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放課後

夕方の職員室は、静かさと暖かさが混じった独特の空気に包まれていた。

窓から差し込む光が机の上の書類を淡く照らし、影がゆっくり伸びていく。


その中で、私【星野ひな】はすぐに見つけてしまう。

ーー田中先生の姿。


引き出しをひっくり返して、眉を寄せながら何かを探している。

その仕草が、どうしようもなく愛おしい。


「田中先生」


声をかけると、先生はぱっと顔を上げた。

その瞬間、夕陽の光が先生の横顔を柔らかく縁取って、胸が少しだけ熱くなる。


「星野さん、どうしたの?」


ただ帰る前に寄っただけ。

でも本当は……先生の姿を見たくて来た、なんて言えない。


「そんなことより、鍵探してるんですか?」


「うん、どこに置いたのかわからなくなっちゃって」


困ったように笑うその表情が、またずるい。

気づけば私は、自然と机の下や棚の上を探し始めていた。


そこへ、朝比奈先生が腕を組んで近づいてくる。


「田中先生、また鍵ですか」


呆れた声なのに、どこか優しさが混ざっている。

二人のやりとりは、まるで長年の友達みたいで、少しだけ胸がざわつく。


もし、私が先生の同僚だったら。


そんな馬鹿みたいなことを考えながら探していると、プリントの下に小さな金属の光が見えた。


「あ、田中先生、これ……」


差し出すと、先生の顔がぱっと明るくなる。


「ほんとだ……ありがとう、星野さん」


その笑顔を向けられるだけで、心がふわっと軽くなる。

こんな瞬間のために、私はここに来ているのかもしれない。


「よかったです。見つかって」


そういった時だった。

先生の手が、そっと私の頭に触れた。


ーーえ。


優しくて、あったかくて、胸の奥が一気に甘くなる。

驚いたのに、嫌じゃなくて、むしろ……もっと触れて欲しいなんて思ってしまう。


「急に撫でるのは……ずるいです」


小さく呟くと、先生はくすっと笑った。


「そんなに大袈裟に言わなくても」


「大袈裟じゃないですよ。田中先生は……特別なんですから」


言った瞬間、顔が熱くなる。

でも、先生は怒らない。

ただ、少し照れたように微笑んでくれた。


その笑顔が、夕暮れの光に溶けていく。


ーーこんな時間が、ずっと続けばいい。


そう思いながら、私はそっと先生の横顔を見つめていた。

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