少し高めの位置から注いだが、最初のカップは周りに少しこぼしてしまったし、結構跳ねてしまった。


その次からのカップは、さきほどよりも位置を下げて、飛び散らないようにきれいに入れた。


跳ねて少し汚れたカップは自分用のモノとして、のこりの3つのカップはジョージ達のなのでお盆に載せて溢さないように運んでいく。


カウンターに戻ってくると3人は顔を上げ――話をしていたらしい――、礼を言いつつ聡介から紅茶を受け取った。


ミルクや砂糖といった気がきいた物はもちろん存在しないのでストレートティーだ。


旨味と表裏一体の渋味が口の中に広がり、紅茶から立ち昇るダージリンの香りが鼻の中をスッと通り抜けていく。


会心の出来に満足しながらカップをソーサラーに置き、3人を見るとジョージは早々と飲みきってしまったようだが、ジャックとエミリーは紅茶をゆっくりと味わって飲んでいた。


ジョージはしなかったようだが、あとの二人の味わって飲んでもらえている様子に聡介は多少嬉しくなった。


やがてお茶も飲みきり、今日はこれで終わりかな?と思った時、3人は試し切りをしてくると言って出ていってしまった。


一人残った聡介は、長い間放置していた店内の掃除にとりかかることにしたのだった。




■□■□■□■□■□■□



「それにしても不思議だな。これほど腕前がいいならどんな田舎にいても名前は噂に乗って広がるだろうになぁ。今までソウスケの鍛冶の腕前の噂が無かったのが不思議だ」



聡介が紅茶を入れに奥へと入ると、自分の剣の感触を確かめていたジョージが唐突に口を開いた。



「たしかに不思議だよね。いくら田舎っていっても外界と完全に交流を立ってる村なんてそうないはずだし、これだけの一流の腕前を持ってるなら風の噂に乗って誰かの耳に入るとおもうんだけどねぇ。どの冒険者も騎士もいい武器を求めてるからそういう情報には敏感なはずだし……」


「う~ん……確かに何か隠しているのかもしれないけど、それでも私たちにここまでしてくれるソウスケを疑うのは失礼よ。もうこんな話はやめましょう!」


「そうだな、悪かったからそう頬を膨らますなって」



難しい顔をして考え込もうとするジャックに、エミリーがちょっと憤慨したように声を発し、それをいさめるようにしてジョージがおどけてエミリーに言う。


そのあとにちょっとした小話をして話に一区切りつくと、まるでタイミングを見計らっていたかのように聡介が紅茶を持ってきた。


3人は聡介から紅茶を受け取り、ジョージは喉を潤すかのようにさっさと飲み、ジャックとエミリーは香りを楽しみながら飲んでいった。


さっさと飲み終え、2人が飲み終えるのを待つジョージはすることが無くてヒマそうだ。


元の世界ならこういう時は音楽を聴いて時間をつぶしていたなぁと思いだした聡介はクスッと軽く笑っている。



「ソウスケ、俺らは今からこの武器を使って試し切りしてくるからしばらくの間出ていくぞ」



そして、全員が紅茶を飲み終え一息をついたところでジョージが口を開き、外出する旨を聡介に伝えると席を立った。


続くようにエミリーとジャックも席を立ち、それぞれに自分の新しい得物を携えて店の外へと出ていく。


店のドアをカランカランと鳴らして外に出たジョージ達は、冒険者ギルドの近くの演習場まで歩いていく。


演習場につくと、既に何組かの冒険者達がいて、それぞれに得物を使って鍛錬をしているようだった。


中には安全面に配慮して木剣を使って、子供達に技を教えている人たちもいる。


そうした中で3人は演習場の丸太で試し切りが出来るスペースに歩を進め、各々が案山子《かかし》に似せた丸太の前で武器を取り出して構える。


ジョージは大剣使い用の太い丸太の案山子の前へ、ジャックとエミリーはロングソードクラス用の少し細めの丸太の案山子の前へと剣を構えて立つ。


演習場の至る所から聞こえる気合の声に負けぬように声を発しつつ、丸太を一刀両断にせんと大剣を大上段から勢いよく振るうジョージ。


大上段から勢いよく振られたデュランダルは、ジョージが思っていたほどの抵抗感を感じさせること無く丸太を真っ二つにし、それでも勢いが弱まらなかったデュランダルは更に地面も僅かに切り裂いた。


普通の大剣の切れ味を参考にしてデュランダルの切れ味を予想していたジョージは、予想以上の切れ味に内心驚きつつも剣を背中に収めた。


真っ二つになった丸太へと近づいて切断面を見ると、潰れたような個所は見受けられず、スッパリとキレイに斬られていることが見て取れる。


今までと少々使い勝手が変わるかも知れないと思いつつも、ジョージは剣の仕上がりぐあいに満足した。


ジャックの方はというと丸太に対して数回斬りつけて、振るうスピードを確かめた後にジュワイユーズを真一文字に素早く振るい、案山子の頭にあたる丸太部分のテッペンを輪切りにした。


振るう時のスピードを考えてから再度一通りの技の確認をしたあと、ジャックはようやくジュワイユーズを収めた。


エミリーはジャックと同様に一通り技を型どおりにこなすと、次に丸太の2歩前まで歩いていき、そこで立ち止まった。


オートクレールを正眼に構えたまま詠唱を始めると、剣の周りにはヒュンヒュンと風が空気を切り裂きながら渦巻いている。


短めな詠唱を唱え終えたエミリーが、両手でオートクレールを軽く握り、左足で一歩踏み出しつつオートクレールを右肩に担ぐようにして振り上げる。


一瞬体を弓なりに反らせ、その反動で力強く右足を踏み出し、足から得た力を腰を回しながら増幅させつつ剣を振り、直撃の瞬間にグリップをグッと握り締めて一息に振り切る。


流れるような一連の動作によって力を無駄にすること無く綺麗に振り切られた一撃は、案山子を袈裟斬りにするだけにとどまらず、オートクレールに纏わせていた風の刃が案山子の右腕を斬り落とし、胴体をズタズタに切り裂いた。


普段であればありえないほどの案山子の惨状にエミリーが唖然とすると、その様子を見ていたジャックとジョージが近寄ってきて声を掛けた。



「すげぇな……。エミリーいつの間にそんなバカヂカrゴフッ!!」


「ち、違うわよ!失礼なこといわないで!!」



口よりも先に手が――綺麗なストレート――出てしまったエミリーがジョージに対して怒っている。



「まぁまぁ……。それよりもどうしたのさ?普通は付与魔法ってこんなに威力が出るような魔法じゃないでしょ?」


「それなんだけど、たぶんソウスケの言ってた術式補助と身体強化の効果だと思う……。それに付与したときもやり安かったし……。う~ん、感覚で言うと普段は無理やり押し込んでる感じだけど、今回のはこの武器から吸い込んだような感じかなぁ……。」


「へぇ。あ、ちょっとこの武器にもその付与魔法してみてよ!」



そう言ったジャックのジュワイユーズに付与をして、ジャックがエミリーと同じように丸太に切りつけたが、綺麗に斬れたのは袈裟斬りにした部分だけで他の部分は風が丸太に深く傷をつけただけだった。



「う~ん、前よりは威力上がってるけど、さっきエミリーがしたほどじゃないなぁ。やっぱりその剣だからなのかもね」



結果に少しだけ不満そうにしながら戻ってきたジャックはエミリーにそういった。


その後、攻撃魔法や防御魔法、回復魔法、付与魔法を練習して全体的な力の向上を感じることが出来たエミリーは上機嫌だった。


もちろん、ジャックやジョージも満足はしていたわけだが、魔法を使っているとは言えあれほどのエミリーの力を見せられてはそれもかすむというわけだ。


それでも3人全員は武器の出来栄えに上機嫌になって演習場から帰っていったのだった。

5848字です!長い間のブランク申し訳ありませんでした。

盗作疑惑とのことで向こうの作者様と話し合いを設け、話してきました。

向こうの作者様からもこれからの展開に期待するとのことで事なきを得ました。

とはいえ、このままでいいというわけではないので少しずつ流れを修正して行こうと思います。

いきなり変えて皆様の期待を裏切るということはしないつもりなのでご安心を!

これからもどうぞよろしくお願いします。


さて、話が変わりますが……作者初めて救急車乗りましたョ!

熱中症ということでしたよぉ……。

今夏は死者も多数いたようで自分は本当に運が良かった方なのでしょうね。

熱中症の恐ろしさを身を持って知った次第であります。

だんだんと涼しくなってきているとはいえ、皆様もお気を付け下さいませ!


さてさて、またまた話は変わりますが、何か出してほしい物とかは有るでしょうか?

錬金術を使った何か、魔法を使った何か、私たちが住む現代での知識を利用した何か(なるべく便利な物で、構造が複雑で無い物)

すぐに出せるかどうかは物にもよりますが、なるべく早く出せれるようにしますので、案があれば何でもお寄せ下さい~。


それでは、大変長い後書きとなりましたが!

次回をお楽しみに!

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