表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/9

学校生活はいたって普通に流れている

 なんだか今朝は落ち着かなくて早めに起きてしまったから早めに家を出ることにした。

 なんで落ち着かないか。それは頭では何となく分かっているけど上手く言葉にできない。こんな時は気分転換が必要だよ。少しだけ寄り道をしてみようかな。


 どうやらこの路地はコーヒーの匂いに満ちているみたい。昨日と同じように店の中を覗くとマスターはいつも通りカウンターにいて、今日は先輩の姿もあった。思わず胸が高鳴る。見ているだけで元気がもらえるみたい。

「へ〜、お手伝いとかしてるんだ」

 不覚にもまたマスターと目が合ってしまう。今度はちゃんと分かるように手を振ってから先輩に一声かけるとドアが開くと一緒にコーヒーの匂いもやって来る。目の前には先輩の姿があって思わず笑ってみる。

「そんなところで覗いてないで入ったら?」

「お、おはようございます」

 先輩に言われてちょっとだけ顔が赤くなる。私は言われるまま中に入る。

「えっと確か、藤川、だよね。新入部員の」

「名前、覚えてくれてたんですか?」

「当たり前でしょ。それよりウチにコーヒー飲みに来たの?でも時間あんまないよね」

 こういう展開を期待していたわけじゃないけど、もしかしたら会えるかもって思っていたところはある。なんだかこれじゃストーカーみたいじゃん。何て答えよう。

「パパ、後輩が迎えに来たから今日は終わり」

 先輩はエプロンを取る。下には制服。鞄を手に

「お弁当は?」

 マスターは奥からお弁当の入った巾着と携帯ポットを出して

「いってらっしゃい。けどまだ時間早くないか?」

「そんなことないよね」

 先輩は私に向かって言う。つい反射的に頷く。店にいる常連さん達がそれぞれにいってらっしゃいって見送ってくれた。


 学校までの道程を先輩と並んで歩く。一体何話そうか。沈黙のままじゃ気まずい。

「いや〜助かったよ」

 悩む私のことを知ってか知らずか、先輩の方から話し掛けてくれた。

「そう・・なんですか?」

「だって昨日帰ってきたばっかりなのに朝からコキ使われてさ。ま、嫌いじゃないけど今朝くらいゆっくりさせてくれたっていいと思わない?」

 そう言って笑う。髪を昨日と同じポニーテールにしている。ブログも大体同じ。きっとお気に入りなのかもしれない。ヒッチハイクしている割には肌が白いしスッと通った鼻筋がとてもキレイだ。意思が強そうな視線なのに他人には優しく見える。それにどことなく男気を感じてしまう。


「ねえ、さっきは咄嗟だったけど、えっと、藤川のことあやせって名前で呼んでもいいかな?」

「あ、はい」

「で、私のことはアイアイでいいから。ずっとそうだったからこの方がしっくりくるからさ」

「はい。それじゃ、アイアイ先輩って呼ばさせてもらいます」

 緊張してあまり会話になっていない気がする。もっとちゃんと会話したいのにもう学校に着いていた。

「じゃあ放課後。部室で」

 私は『はい』とだけ答えて教室に向かう。先輩の後ろ姿がキラキラしているように見える。果たして私も同じようにキラキラすることが出来るのだろうか。背中を見送ってから自分の教室に向かった。

 やっぱりまだ少し早い時間。けれど校庭では運動部が元気に声を出して練習をしていた。その人達の姿も同じようにキラキラしていた。


「おはよう。あやせ」

 教室に入るなりすぐに声が掛かる。

 人気のない教室の空気はまったりとして目覚めたばかりのような感じがする。窓から差し込む日光も柔らかい。

「ともり、おはよう。早いね。まだほとんど来てないよ。今朝も5時起き?」

「当たり前でしょ。そういうあやせこそ早いじゃん。どうしたの?」

「うん、なんか早くに目が覚めて。散歩ついでに先輩の店に寄り道したんだ、まあ成り行きで」

「それって昨日帰ってきた先輩のこと?」

「うん。時間たくさんあったからさ。なんか顔見れたらなって思って」

 言っているうちになんだか顔が熱くなってくる。これってちょっとした興奮状態なのかな。そんな私のことをじっとともりは見て

「ふ〜ん。ずいぶん熱が入ってるじゃん。なんかさ、人の振り見て我が振り直せってあるじゃん。もしかして私も他から見たらそんな感じなのかな?」

 そんな風に見えているのかな?それにともり自身も自分のこと分かっているみたい。

「それって相澤君に対してってこと?」

「まあね。人の恋路ってさ、他の人から見たらどうでもいいことでしょ。それを見せつけられるのって、ちょっと、なんていうか恥ずかしいみたいな。実際あやせもそう思ってたでしょ」

 いつもと立場が逆転しているみたい。確かに私はともりのことを見て思うところはあったのは事実。でも恥ずかしいなんて思わない。

「ま、別にいいんだけどね。でもさ、私がどんな気持ちでいるか少しは理解してくれたかな」

「理解って。対象が男か女かでずいぶん違うように思えるんだけど。でもまあ、そうね。憧れの人に近づきたいって気持ちは理解できたような気がする」


 たわいもない会話を交わしていると教室の中は次第に登校してきたクラスメイトで埋まってくる。やっと通常の光景になったところで始業を知らせるチャイムの音に合わせるように相澤君が教室に入ってきて挨拶も無しに席に座る。


「おはよう」

 早起きってちょっとテンション変わるよね。これからは部活でも顔を合わせるのにこの態度は納得出来ない。つい元気よく挨拶をするとやっとこっちを見て

「ああ」とだけ言って教科書の準備を始めた。ともりは名残惜しそうに自分の席に戻ってゆく。

 あんまり話しかけられたくないのかな?そうだとしても、もうちょっと愛想ってあるでしょ。でも今は無視しなかっただけで良しとしよう。明日はちゃんと普通に挨拶して欲しいな。そんなことを思いながら私も授業の準備をする。

 朝から数学とは。さっきまでの高テンションが反比例してゆく。だが一番最初に会えたのがアイアイ先輩だってことが再び私のテンションを盛り返させる。これくらいなんてことない。自分自身をキラキラにするためには目の前のことにちゃんと立ち向かっていかなきゃ。

 よし。やる気が出てきた。この調子で今日一日頑張ろう。授業も部活も。

 でも・・・数学・・・嫌いじゃないけど。朝一は改善してもらえるとありがたいなぁ・・・。

読んでいただきありがとうございます。

う〜、かなりまったりしている?

私の中では必要かと思い書いていますが、進みが遅い分こういう展開もあるのかな。

だからと言って劇的な展開のある話という位置づけじゃないので。

まったりしていますが次回もよろしくお願いします。

そうそう今日はハロウィンですね。

渋谷には近寄らないようにしないとね(個人的に)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ