事八日のお話 ~ ひとつ目お化けと北欧の最高神とサンタクロース
少し先ですが、十二月八日は『事八日』です。
『事八日』って何なのよ?と言いますと、始まりの日で終わりの日です。
これだけ書かれても意味が分かりませんね。
『事八日』は年に二回あり、本来は旧暦の十二月八日と二月八日がそれに当たり、それぞれが『事始め』であり『事納め』で、どちらにもなりえます。
十二月の『事八日』は、人事…つまり農業などの人の生業の終わりであり、神事…つまり正月準備などの神様の行事の始まりです。逆に、二月の『事八日』は人事…農業などの人の生業の仕事始めであり、神事…正月に関わることの終わりの日、ということになります。地域によっても違いますし所説もありますが。
さて。この事八日ですが、色々な行事が混ざり合っているようで、地域によってやることや伝承がばらっばらです。
十二月八日の有名な行事ですと、西の方では豆腐に針を刺して神社に持って行く針供養がありますね。針仕事を休み、この一年で駄目になった針を供養してあげるわけです。
で、です。
この日、一部地域ではいろんな形のひとつ目の妖怪がやってきます。ひとつ目小僧だったり、ダイマナコだったり、山の神だったりです。山の神田の神信仰(農業の季節には山の神が下に降りて来て田の神になり、農業の季節が終わると山に戻って山の神になる)との絡みが見受けられる地域ですね。
閑話休題。
このひとつ目さんたちの一部がどこから来るかと申しますと、お空の上からやってきます。
何をしに来るのかというと、厄を運んでくるわけですね。現在でも十二月八日周辺はインフルエンザが蔓延していて、ばっちりと厄が降りかかっているわけですが…大黒様が福をもってやって来る地域もあったりします。
そして同じころに、西洋でもひとつ目の恐ろしい者が空を飛び回ります。
北欧神話の最高神、オーディン率いるワイルドハントです。
ワイルドハントは言うなれば百鬼夜行。八本足の馬スレイプニルに乗ったオーディンを先頭に亡者や魔犬、英霊を率いてばったり出会った人を連れて行ってしまうとかなんとか。
十月三十一日のサウィン(ケルトの新年、のちのハロウィン)から冬至の間をピークに四月三十日のワルプルギスあたりまでは空を飛び回ります。
このオーディン、うっかりワイルドハント中(現実には吹雪とか嵐とかの象徴とか)にお外に出ていた人を(あの世に)連れて行ってしまうわけですが、ばったりワイルドハントに出会ったときに一団に敬意を払い、ユーモアがあり、心が純粋で勇気があり、度胸試しで勝てた人は連れて行かずにその人の靴いっぱいの金塊をくれるんだそうで。
ついでに、冬至祭の前日に、愛馬スレイプニルのために飼い葉や砂糖を用意して暖炉に靴下を置いておいた子供には贈り物を置いて行ってくれたそうです。
同じころ。国によりますが魔女ベファーナさんやらサンタクロースやら色々なものが空を飛んで幸福やらお菓子やらの贈り物を置いて行きます。
関連性があるのか、というと、北欧と西洋の皆さんは関連がある…とする説もあります。(オーディンが空を飛ぶからサンタが空を飛ぶようになった…とかね。否定的な意見が多いようです)
ただ、遠く東の果ての日本のひとつ目さんたちが西から来たのかというと、時期的に見てもそれはありません。当然、逆も然りです。
東西は違っても同じような時期に同じようなもの(サンタは違うか)が空を飛ぶ……。
人の発想とは、中々興味深いものですよね。




