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廻る世界の錬金術師(元:面倒事が嫌いな錬金術師)  作者: 空想ブレンド
第一章:土の国ガーランド編
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―010― 遺跡と王の証 ※文章一部改定

―010― 遺跡と王の証


朝早く目覚めた聡介が、商品を補充しようと思って倉庫の扉を開けると、中にある鉄のインゴットの数はかなり減っていた。


これでは作ることが出来ない……と考える聡介は、この前ジョージ達が鉄クズを大量に拾ってきた遺跡のことを思い出した。


また何かが捨てられているかも知れないと考えた聡介は、この遺跡にいってみようと考え付いた。


そこには、ただ単に鉄クズを拾いにいく……というだけでは無く、この世界の遺跡をいうものを見てみたいと思ったからでもある。


しかし、いくら思ったところで、場所も道も分からないのでは行きようがない。


そこで、聡介は鉄クズの採集をジョージ達に依頼することにした。


もちろん自分もついて行くのだからということで、料金は上乗せするつもりではある。


その旨をジョージ達に伝えようと思い、二階へと上がると、一階に降りてこようとするジャックと目があった。



「あれ?ジャックどこか行くの?」


「ん?あぁ適当に依頼を受けにいこうかなと思ってね。あの2人は面倒くさいからって僕に押しつけたんだ。まったくぐうたらだよね。」


「あははは……それは大変だね……。」



ジャックの、パシリという悲しい理由に苦笑いを浮かべる聡介だった。



「ところでソウスケはどうかしたの?」


「あぁそのことなんだけど、依頼をしようかなって思ってね。この前採取に行ってきてくれた時に、遺跡で大量に鉄クズを拾ったって言ってたよね?それで、その遺跡に採取と観光も兼ねて行こうかなって思って。報酬だけど……300ギルくらいでどうかな?」


「分かった、いいよ。道案内と採取ってことだね。じゃぁジョージ達に伝えてくるよ。これくらいの簡単な依頼ならお安い御用だよ!」



そう言って、軽い足取りでジョージのいる部屋に戻って行ったジャックだが、聡介はこのとき少し不安に思っていた。





なぜ、遺跡なんかに大量の鎧や、剣といった鉄クズがあったのか





少し前に聞いたことだが、その遺跡の近くで戦場になるような戦いはここ数年無いらしく、遺跡自体も簡単な構造ながらも雰囲気を楽しめるということで、初心者レベルでも無理なく通える遺跡だったからだ。


そこに大量の鎧や、剣が捨てられていたのはおかしいと普通なら考えるだろう。


このとき、そんなことよりも遺跡に行く準備をしなくてはいけないと思い直した聡介は、ジョージ達と同様に、誰かに捨てられたのだろうと、深く考えることなく結論を出した。


出してしまったのだ。


後に、聡介はこの不自然さに気付くべきだったと、とても後悔することになる。


しかし、準備に追われる今の聡介は未だ気付かぬままだった。




■□■□■□■□■□■□


ジャックと別れて一階へと戻った聡介は、準備をするために倉庫の中へと戻っていた。


木で偽装された床板をはがして、冷たい光沢を放つ鉄の板を露出させる。


鉄の板に手を重ねて練成し、鉄の板に鉄の扉をつくると、その扉をゆっくりと開いた。


扉の先に見えてきたのは先日練成したオリハルコン製の鎧と、同じくオリハルコン製の刃渡り110cmのクレイモア。


工房の中に誰もいないことを一応確認し終えると、表面揺らめく深紅の鎧をとりだしてしっかりと体に装着していく。


鎧をつけ終えた聡介は工房の中を適当に歩き、または激しく体を動かしてみて不具合がないことを確認する。


特に問題無かった聡介は倉庫の中へと戻り、クレイモアを取り出して腰に差す。


扉を閉じ、そのついでに再び練成して継ぎ目をなくすと擬装用の木の床板を張る。


再び工房の中へと戻った聡介は、クレイモアを鞘から抜いて一通り振り回すと、満足した顔で鞘へと剣を収める。



「よし、この防具と剣も問題はない。……流石に銘ぐらいは付けとこうかな……。何にしよう?」



剣にも防具にも銘ががないことにようやく気づき、いまいち締まらないなと思った聡介は、急遽銘を考えることにした。


しばらく考えていた聡介だが、オリハルコンの別名『オーリキャルク』を防具の名前にし、剣の銘を『クラウ・ソラス』にすることにした。


『オーリキャルク』は、オリハルコンそのままの名前だが、『クラウ・ソラス』の方は、その名の通りの伝説を持っている訳ではないので、完璧に聡介の趣味によるものだ。


名前を決めて満足した聡介は、未だに準備の途中であることを思い出して、あわてて準備を再開した。




■□■□■□■□■□■□


工房の分厚い鉄の扉を押して現れた聡介の姿を、準備を終えて先に工房の前で待っていたジョージ達は見て驚いた。


なぜなら今の聡介の恰好は、深紅の鎧の上に、真っ白な外套を纏った姿だったからだ。


たしかに、燃えるような深紅に真っ白な外套は良く似合っていたが、ただそれはかなり目立つ物だった。


この国周辺では、鎧に調金や、装飾をする以外に色をつけるという習慣が無かったからだ。


結果として聡介の深紅の鎧は目立ちやすい物となってしまった。



「ソウスケのその鎧って結構目立つね。鎧に色をつけるなんてことはここら辺じゃしないから、それはソウスケの住んでた地方特有の装飾法なのかしら?」


「ん~、そうじゃなくて、この金属自体が色を持ってるんだ。ほら、この鎧見てくれたら分かるんだけど、表面が揺らいで見えるでしょ?」



不思議に思ったのか、エミリーが聞いてくると、聡介は外套から腕を出してガントレット部分をエミリーの目の前に出した。


すると、話を聞いていたのかジョージとジャックも、エミリーの横から覗くようにしてガントレットを見てきた。


3人が見ている間も、鎧の表面はゆらりと紅く揺らめいている。



「へぇ……キレイだね……魔力でもかかってるのかな?」


「実は結構強力な魔力が込められてて強度もすごいんだよ?」



ジョージとジャックは少しの間みていただけだったが、エミリーは女の子だからだろうか、しばらくの間、揺らぐ鎧の表面を見つめていた。



「まぁそれもいいが、さっさと遺跡に行っちまおう。この時間ならまだ他の奴らは来て無いだろうからな」



ジョージがそう言ったので、エミリーも聡介の鎧を見るのをやめて自分の荷物をもった。


各々が荷物を持ったのを確認したあと、聡介が店の戸締りをして店の外へとでる。


遺跡はガーランドの街より北東に1時間ほど歩いた先にあるらしく、今回は馬をつかわずに歩いて行くことにした。


飲み物と食べ物を用意した一行は楽しそうに談笑しながら遺跡へと歩いていく。


そのとき太陽には少し雲がかかり、太陽の放つ光をいくらか遮っていた。




■□■□■□■□■□■□


山の斜面に築かれた遺跡の入口が見え、入口まであと少しとなったころ、雲行きが怪しくなっていた空から大粒の雫が落ちてきて、それは瞬く間に大量の雨となっていった。


遺跡の入口に飛び込んだ4人は、体に僅かに着いた水滴をはたいて落とし、外の光景に目をやった。


外では強い雨がザァザァと降っていて、止むのはいつごろになるか分からない。


そんな光景を面倒くさそうに見ていたジョージが、松明に火を灯しながら口を開いた。



「この雨の中鉄クズ探すのも面倒だし、先に遺跡の中をみてまわるか……。遺跡の中の通路は多少薄暗いがまぁこの松明で我慢するしかないだろう。」



ジョージの言葉を聞いた聡介は、松明よりも明るくできる灯油ランプのことを思い出し、鞄の中へ手を突っ込んで灯油ランプを取りだすと、ジョージの松明から火をもらって灯油ランプに灯りをつけた。


それを、先頭を行くジョージに渡すとジョージは驚いた顔をした。



「明るいな、松明なんか比べ物にならねぇ……。これもソウスケのいた地方のものなのか?」



興味津津と言った顔をして灯油ランプを見ていたジョージが、聡介に尋ねると、聡介は話を合わすことにして練成したことを誤魔化すことにした。


その返事を聞いて満足したのか、ジョージは機嫌がよさそうにしながらランプを掲げ、ズンズンと奥へと進んでいく。


途中で大型のコウモリや、狼らしき魔獣に出会ったが、3人にとっては敵では無いらしく、すぐさま切り捨てていったので実にスムーズに進むことが出来た。


途中にある彫像や壁画を説明してもらっていると、ついに最奥の部屋へとたどり着いた。


その部屋は、他の部屋や通路とちがって天井が高く、広い聖堂のような場所だった。


更に特徴的なのが、山の中にも関わらず白い光がどこからか差し込んできていて室内を満たしていることだった。


部屋の奥には、黒いつるりとした大きな石壁があり、その左右を守るようにして大きな石像が立っている。


その光景はとても荘厳で神聖な空気を感じ取ることが出来た。


奥へと歩いていき、石壁の前までいくと、その石壁には文字が書いてあることが分かり、それを誰かに読んでもらおうと思うと、隣に来ていたエミリーが説明を始めてくれた。



「この文字を訳すと『王の証持たざる者何人も入るべからず。……――ココは削れている――は死の制裁を心得るべし。王の証持つ者道を進み、精霊を従え、清浄なる光を持って闇統べる腐敗の王を滅すべし。』ってなるのよ。これは古代文字でね、3000年前に滅んだ王国の文字だって言われてるの。でもそれも不確かな物で、有るかどうかも分からない伝説の中の王国なのよ。それに王の証っていうのも、収める場所すら無いから形も分からないし、大きさも分からないの。だから、調べることを誰もが諦めた遺跡ってわけね。」



そう言ってコンコンと石壁を叩いたエミリーは微妙に不機嫌そうな顔をしていた。


なぜだろうと思っているとエミリーが口を開く。



「この煤……誰かがここで石壁を爆破しようとしたみたいね……」



エミリーが見ている場所を見ると、たしかにうっすらと煤がついていた。


自分も錬金術でいつか壊してみようと思い、材質をたしかめようと考えた聡介も石壁に近づいていく。


ガントレットを嵌めたままの手で石壁を叩く聡介。


響いた音が甲高く、聖堂のような室内にひびきわたる。





そして


ビキッと何かがひび割れる音が大きく室内に響いた。





聡介達4人がギョっとして大きな音を立てた方向を見ると、石壁が縦に真っ直ぐに割れて内側に開いて行った。


石壁があった空間の奥には地下へと続く階段が真っ黒な口を開けて待ち構えている。


聡介達4人はしばらく動けないでいた。


そして初めに口をひらいたのはジョージだった。



「ソウスケは王様だったのか……?」


「いやいや、そんな訳ないから!」



ジョージの素のボケに全力で突っ込む聡介。



「……理由は分からんが開いたなら俺達が最初の発見者だ。どうする?ソウスケ。さっきの石壁を見る限り、なにかしら戦闘があるのは確かだと思う。行くなら俺たちも追加料金を貰う形にはなるが付いていくぞ」


「ん、ちょっと不安だけど自分が触って開いたんだから行かなきゃいけない気がする……。悪いけどお願いするよ」


「あぁ分かった。ただ、何があるか分からないから細心の注意を払っていくぞ。俺が先頭で次がジャック、ソウスケ、エミリーの順番だ。離れるなよ。」



ただならぬ雰囲気を階段より感じ取ったジョージは、気を引き締めると隊列を整えた。


プロに従うしかない聡介は、不安半分期待半分という気持ちでいた。


長く、暗い階段を下りていく聡介達。


異様な雰囲気は大きくなるばかりで、聡介達はだんだんと不安になってくる。


長い階段が終わり、突如として開けた場所に出たと思うと、そこは真っ暗なドーム状と思われる広大な空間だった。


その空間の中心で、強い光を放つ円柱が一本だけポツンと立っている。


誘蛾灯に集まる虫達のように、強く明るい光に魅せられて引き寄せられていく聡介達。


しかし、聡介だけを残して他の3人は突如として進めなくなる。


まるでそこに見えない壁が存在するように、3人は行く手を阻まれた。


一人進んでいく聡介は3人がついてきていないことに気づかない。


今の聡介の目には光り輝く円柱しかみえていないのかもしれない。


光に魅せられていたということに、ようやく気付いた3人は聡介をとめようと口ぐちに叫ぶ。


それすらも聞こえていないような聡介はどんどんと円柱へ歩みを進める。


円柱まで、あと3mとなった時、変化は訪れた。


光り輝く円柱が暗闇の中で一際大きく光を放つと、円柱は消え去り、そこには光り輝く一人の美しい女性が立っていた。




4778文字です。ついに話数が2ケタになりましたよ!

自分……がんばってます!

ただ…未熟なので表現しにくい部分もあるのは事実……。

気を引き締めていきたいと思います。

さて、今回は伏線回収しました。伏線はあの話にありますよ!

…さて、次回はでかい山場です。時間がかかると思います。

でも、次の回はすごく重要なので楽しみにしててください!

私は感想がなくてもめげない!(嘘です、すいません

ではでは、次回をお楽しみに!

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