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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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7/9

やっぱりこうなるのか


 夕食の間ずっと身体と頭がフワフワしていた。まだ私の心はあの風景の中にあるみたい。


「おかえり」

 部長が言う頃には亜衣香先輩は目の前まで来ていた。私はドキドキしっぱなしで声を掛けることができなかった。


「なんとか始業式には間に合ったみたいだな。って浅倉、縮んだ?」

 そう言ってともりの頭を撫でる。

「アイアイ先輩、似ているけど今年の新入部員だから」

 フォローを入れたのは凛柊先輩だ。先輩は納得してから

「そっか、そっか。期待してるよ。名前は?」

「一年六組 逸見ともりです」

「六組?じゃあ瞬と一緒だ。ところで、いるはずないか」

 亜衣香先輩は一応周りを見回していた。

「入部届け出したらすぐに帰ったわよ」

 部長が説明する。

「分ちゃいたけど愛想のないヤツだな。ま、今日帰るって知らないから・・・って」

 私と目が合うとニッコリする。慌てて

「わ、私も一年六組 藤川あやせです。よろしくお願いします」

「今年はもう三人もか。いいねえ。よろしく二人共」

 それからすぐに帰宅時間になった。私達は約束通りその場で挨拶をして下校した。先輩たちが部室に戻ってゆく後ろ姿が私には眩しく映っていた。

「明日から楽しくなりそう」

 ともりの考えていることは大体分かる。満面の笑みで電車に乗り込んでいたからだ。私も、そうだねと言って手を振るとともりを乗せた電車は発車してゆく。


 そして現在に戻る。あの後先輩達はどんな話をしていたのかな?もの凄く気になる。

「あやせ、ご飯美味しくない?」

 お母さんの声で我に返る。手の持った味噌汁を一旦ゆっくり置いて

「ねえ、お母さん。私、部活に入った」

「例の?」

「・・・う・・うん」

 お母さんは溜息混じりで

「ほんとにヒッチハイクなんて。あんたがね」

「今日先輩が帰って来たの。だから、その・・」

「心配するなって、心配に決まってるじゃない。知らない人の車に乗るってことでしょ。今のご時世何があるか分からないのよ」

 部活のことに関してはあらかじめ説明はしておいた、が、お母さんは未だなかなか良い顔色をしない。自分なりにネットでいろいろ調べて部活のことをプレゼンしたんだけどな。


「パパからも何か言ってよ。この子ホントに入っちゃったのよ」

 お父さんはまだ賛成とも反対とも言っていない。もしかして関わりたくないのだろうか。

「・・・まだ何とも言えないな」

「またそう言ってはぐらかす。ここはパパからちゃんと言ってくれないと」

「でも危ないって一方的に決めつけてもな。あやせの話じゃ今まで危ないことはなかったって聞いてる。きっと安全対策が施されているんだろう。そうだろ」

「えっと、明日説明会があるの。そこでいろいろ聞けると思う」

「ならそれを聞いてからでもいいんじゃないかな」

 お父さんは晩ご飯の続きに取りかかる。お母さんはあまり納得していないみたいだけどそれ以上は言わずにトンカツを食べる。私も沈黙のまま食べ始める。どうしたら納得してくれるのかな?今は強く反対されないだけまだ希望が持てる。そう思うことにしよう。


「ごちそうさま」

 部屋に戻ってノートパソコンを開く。そして亜衣香先輩のヒッチハイクブログを見る。今日のことがもう書いてあった。


『本日無事帰還。これまでのことはボチボチアップしてゆく。それと今日一番驚いたのは新入部員が三人も入ったこと。期待してるぞ。そのこともおいおい紹介してゆく。今日はもう疲れたのでおやすみなさい』


 写真が一枚だけアップされていた。これって校門を目指している先輩の長く延びている影の写真だった。こんな風に書いてあるってことは私達は歓迎されてるってことだよね。

 私が“いいね”を押す頃にはすでに三十人以上の、いいね、がある。

 このブログは先輩が部活を始めた時に始まったものだ。やっぱり先輩も親に反対とかされたのかな?最初のページを見てもそんなことは一言も書いていない。けどマスターは心配していたよね。

 やっとここまで来たんだ。今さら考え直す気はないけど親を心配させるのにも気が引ける。今まではそんなことないって言ってたけど実際部活に入ると簡単には言えないような気がする。先輩たちは一体どうやって親を説得したのだろう。聞いたら参考になったりするのかな?

 画面を見ながらつい溜息。でもさ、これって試練の一つ。そう考えよう。きっと分かってくれる。危ないことなんて絶対とは言えないけど胸を張って“ない”って言えるようにならないと。それもきっと明日の説明会で明らかになるだろう。


「あ、ともりからだ。えっと、親がめっちゃ反対している・・・・だよね。こっちも。入学前から説明していたけどイマイチ。みんなどうやって親を説得したのかな?っと」

 返信してから画面を見ていると

「・・・そっか。お互い大変だね。でも私は諦めない。絶対説得するからあやせもガンバ・・・ともりって前向きだよね。え〜と、うん。お互い頑張ろう。それじゃ明日っと」

 ともりからおやすみのスタンプが届いた。まあ、とにかく明日だ。今日は私ももう寝よう、と思ったところで今度は電話が鳴る。あ、これって


「もしもし、あやせまだ起きてる?」

 元気な声が聞こえる。離れてからまだそんなに時間が経ってないのに懐かしい声に安心する。

「お姉ちゃん久し振り。うん起きてるよ。そろそろ寝ようかなって思ってたけど」

「なら良かった。完全に時差で昼と夜が逆転しているからね」

 お姉ちゃんは去年アメリカの大学に進学した。お正月も帰って来なかったから半年は確実に経っている。懐かしい声に肩に入っていた力が抜ける。

「久し振りのお姉ちゃんの声だぞ。懐かしいだろ」

「・・・うん、そうだね」

「・・・何かあった?」

「声で分かるんだ」

「当たり前。あやせのことは何でも分かるよ」

「さすがだね、お姉ちゃん」

 自分の弱音が素直に伝わってしまう。ずっと後を付いていた頼りになるお姉ちゃん。でもさ、なんでわざわざ外国の大学に・・・そう思っても不思議じゃないかな。

「お母さんに部活のことやんわり反対されてる」

「入ったんだ、ヒッチハイカー部」

「うん。でもさ、まだ胸張って問題ないよって言えない自分がいるんだ」

「そっか」

 ちょっとだけ空白の沈黙があって

「ま、あやせ次第、かな。そのために受験だって頑張ったんでしょ。今だから言うけどさ、私だってこっちの大学受けるのやんわり反対されたよ。でも私には譲れない想いがあった。あやせもさ、譲れない想いってあるんでしょ」

「・・・譲れない想い」

「そ。自分のやりたいことの情熱かな。簡単そうで難しい、もっと言うと難しいけど意外と簡単なこと。私にも出来たんだからあやせにだってきっと出来る」

「ありがとう。そう言ってもらえると頑張れる気がしてくる。お姉ちゃんもそうだったって思うとなんか勇気出てきた」

「そうそう。でもね、中途半端は駄目だよ。ちゃんと理解してもらわないと本気になれない」

 こんなタイミングでお姉ちゃんから電話なんて、やっぱり運命が後押ししてくれているみたいで前向きになることができる。

「うん。私、頑張る。ちゃんと理解してもらう」

「そうそうその意気だ。そうだ、言うの遅れたけど高校合格おめでとう。そっちに荷物送ったから」

「荷物?」

「合格祝い。これから学校だから。またね」

 私が返事をする前に電話が切れた。相変わらずだね。でもありがとう。いってらっしゃい。そしておやすみなさい。

 電気を消してベッドに横になる。お姉ちゃんの言葉が頭の中で誇張されてゆく。私だって強い想いを持って今に至っているんだ。けどそれってどうやったら伝えることが出来るのかな。きっと出来る。お姉ちゃんはそう言ってくれた。勇気をもらったんだ。信じているんだ。私ならきっと出来るって。ならその期待にも答えたい。私だって・・・うん、頑張らなきゃ。

 月明かりがカーテンの隙間から入ってきて天井を照らす。それをしばらく見ていたはずなのに気が付いたら朝だった。

相変わらずのんびり進行しております。

読んでいただきありがとうございます。

こんな調子で続いていくかもですが、次回もよろしかったら立ち寄ってください。

よろしくお願いします。

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