私の新しい一歩
四月
新しい制服を身に纏って校門を目指し颯爽と桜満開並木を歩く。
まだ慣れない革靴だって気にならないくらい気分は高揚している。周りを見ると同じように希望に満ちた瞳を輝かせた新入生たちで溢れていた。
私こと“藤川あやせ”は本日から晴れて高校生になったのだ。
憧れの高校に憧れの制服。今まで羨望の眼差しでしかなかった憧れの女子高生についになったのだ。
そこまでは計画通りだし完璧。でも髪型だけはすぐには変えられないよね。三学期から伸ばしていたけどやっと肩を過ぎたくらい。軽く天パだから毛先がどうしてもハネる。ま、その内何とかなるでしょ。
これからの三年間。長いようで短い高校生活をいかに充実させるか。
『私の目標』
それがどんな形で実現するかはまだ考え中だ。後悔のない三年間にしたい。今はとりあえずそこまでだ。
何もかも新鮮に映る世界。一歩一歩が新しい扉に向かっているようで踏みしめる度に心がキュンとしてくる。友達はたくさんできるかな?それとも高校生なんだから、彼氏?なんてね。
とにかく頑張ろう。自然と鼻息が荒くなる。
色とりどりの季節の花で彩られた立て看板の掛かった校門を抜けて真っ先に校舎の入口に貼り出しているクラス表を目指す。
一学年は全部で八クラスある。砂糖に群がるアリのように人が多くて背の低い私はなかなか見ることができない。それでも一生懸命爪先立ちになって自分の名前を探した。とりあえず希望したクラスを見ると
「・・・あ、あった。六組。入れたんだ」
一年六組。ここが一年間お世話になるクラスだ。大丈夫だろうと思っていても実際に目で確かめると実感が湧く。
まずは第一段階クリア。幸先の良いスタートだ。春という季節には希望という光しかないみたい。ほんわかした気持ちのまま早速教室に向かおうとしているといきなり後ろから誰かがぶつかってきて思わずよろける。ちょっと何?気分が壊れるって。
「あ。ご、ごめんなさい」
今度は私がすぐ前を歩いている女の子にぶつかってしまう。
私よりほんのちょっとだけ背が高くて髪が腰まである。真っ黒でツヤツヤした髪からはとてもいい匂いがした。振り返って私を見るといきなり
「うわ、私より背が低い?」
そう言って私のことを大きな真っ黒な瞳で見つめる。肌も白くて日本人形みたい。
「?・・・えっと」
「ああ、ぶつかったのは平気。それより名前は?何組?」
彼女の好奇心は終わらない。頭からつま先までじっくり見られているような気がする。
「えっと、藤川あやせ。で、六組」
答えると好奇の視線が一気に柔らかくなってニッコリと笑って
「じゃあ私と同じだ。私、逸見ともり、一年間よろしくね」
「ああ、うん。こっちこそよろしく逸見さん」
あらためて面と向かうと指の第一関節くらいしか身長差はないように思える。中学の時は一番小さかったけど、どうやらここでもそうなりそう。だからって別になんとも思わないけど。
「初対面だから仕方ないけど、私のことは“ともり”って呼んでね。中学からずっとそうだったから。あなたはなんて呼んだらいい?藤川さん」
「なら私も名前で。あやせでいい」
「オーケー。ならあやせ、これから教室でしょ。一緒に行こうよ」
なんだかいきなり過ぎるけど、まあいっか。
教室に入ると机にそれぞれの名前の書いてある紙が置いてある。私は自分の机を探す。当然入口からアイウエオ順なのでハ行の私は半分より後半を目指す。そして
「あった」
窓際から数えて二列目。日当りがいい。それに入ってくる春の風が心地良い。
「あ、私、あやせの後ろだ。ま、そうなる確率高いよね。とりあえず席替えまでだけど」
「そうだね。とりあえず座ろっか」
ほとんどのクラスメートが席についている。私はクラス全体を見回してから同じ中学からの同級生が一人もいないのを確認。ま、この学校を受けたのって確か一桁くらいだったよね。一応、学区では結構な進学校で有名だけどね。それにこのクラスはちょっと特別。受験の成績が上位だった者が集められている習熟クラスなのだ。勉強には自信があったから当然といえば当然の結果。これからも成績キープ。それも目標の一つ。
「ねえ、あやせ」
後ろからともりの声がする。
「何?」
「あそこ」
廊下側の席を指差す。その先には男子がいて
「あれって桜中の相澤君でしょ」
その名前聞いたことがある。
「あ〜何か聞いたことある。確かイケメンで秀才って」
「そうそう。都内で一番になったこともあるって」
「ウチの学校でも噂になってた。実際見に行った子もいたよ」
「へ〜。やっぱ有名人だよね。確かどっかの芸能事務所がスカウトに来たって話も聞いたことあるよ。結局興味ないって断ったって。でもさ、絶対人気出るよね」
ともりの瞳にはハートマークが見えるようだ。
「もしかしてともりも好きなの?」
「まあね。実際会ったのは今が初めて。SSNで写真を見たことがあるくらい。でもそれ、隠し撮りみたいでイマイチはっきり映ってなかたんだよね」
「で、実際見てみてどうなの?」
「もう想像より全然イケてる。しかも同じクラス。勉強頑張った甲斐があった」
「なにそれ。相澤君に会うためだけにこの高校受けたの?」
「そう。だから頑張れた。学校が同じならクラスが違ってもいつか会えると思ってた。けどまさか同じクラスなんて。これってもう運命だよね」
そういうことも学校選びの基準になるんだね。なんだかともりのことが急に可愛く見える。
「でも頑張ったって相当頑張ったってことでしょ。このクラスって上位三十五人しか入れないって合格通知と一緒に書類が入ってたよね。試しに希望表に○してみたら入れた。ということは私もともりも辞退した人もいるとしても成績相当良かったってことでしょ」
「ほんと信じられない。自己採点だと無理かなって思ったんだ」
「そうなんだ。けどさ、何かすごいよね。恋の力ってやつ?」
「もう、大きな声で言わないでよ」
「声が大きいのはともりの方だよ」
そう言うと急に顔を真っ赤にして
「ね、ねえ、もしかして相澤君に聞かれちゃったかな?」
今度は小声になって言う。
「さあ、どうだろ。でもさ、ともりって青春してるよね」
「そ、そうかな。・・・なんか私の話ばっかりだよね。ところであやせは何でこの学校?」
「急に話変えるの?ま、もともと中学はずっと一番だったからかな。でもこの学校選んだのそれだけじゃない」
「ふ〜ん。それって何?聞いてもいい?」
「とある部活に興味があったから」
「へ〜部活。それって聞いてもいい?」
それは・・と答えようとした時まだ名前も知らない担任が入って来て、これから入学式が始まるから体育館に移動するように、とだけ言って出て行ってしまう。同時にクラスのみんな席から立ち上がって移動を始める。当然私達もみんなの後を追う。
「じゃ、後で聞かせてよ」
「うん」
新しい一歩。それは本当に始まったばかりだ。希望と期待。今の私の心はその言葉しかない。恋愛もいいけど今はそれに関してはともりのことを見ているだけで楽しいから任せるとして、私の本来の目的、そうこの学校にしかない部活。
『女子ヒッチハイカー部』
一刻も早くその扉を叩きたい。胸が躍る。それに会いたい先輩がいる。先輩と一緒に日本中、いや世界中を旅してみたい。これがこの学校を選んだ一番の理由なのだから。
読んでいただきありがとうございます。
まだ投稿のペースや文字数も慣れていないため安定するのは時間が掛かるかと。
頑張ってアップしてゆくので、よろしくお願いします。




