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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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秋葉原。再び

 今日は土曜日。

 あとは必要な備品を買って最終チェックだけとなる。

 相澤君は前の時と同じで十一時に秋葉原駅の電気街改札を指定。あの時も暑かったけど、今日も良く晴れて気温も上々。湿気がない分、かなり快適な陽気だ。

 そして

 私とともりは同じ電車でばったり遭遇した。


「おはよう。今日は暑いね」

「ホント、暑いよね。ともり、おはよう。同じ電車だったなんてね」

「そうだね。それより・・・」

 ともりは私のことを頭の先からつま先まで見て

「こう言っちゃなんだけどさ、ずいぶん普段着みたいだけど」

「うん。普段着だけど・・・?」

 それがなに?どういうことなんだろう。何か問題でもあるのだろうか。

 しかし

 ともりの言いたいことはどうやらそういうことではなさそうなことは雰囲気でなんとなく感じる。次の言葉を待っている私にちょっとだけ溜息をついて


「あのさ、クラスメイトと一緒にお出掛けだよ」

 そう言ってともりは自分の今日の服装を見せる。

 正直、制服より短いスカートは会った時から気になっていた。それから膝より高いソックス。見ているとこれってあのお店の衣裳に似ている。いわゆる絶対領域ってやつだよね、確か。

 さらに薄らとだけど化粧だってしている。いつもより赤い色をしたくちびるはリップのおかげでツヤツヤのプルプルだし。

 私は恥ずかしくてとてもできない。ともりには似合っているけどね。


「あのさ、なんで瞬君と会うのにそんなにラフなの?」

 私はあらためて自分の服を見てみる。大きめの長Tに色あせたジーンズ。それに白色のコンバース。特におかしくはないと思うけど。

「いつもこんなだよ、私は。この間のだって似たようなもんだったし」

 ともりはなんだか残念そうな溜息を漏らして

「そういうのって青春してない」

 そうキッパリ言い切った。ちょっと戸惑ったけどそんなことない。

「そんなことないよ。私だって青春している」

 この返答には納得していないみたい。

 

 まあ、ともりの言いたいことは分かる。もっとおしゃれとか興味を持てってことだよね。

 でも今の私にとってあまり必要ないし、そもそも必要と感じたことは今までの人生で一度だってない。

 そう正直に言う。


「高校生だよ。三年間だけっていう貴重で大事な時間を今リアルに過ごしているの。私達は」

「だからっておしゃれだけが青春じゃないよ思うな。私には私の、ともりにはともりの青春があるってことでいいんじゃないかな。それに私、ともりみたいな服はあまり似合わないと思うし。あ、この間から思ってたけど。ともりはすごく似合っているしすごくかわいいよ」

 ここは一つ、褒めて話題を終わらせよう。やっぱり私にはまだ必要だって思えない。

 私にはもっと必要なことがある。今はそのことに集中していたい。


「あ、ありがとう・・ってそういうんじゃなくて」

 ん?まだ続けるつもりなの?ここはもうはっきりとさせておいた方がいいのかもしれない。

「もう何なの?要するに、私のカッコウがダサいってこと言いたいんでしょ」

「そんなこと言ってないよ。私だけこんな気合いの入ったカッコウしてたら変じゃない。だからお出掛けの時くらい合わせようって話」


 なるほど。ともりの言い分も分からないでもない。


 私は電車の窓に映る姿を見てともりと比べてみる。私には一体どんな服が似合うのか、そんなことあまり考えたことなかったしスカートだって制服以外で履いたことはほとんどないっていうか持っていないような・・・・。

「そうだね・・・そういうことなら・・・検討するよ」

 とりあえず何時になるか分からない約束をして、私達は秋葉原駅に到着した。


 電車を降りた瞬間。なかなか季節外れの強烈な日差しが降ってくる。

 私はこの前の教訓で水筒を持ってきていた。待ち合わせの時間にはまだ二十分くらいあったからだ。


「暑い。季節間違えてるんじゃない?」

 そんなことを言いながらともりは改札を出ると日傘を広げた。

「へ〜そういうの持ってんだ」

「今時当たり前でしょ。それに私、肌が弱いからあんまり強烈な日光には当たりたくないんだよね」

「そうだったんだ。知らなかった」

「あとさ、せっかく色白で生まれたんだもん。この白さは死守したいよね。そういうのって今から対策しておかないと。歳取ってからシミとか嫌だし」


 シミ・・・そう言えばお母さん最近鏡を見ながらブツブツ言っていたような。

 まだまだ自分には遠い未来のことだと思っていたから考えたこともなかった。

 そっか、もう将来に向けて勉強とか部活以外にもいろいろやらないとならないんだ。確かに廻りを見てみると同い年の子達は日傘率が多いことに気が付く。

 私は自分の肌を見てみる。ともりほどじゃないけど私だってどちらかというと色白に方に入るのかな。


「早いな」

 急に後ろから声を掛けられてビックリして振り返ると

「よ。俺も一緒だぜ」

 相澤君と結城君が目の前にいた。ということは二人は私達より早く来ていたのかな?

「私達の方が早いと思ってたよ。何時からいるの?」

 ともりの視線はイケメンよりに二人の顔を視界に入れて聞いた。それには結城君が答えて

「ああ、ついさっき。同じ電車だったみたいでさ、俺達の前をちょうどお前達が歩いていたんだよ。声かけようって言ったら瞬のヤツが放っとけだって。なんだか後を付けてるとストーカーってこんな感じなのかなって思ったぜ」

 そう言って結城君は笑った。


 それにしても今日もキメてるな。ピッタリとしたTシャツの上には投網みたいな長袖を重ね着していて下は黒の革パンでブーツだ。ポケットにはチェーンがあって財布に繋がっていた。実際近くで見てみるとかなりゴツい。

「これさ、高校の入学祝いに買ってもらったんだ。なかなかイカすだろ。全部銀だから重いのが難点だな」

 持たせてもらうと確かにずっしりと重さを感じる。こんなのをぶら下げていて疲れないのだろうか?そう聞いてみると、ファッションに多少の犠牲は付き物だ、って返って来た。なるほどそういう意味じゃともりと話しが合いそうな気もする。

 相澤君はというといつも通りラフだ。ちょっと色あせたジーンズに半袖の襟付きシャツ。高校生というよりは大学生みたいに見えないこともない。これはこれでともりとは話が合わなさそうに見える。


「逸見ってこの間から思ってたけどおしゃれだよな。そのブーツってミスターマーチンだろ」

「まあね。そういう結城君だって、クロームハートだよね、それ。もしかしてお金持ちなの?」

「いやいや、いたって普通。これだって半分とまではいかないけどお年玉とか小遣い貯めて自分でも出してるから。憧れだったからな。おかげで受験勉強も頑張れた」

 私には二人の会話に付いていけない。多分それぞれが好きなブランドだろうけど聞いたこともない。会話の内容は宇宙の起原でも聞いているみたいで遥か遠い場所のように感じる。けれど今の高校生ってこれが普通なのかな?


「そろそろ行くが会話は終わったか?」

 相澤君が言うと二人共息を合わせたように頷いた。やっと戻ってきたことに安堵する。

「先ずは二人のモバイルバッテリーだったな。いい店知っている」

 私達は相澤君を先頭に街中に繰り出した。日差しは痛いくらい。ともりは私にも日傘を半分わけてくれた。ただそれだけなのに効果は絶大だ。これだけの効果があるなら買ってもいいかもしれない。

「ありがとう」

「どういたしまして」

「あ、いいな二人共」

「残念だけど翠君の分はないの。でも」

 ともりはトートバッグからハンドタオルを出して渡した。なんて用意がいいのだろう。察するにこれって相澤君のために用意しているんだよね。多分。結城君は受け取って額に浮かんだ汗を拭う。

「サンキュ。これ洗って返すな」

「うん。瞬君も使う?」

 むむ?まさかの二人分?イケメンは振り返って

「いや。大丈夫だ」

 ちょっと残念そうなともり。あ、そうだ。

「私、アイスコーヒー持って来てたんだ。ブラックだけど飲む?冷えてて美味しいよ」

「ブラックか。ごめん」

 やっぱりともりには無理か。ごめんね。私の味覚に合わせてあるから。心の中で一応謝ってみた。

「そっか。だよね」

「なら俺が飲む」

「え、う、うん・・」

 急にそんなことを言う相澤君に水筒を渡すとキャップを外して一口飲む。見ていると気持ち良さそうに喉が揺れているのが分かる。

「・・・まあまあだな。よく冷えている」

「瞬、俺にも俺にも。藤川、いいか?」

「うん。いいよ」

 私は了承したのに相澤君は私に水筒を返して

「先ずはあやせが飲め。自分で持って来たんだ」


 あの・・・

 確かに見てて飲みたくなったけど、冷静に考えるとこれってさ、やっぱり、だよね。

 それに今しがた隣りからもの凄く強烈な今日の太陽より熱い視線を感じるんですけど。


「早く飲んだら?結城君待ってるし私は飲めないし」


 うう、早く決断しないと。こんな所で立ち止まっている場合じゃないし。

 私は腹を括って同じ場所、そこしか飲み口がないから仕方ないけど、口をつけて飲んだ。


 一度そうしてしまうとなんて事はない、と思ってしまうのは私が恋愛とか、男子とかに無頓着だからなのだろうか。

 言った通り、よく冷えている。美味しい。喉が喜んでいる。こんなに美味しいのにちょっとでも躊躇した自分に言ってやりたくなるよ、ホント。ほんの数秒で世界は大きく広がっていくと。

 それを今度は結城君に渡す。一応私の後だから躊躇うかと思いきや、なんの躊躇もなく残り全部を飲んだ。

「悪い。ちょっとしかなかったから全部飲んじゃった」

「え、いいよ、元々そんなに入るヤツじゃないから。それよりどうだった?」

 このどうだったには味以外の感想も含まれているみたいに聞こえないかな。もちろん私は味だけで聞いているんだけど。ちょっと意識し過ぎているのかな。でもさ、仕方ないじゃない。こんなこと初めてのことなんだし。ともりも同じことを考えるかな?それとも気にしない?そう思ってついともりのことを見ると


「・・・・・・間接・・キス」


 耳元で小さな声で言う。そんなはっきりと言葉にされると一瞬で耳まで赤くなるのが分かるんですけど。

 男子二人には聞こえているのか、いないのか、そのことにはあまり触れないように二人で何やら話していた。


「いいなぁ。みんなが飲んでいるのみたら私も喉が乾いちゃったな」

 ともりの要求に

「なら買い物をスムーズに終えるんだな。休憩はその後だ」

 相澤君はともりに向かって言う。

「うん。瞬君がそういうなら」


 土曜日の秋葉原はこの前来た時よりも人の流れが多い。それは明らかで気のせいではない。改札の目の前の広場では何かのイベントなのかな。そこを目標に徐々に人が集まり始めているのは確かだ。けれどステージはまだ始まっていない。準備で忙しいといったところかな。上下黒い服を着た人達が忙しそうに動いている。世の中にはいろいろな仕事があるし、実際目にするといろんな人がいろんなことを支えているんだって実感できる。私だってきっと将来は何かの仕事をしていると思う。けどまだ自分が何をやりたいのか。その答えは見つかっていないのが正直なところかな。


「おい。行くぞ、あやせ」

 気が付くとみんなは先を歩いている。

「う、うん」

 私は急いでみんなに追い着いた。

 

 日差しはまだまだこれからが本番だと言っているみたいな、でもみんなとこうしている状況がだんだん楽しくなってゆく。それってどうしてなのかな?答えを見つけるには目の前の光景が眩し過ぎる。

 だから今はこの日差しのせいにしよう。 

春よ来い。いろんな想いを乗せて。

読んでいただきありがとうございます。

社会人は年度末で忙しいし、学生の皆さまは春休みで忙しい。

この忙しさは新しい何かに向かっているみたいで嫌いではないです。

いろんなことが起こっている世界で私達は進むしか道はない。

光の先に何が見えるのか、見たいのか。

次回もよろしくお願いします。

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