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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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39/49

うなぎは遠かった

 車は再び高速道路を西に向かって走り出す。

 私も作業を再開。

 束咲ちゃんはメロンパンの入った袋の匂いを嬉しそうに楽しんでいる。これなら退屈しないか。


 道路は空いている方だと思う。快調なドライブといったところだ。だからといって法定速度を越えるような運転はしない。安全運転は徹底されている。

 大和トンネルを抜けた辺りから両側には山の緑が目に優しい。都会の風景とは違ってこれはこれで新鮮で楽しい。それに空気だって違うような気がしてくる。


「あ、今静岡県に入った」

「なかなか良いペースだな」

 先生は窓を少し開けた。少し冷たいけど澄んでいる空気の匂いがする。思いっきり吸い込むと頭の中がリセットされるような気がしてくる。おかげで疲れ始めている頭と目が洗われた。あ〜気持ちいい。


 昼も近くなるとお腹の方も空腹を訴え始める。それにしてもランチまだみたい。私も束咲ちゃんと同じようにメロンパンの匂いでも、と思ってみると


「あ、寝ちゃった?」

 ドア側に頭を傾けて静かな呼吸は一定のリズムがしている。

 よっぽど好きなんだろうな。その手にはカメレオンのぬいぐるみがしっかりと抱きかかえられていた。


「固いよね」

 私は起こさないようにゆっくりと束咲ちゃんを自分の方に引き寄せて寄りかからせる。寝顔、可愛いな。

 今ではカメレオンも見慣れてくると結構愛嬌あるじゃん。


「あと一時間」

 相澤君は時計を見て言う。

「十一時五十五分に着く」

 なんで私の顔を見ているの?あ、もしかしてここでも勝負しようっていうの?

「な、なによ」

 特に答えない。でもなんでそんな期待しているの。もしかして気に入ったの?


 はいはい。分かったよ。どうせ負けるんだろうけどその挑発には受けて立つ。ま、無視する理由が見つからないだけだからね。


「私は・・・そうね、十二時・・・十五分」

 完全に当てずっぽうです、はい。適当も適当。でもそれに満足したのか

「負けた時のこと考えていた方がいいな」

 もう勝つ気でいるイケメンに一言なにか言おうかと思ったけどまた画面に視線を落としたので私も同じように作業に戻った。


 沼津の手前から海が見え始める。

 正直いつ以来だろう海を見るのって。つい興奮して寝ている束咲ちゃんを起こしてしまったくらいだ。

 

 大きい。そして広い。そりゃそうだ。なんたってこの星のほとんどは海で構成されているのだから。それに私達が地上から見える水平線は距離にして大体4キロメートルって聞いたことがある。とするとその先にももっともっと世界が広がっている。

 どんなに頑張っても私が見える景色というのはそこまでだということだ。だから。より先の景色を見たいなら自分から動くしかないんだ。

 その大きな一歩がこれから待っている。

 そう思うとますます自分には自由になるための翼が広がっているような気分になってくるのは仕方のないことだよね。


 束咲ちゃんもずっと窓の外を見ている。私だってそうしていたのはやまやまだけど、今は作業に集中しないと。道中は何の問題もなく車は道路を滑るように快調に進んでゆく。データも順調に蓄積してゆく。そのまま熱海を抜け、静岡を越えてゴール地点である浜松が現実となってくる。


 もう少しで到着するんだ。


 そう思って時間を見るとまだどちらともつかない。でももうどっちでもいいような気がしてくる。

 それよりも今はお弁当のことの方が気になりだす。出汁巻きは作り直したから絶対だけど、あんなミスをしたんだ、きっと他にも何かをやらかしている可能性もある。そう考えると別な意味で落ち着かなくなってくる。あ〜あ、こんなことになるなんて思っていなかったから仕方ないけど、それでも食べてもらえなかったら一体どんな気持ちがするのかな。絶対後でともりと比べられるに決まっている。負けるのは当たり前だけどこの一回で私の生活力レベルが判定されてしまうような気がする。


 天竜川を越えると、なんだろう、同じ静岡県なのに空気が変わったような感じがする。

 ここはまだ静岡県。でもどちらかというと愛知県の方が近いからなのかな。文化圏が変わったとでも言った方が良いのかもしれない。


 車は少しずつ減速して浜松インターチェンジで降りる。

 風には常に潮風が混ざっている。おかげで遠くまで来たという実感を肌で感じる。


「到着だ。時間は・・・十二時五分といったところか」


 私も時間を確認するとちょうど五分になったところだった。ってことはこの勝負はどっちに軍配を上げた方がいいのだろう。どっちもプラスマイナス一〇分だ。

 判定ついての意見につい相澤君の顔を見てしまう。向こうもこっちのことを見ている。もしかして私も意見を求められているのかな?


「引き分けだな」


 確かにそれが公平な判断だと思うけどそれでいいのかな?納得してできるのかな?

「引き分けってありでいいの?」

「判定のしようがない。それに俺はすでに一勝している」

 あっそ。勝者の余裕ってヤツですね。敗者には茨の道ってことでしょ。構うもんか。ただのゲームだし。

「・・・分かった。それでいい」

 ま、ちょっとした暇つぶしだ。罰ゲームなんて大したことなんてないんだから。


 車は広めの場所に一旦停止する。

「到着したということを向こうに連絡だ」

 タブレットで結城君とともりを呼び出すとすぐに繋がって


『お、着いた?』

 真っ先に画面に現れたのは結城君の顔だ。すぐ隣りでともりも顔を出して手を振る。なんだろう、二人共口元が慌てている。あ、そっかお弁当、食べてたんだ。そういう時間だよね。画面から見えている雰囲気で二人仲良く作業をしていたことが伝わってくる。


「うん。無事に到着。そっちはお昼?」

『ああ、ついさっきからな。いや〜逸見の弁当美味いよ』

 でしょうね。結城君の満面の笑み。こっちから聞くまでもない。ともりは何を作って来たのかな、聞いていないから今頃になって気になる。


「今からデータをそっちに送ってもいい?」

 そう言うとすぐにともりが画面から消えて結城君が何か指示しているように見えた。

『ああ。ちょっと待って。どう逸見。ああ。了解。いいよ。送ってくれ』


 こうして見ているとなかなか息の合ってんじゃん二人とも。でもこれは私だけの胸の内に収めておくね。


 今までのデータを相澤君のノートパソコンにも合わせて送る。なかなかのデータ量だと思うけど送信はあっという間に終わってしまう。

 やっぱり今の技術って凄い。こうやって世界はどんどん近くなってゆく。仮想世界が現実世界と融合して人はもっと時間を友好的に使うことができるんだな。


 結城君は同時に幾つかのモニターを見ているみたい。手にはカップがあって一口。何飲んでいるのだろう。あ〜本格的にお腹減ってきたかも。


「代わってくれ」

 言われて相澤君にタブレットを渡すと結城君と何やらやり取りを始める。その内容は専門的過ぎて私にはよく分からなかった。

 往路は終わった。ホッと一息。なんて思っていると袖を引っ張る束咲ちゃん。何かな?

「お腹空いた」

「そうだね。これが終わったら私達もお昼にしようね」


 十五分程で一通りやり取りが終わった。車は再び動き出してまた高速を目指す。


「え?もう帰るんですか?」

「目的は果たした。問題か?」

 今度は東京方面に向かう。トンボ帰りだなんて。少しは観光するものだと思っていた。それにともりとの約束もあるのに。


「・・・あの・・・浜名湖とか行かないんですか?」

 私は駄目元で言ってみる。

「浜名湖はもっと先になる」

 先生はそう言ってアクセルをフカす。車は既に東京に向かう車線に入っていた。

「・・・・そうなんですね・・・ウナギ買えない」

 つい本音をポツリとこぼしてしまう。

「なんだ、藤川はウナギが食いたいのか?」

「まあ・・・そうですね、食べたいのもあるけどお土産かな、と」

「ならもっといいものある」

 先生は自信満々に言う。ウナギより良い物って?一体何だろう。今の私の脳内ライブラリには当てはまる情報がない・・・・こうなったら先生の言葉に期待するしかない。それに冷静に考えるとウナギってさ、高級品だよね。お母さんがくれた一万円なんてあっと言う間に消えちゃうだろうな。無駄遣いするためにくれたわけじゃない・・・これはこれで良しとして後は結果次第だね。


「最初のサービスエリアでお昼にしよう。束咲、頑張れるな」

 今気がついたけど先生が初めて束咲ちゃんに話しかけたのを見たよ。

 束咲ちゃんは大きな声で『うん』と答えていた。


 いよいよお昼。お弁当・・・なんか緊張してきた。

ウナギは私の中で上位に入る一品です。

読んでいただきありがとうございます。

昔から高かったけど今はもっと高い。

おかげで食べる頻度が減ってしまいました。

ウナギと梅は食い合わせなんて言われていますが、

梅は同じように上位に入る一品です。

だから普通に一緒に食べてました。でも元気です。

元気が一番。ということで次に向けて書くぞ。

次回もよろしくお願いします。

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