お昼休み
お昼になったので私はお弁当と椅子を持ってともりの机に行く。
「お腹減った」
ともりはすでにお弁当を広げていておにぎりを一口頬張っている。
私も向かい側に腰を降ろしてお弁当を広げる。
「ねえ、今日の卵焼きもともりが焼いたの?」
「そうだよ。今は卵焼きだけ特訓。納得できたら次にステップアップ。食べてみる?」
「そんなつもりで言ったんじゃないけど」
口ではそう言ってみたものの箸は既に一つ摘んでいる。
「ありがとう。代わりにこれあげる」
前と同じタコさんウインナーだ。卵焼きを食べる。味はそんなに変わらないけど見た目がキレイになっている。焦げもほとんどないキレイな黄色をしている。
「味は好みだからね。あとさ、今日は自分でもびっくりするくらいキレイに焼けたんだ」
「ほんと美味しい。卵焼きの次は何を作るつもりなの?」
笑顔のともりはほんと可愛いな。
「ん〜まだ決めてない。いろいろ候補はあるけど。そうだ、あやせは何作ったらいいと思う?」
「えっと、そうだね、卵焼きの次と来たら、やっぱり定番のハンバーグ、とか?」
そのことについて考えている。ま、ハンバーグは私の好きなものだから言ってみただけだけどさ。
「ま、候補の一つだね。考えとく」
それから私達は授業のこととか話している内に食べ終わってお弁当箱を片付けていると
「あ、いい匂い」
ともりの言葉と一緒に風に乗ってコーヒーの香りがしてくる。誰かとは敢えて言うまい。そこで約束を思い出すのと同時に
「そうそう。私も今日持ってきたんだ」
机の上に置いておいたポットの蓋を廻して開ける。やっぱり同じコーヒーの匂いが教室に立ち込める。さすがにこれだけコーヒーの匂いをさせているとクラス中から質問攻めにあう。
『コーヒーが流行っているのか』とか『豆から煎れたの』とか『実は自分もコーヒーが好きだ』なんて声が聞こえてくる。
主に私が話し掛けられるのだけど女子の何人かは相澤君に質問を向けている。まあ結果は言うまでもない。態度は相変わらず無愛想といいましょうか、もう少し関わってあげてもいいんじゃないの。素っ気ない態度だったがイケメンと話す機会を得られた方が彼女達にとっては大きい成果らしい。みんな顔がともりと同じように緩んでいる。けれど肝心のともりは面白くない顔をしている。まあ、確かにしょうがないよね。けどそれだけライバルも多いってことだよね。
「ねえ、あやせ」
その視線は今度は私に向けられている。はい、一体なんでしょう?
「どうして同じ匂いなの?」
なんだか問いつめられているみたい。ああ、そっか。
「そっか。相澤君も同じモノ持っているんだ」
って何、余計に疑わしそうな顔をするわけ?今、簡単に説明するからね。
「あのね、これってアイアイ先輩のお店の商品だよ。昨日貰ったんだ。だからきっと相澤君も同じモノ持っているって思った。なんたってイトコだし」
「ふ〜ん。あやせ昨日は秋葉原に行ってたんじゃないの?」
「そうだよ。けど最終的にアンプレアントにいた。マスターに晩ご飯奢ってもらったんだ」
「ええ!いいなあ。もしかして相澤君も一緒?」
「うん、まあ。部長とアイアイ先輩もいたし」
「なんであやせだけそんないい思いをしているの?私はずっと模試の勉強しながらあやせの報告待っていたのに」
ああ、これはちゃんと説明した方がいいよね、絶対。
「そうだ、約束のコーヒー、甘いヤツ買いに行かない?」
私は立ち上がってともりのことを見る。けれど席を立とうとはしない。
「これが飲みたい」
私のポットを指差しながら言う。けれど
「え〜と、これブラックだよ。砂糖もミルクも入っていないよ」
「あやせがブラック飲むなら私もブラック飲む」
「えっと。本気?」
黙ったまま頷いて答えるともり。ほんとにいいのかな?
ま、そういうことなら缶コーヒー買わなくて済むから私的にはいいんだけど・・・
結局ともりの希望通りにしたのはいいが、私が一杯飲む間にともりはカップの半分も飲めていなかった。
「ほら、無理するから。今からでも甘いの買いに行こ」
私が財布を出すとカップを手に持って深呼吸。イッキに残りを飲み干した。その後にはお約束の表情が待っていた。
「・・・いつかきっと・・・・・・美味しいって思えるようになる」
ホント、負けず嫌いだね。感心しちゃうところだよ。
「・・・・・それじゃ聞こうかな」
「・・・え、ああ。そうだね」
私はともり以上に苦笑いをして話し始めた。
秋葉原で辿った道筋をそのままざっくりと話す。バイクのことは人目があるから省いたけど。
話している間、ともりはずっと目を輝かせて聞いていた。随所に『いいなぁ』とか『私も行ってみたい』とか、一番多かったのは『羨ましい』という言葉を会話に挟んでいた。
私は昨日から連続だったせいか、正直疲れていたけど、放課後になった途端、部活だと思うと元気が出てきた。そう。これから部活が始まる。チャイムと同時に席を立つとともりもすぐにこっちに来て
「行こう」
言葉は私に向けられているみたいだけど顔は相澤君の方を見ている。その視線に気が付いたのか黙ったまま立ち上がるとそのまま行こうとする。その後ろ姿を見て
「あ、相澤君。ちょっと待って」
そのままの姿勢で立ち止まる。私はカバンから封筒を出して
「これ。昨日のおつり。一応、領収書貰っといたけど」
振り向いて受け取ると中身を確認する。
「上出来だ」
そのまま自分のカバンに突っ込んで
「部室に行くんだろ」
一緒に行こうと言うのかと思っていたら、そのまま歩き出す。ま、そうすると思っていたよ。君の思考パターンは昨日ずいぶん勉強させてもらったからね。
「それじゃ私達も行こっか」
また不思議そうな顔をしているともりに
「後で説明してあげるから」
私達はイケメンの少し後に続く。
しかし、逐一説明って・・・こんなことになるなら次は私は絶対辞退してともりに譲る。そんなことを考えながら歩いた。
昨日のことを思い返すとともりの言う通り私は結構良い体験してたんだろうな。もし反対の立場だとしたら・・・私だって羨ましいって正直に思うだろう。
「ちょっとなにしてんの?」
気がついたらともりの頭を撫でていた。
「あ、ごめん。無意識だった」
「無意識に私に懺悔しているってこと?」
そうなのかな?そうかもしれないのかな。
「今度はともりに任せるから」
「それは試験結果が出てから。決めた。私絶対あやせに勝つ」
「私だって負けない」
そんなたわいもない会話をしていたら部室に到着した。
「今更だけど、秋葉原お疲れ。あやせ疲れてない?」
「ともり・・・まあ、ちょっとは」
急な気遣いに胸が温かくなる。相澤君とは友達。ともりとは親友。今はどっちの関係も同じように心地良く感じる。
さあ、じゃあ見てもらおうかな、昨日私達が買ってきた戦利品を。
「見てビックリしないでよ。これで本格的に始まるんだよ」
私は自信たっぷりに言って部室の扉を開けた。
師走を直走る私です。
読んでいただきありがとうございます。
走っていますがちょっとだけペースを落としてのんびり書いております。
退屈されていたらごめんなさい。
今月は合間が少なくて・・・(言い訳)
でも途切れることないようアップはしていきます。
次ものんびり読んで下さい。
よろしくお願いします。




