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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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リクエスト承り中

「おはよう、あやせ。いよいよ明日だね」

「おはよう、ともり。あ〜緊張する」


 登校中の風景はいつもと一緒だけど会話はいつもと違ってどこか気持ちが落ち着かない。

 その原因は分かっているけどね。

 

 昨夜。

 お風呂から戻って恐る恐るスマホを見ると着信があった。さっぱりして気持ちを切り替えたはずなのに正直心臓が口から飛び出るんじゃないかって思うほど驚いたのは言うまでもない。

 しかも私がお風呂に向かった時間とほぼ一緒。タイミングがいいのか悪いのか。それともお風呂に行くことを知っててこの時間なのか。そんなことないと思いたいけれど、あの恐ろしいまでの感の良さというか、エスパー的感覚というか。

 もしかして見られている?なんて思って部屋の中を見回したくらいだ。


 しばらくは画面を見ながら唸っていた。


 どうしたものか。掛け直す?それとも気が付かなかったフリをする?寝ていたとでも言えば言い訳の理由にはなるかも。けれど納得するだろうか。エスパーの目は誤魔化されないかもしれない。


 またしても気持ちはフリダシに戻った気分。できればもう一度向こうから電話してくれたらいいのに。


 でもその兆候は三十分経った今でも訪れる様子はない。


 あ。

 掛け直してきたってことは気になっている、ということだよね。向こうも同じ気持ちで電話を待っているとしたら?そう思うと気の毒になってくる。

 それに無視したらしたで明日顔を合わせる方が気持ちが重くなる。


 『早くした方がいい』先輩の言葉が蘇る。


 さすがです。その通りですね。先輩からもらった勇気を無駄にするわけにはいかない。画面をタッチするだけなんだ。


 私は画面にそっと指を置いた。


「・・・も、もしもし」

「・・・・・・」

 出てはいるけど返事がない。私の声、聞こえているよね。

「・・・あの、藤川です」

「分かっている。何の用だ」

 何よ。分かってんならもっと早く言ってよ。でもどうやって切り出そう。

「・・・あの・・今、時間は平気?」

「ああ。だが早くしてくれ」


 一言ごとに訪れる沈黙がこんなに長いなんて。早くしろっていうのはこっちも同じ気持ちだからそうしたいのに頭の中はルーレットのようにグルグルしていて言葉が全然思いつかない。

 会話の糸口が掴めないよ。それに微かに『まだなのか』みたいな呼吸が伝わってくる。

 う〜どうしよう。

 私だってさっさと終わらせたい。用があるのは私の方なんだから、そうだよ、頑張れあやせ。私は頑張れる子のはず。

 心を決めて第一声を出そうとした時


「卵焼きは出汁巻きで頼む」

「?・・は、はい?今、なんて?」

「なんだ。弁当の好みの探りじゃないのか?」

 はあ?好みなんていちいち聞くか。出されたモノを黙って食べるのが普通じゃないの?

「えっと、ごめん、そんなんじゃなくて」

「だったらなんだ?」

 まあいい。ちょっとエンジンかかるの遅くなったけどこれなら言える。

「えっと、今日のこと。私がともりを使って遊んでたって。私はそんなつもりはなかったけど、相澤君に言われてそういう面もあったんじゃないかって。ちゃんとともりに謝ったし、許してもらえた。それに土曜日だって・・・ってなんで急に好みなの?」

「逸見はずいぶん張り切っているけどな」

「なにそれ?ともり一言も・・・あ、もしかして部活のグループ・・・」

「そうだ。分かっているなら驚くこともないだろう」

 そっか。そう言えば帰り際にともり何か言ってたような。どんなことが書いてあるのだろう。後で確かめないと。ともり・・・暴走してなきゃいいけど。


「言いたいことはそれだけか?」

 そう言われて本来の目的を見失っていた。でも緊張は完全に解れている。今なら素直に言える。いや素直に言うんだ。


「えっと。そのことじゃなくて、話を元に戻すようだけど、一言謝りたかった。それだけ。今日は不快な思いをさせてごめんなさい。確かに相澤君のいうように私の行動は浅はかだったかもしれない。けどこれだけはもう一回言わせて。私は決して親友のともりで遊ぶことはしない。もしそう見えたとしても私は親友に対してそんなこと絶対にしない。それだけ分かって欲しくて。だから電話した」

 スマホの向こう側には再び沈黙が訪れている。早くなんか言って欲しい。けれどどんな言葉が返ってくるか予想ができない。

 言いたいことは言った。それだけで心が軽くなったような気がする。けどホントはまだ誰にも許されていないからただの自己満足なのかもしれない。でも今の自分の行動には後悔はない。そのことだけは真実としてちゃんと心にある。


「俺の言ったことが気に触ったなら謝る。藤川に対して言葉が良くなかった」

「・・・え?」

「藤川と逸見が親友だとは知らなかった。親友ならそんなことしないよな。言い過ぎたと思う。すまなかった」

「なんで相澤君があやまるの?」

「聞いていなかったのか?」

「え、聞いてたけど」

 深い溜め息のような音が聞こえてくる。

「なら話は終わりだ」

 そう言うと一方的に電話が切れた。


 なんなのよ。まだ終わってないよ、まだ。

 でもちょっとだけ面を喰らった。こんな展開になるなんて思わなかった。言葉の口調からして怒っているとかそんな感じはしなかった。

 けど・・・・ま、それでいいならこれでこの話は終わり。きっとそれでいいんだ。お互い言うべき言葉を言ったような気がする。いや、しよう。


 頭を切り替えて今度はともりの方をチェックすると


「な!」

 思わず声に出てしまう程驚いた。なんて大胆なの。

 ともり。これってもしかして私の対しての仕返しなのか報復なのか。どっちでも取れるような内容だし、恥ずかしくて顔が熱くなった。


『今度の土曜日。いよいよ大掛かりな実験が始まります』って感じで始まって


『私、逸見と藤川は今回のシステムを造りあげてくれたマネージャーの相澤君。忙しいのにこの日のために時間を割いてくれる先生。それともう一人。私達のサポートを気持ちよく受け入れてくれた新たなマネージャーの結城君に対して私達が今できる最大のことをしたいと二人で相談した結果。愛情と感謝をたっぷりと詰め込んだ手作りのお弁当を用意することにしました。美味く作れるかどうかは分かんないけど、一応リクエスト募集中です。期限は金曜の昼まで。買い物の関係もあるしね。それでは皆さま。お楽しみに。あと苦手なモノも言ってね』


 ふぅ〜。


 私は長い溜息をついてもう一度同じ文章を読んだ。こんなこと書いてたんだ。だからあんなこと言ってきたんだ。先生と結城君は返信している。部長もなんか書いてあったけど無視して肝心なところだけを確認する。

「え〜と、先生は・・梅のおにぎりで、結城君は・・椎茸が苦手・・」

 まあ、大したこと書いてなくてよかった。これならまだ私でも対応可能だ。これ以上何もないなら何も問題はない。

 けどさ。こういうことするならするで一言欲しかった。しかしあらためて読んでみると、私への何かじゃなくてともりの性格なら当然の行動だよね、これって。


「明日・・相談だね、これは」

 期待なのか不安なのか分からないドキドキのおかげでなかなか寝付くことができなかった。

1月も終わりを迎えようとしている今日この頃。

読んでいただきありがとうございます。

少しずつですが読んでくださる方が増えて嬉しい限りです。

ランキングにもチラホラあったりなかったり。

私なりにこれからも物語を紡いでいきます。

次回もよろしくお願いいたします。

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