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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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17/35

付き添いのご褒美で忘れてた

 月曜日。そして学校。

 カーテンを開けると昨日と同じように晴れている。

 窓を開けるとヒンヤリとした今の季節の空気が入ってくる。昨日みたいに暑くはならなさそう。

 これだと昨日だけが特別な一日だったのかもしれない。確かにある意味そんな一日だったんだけどさ。


 机の上には貰ったコーヒー豆が置いてある。

 昨日部室で待っていたのは部長とアイアイ先輩だった。みんなで買ってきたモノをとりあえず部室に運んだ。そしてセッティングは明日ってことでやっと私の役目は終了を迎えた。

 その後は当然の流れで『アンプレアント』に行ってカレーをごちそうになる。なかなか本格的なカレーだった。スパイスの香りがたくさんして正直私には辛かった。一緒に出てきたコーラはマスター手作りの『クラフトコーラ』だ。

 私の知っている市販のコーラとは全然違って、カレーと一緒でいくつものスパイスが香る。シナモンにコーラナッツ(初めて聞いた)他にもいろいろ。しっかりとコーラの味がして美味しかった。


「簡単だから今度作り方教えてあげるよ」


 甘過ぎるから普段は飲まないけどこれなら飲めるかな。そして最後にはお決まりのコーヒーを出してくれた。やっぱりこれが無いとここに来た理由がないよね。一口飲んでやっと今日が無事終わったと実感する。


「お疲れさん。瞬と一緒だと何かと疲れたんじゃない?」

 アイアイ先輩が隣りに来て聞いてきた。私は今日のことを振り返って

「・・・そうですね。まあ、いろいろと。一番驚いたのは相澤君のお姉さんがバイトしているお店に行ったことです」

「そっか。亜矢香と似てるでしょ、私」

「はい。ビックリしました。アイアイ先輩に似ているし相澤君にも似ているって思いました」

 その後も少し色々話した。夜の時間はあっという間に過ぎて、20時を越える頃帰ることになった。


 イケメンと二人で駅まで歩くのかな?と思っていたら店の入口を出て相澤君から一万円を渡された。

「もう遅い。危ないからタクシーで帰れ、だそうだ。亜衣花が今呼んでいる」

「え?相澤君は?」

 ポケットから鍵を出す。それはなに?って聞いた方がいいのかな?でも何も聞かないのも変だよね。だから聞いてみると

「原付」

「え?免許持ってんだ」

「当たり前のことを聞いてどうする?」

 そ、そうだよね。ホント、今日は意外なことが多過ぎる。相澤君のこと少し分かった気がしていたけど、それはそういう気がしただけで本当はますます分からなくなった、っていうのが本音。

「でもさ、バイクの方が危なくない?タクシーの方が・・・・」

 私の言葉を最後まで聞かずにヘルメットを被る。そしてシートに跨がるとエンジンを始動させる。その音を聞いてアイアイ先輩と部長がお店から出てくる。

「瞬、気をつけろよ」

 なんて声をかけるアイアイ先輩。なんだかこれが当たり前みたいに。

「交通事故だけはやってくれるなよ」

 部長もどうやら知っているみたい。結局何も知らないのは私だけか。

 返事をしたのかしないのか分からないままイケメンはアクセルをフカすと行ってしまう。遠くなるエンジンの音。目にはテールランプの残像だけが残る。

 そのあとは私にも気をつけるようにとだけ言ってお開きになった。ちゃんと言われた通りタクシーに乗って帰った。なんだか今日は最後まで忠犬みたいだった、とタクシーの中で振り返っていた。


         ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


 電車から降りて真っ白なセーラー服が集団となって学校を目指していると

「おはよう。あやせ」

 後ろから肩に手を置かれる。

「わ!びっくりした・・・ともり、おはよう。同じ電車だったんだ」

「違うよ。あやせが来るのを待ってたんだよ」

「なんで?」

「ほら。忘れてる」

 ともりはホッペを膨らませて言う。忘れてるって?それについて考えを巡らす。えっと、なんだっけ?そんな視線をともりに送りながら言葉の意味を考えた。

「あ!・・・・・そっか・・・・ごめん」

「ほら、やっぱり。私、昨夜ずっと待ってたのに。勉強しながら待ってた。私は約束通り勉強頑張ったのに」

 ますますホッペを膨らませるともり。

 あ〜、すっかり抜け落ちてた。約束破ったんだもんね。そりゃ言われても仕方ないか。


「ごめん。いろいろあって疲れちゃって。お昼一緒に食べながらそこで話すよ。それでどう?」

 私の目をじっと見つめて

「じゃあコーヒー。うんと甘いヤツ。私、結局朝まで勉強してたから」

「そ、そんなに?こりゃ今度の模試、完全に負けちゃうかもしれないね。でもそれでともりが許してくれるならいいよ。缶コーヒーになるけど」

 ひ〜、昨日の秋葉原までの交通費、自腹だった。高校生にとって数百円でも痛い出費だ。けどそれも仕方ない。友情って結構大変なんだね。

「それでいいよ。じゃあ行こっか」

 ニッコリして私の腕を取る。とりあえず機嫌は治ったみたい。よかったよかった。


 教室に入るとすでに相澤君は来ていて私達の姿を見つけると

「藤川、話がある」

 ちょっと、いきなり何言ってんの?朝はまず会ったら『おはよう』のあいさつでしょ。そんな会話の始まり自体ありえない。それに妙に意味深だから。ほら、気付いてよ私に向けられている視線を。

「おはよう相澤君。朝、会ったらまずは挨拶」

 昨日のことを思い出して言ってみた。友達だから。そう私達は昨日友達になった。男とか女とか関係なく。果たして昨日のことを憶えているのだろうか。

「・・・・そうだな。唐突過ぎた。おはよう藤川。それに逸見、おはよう」

 私達のやり取りに目をむいていたともりだったがイケメンに面と向かって挨拶をされた時点で思考が吹っ飛んだのか、顔を真っ赤にして小さな声で『お、おはよう』と返す。

「それでさっきの件だが話を進めてもいいか?」

「うん。話しって?」

 言葉ではなく手で廊下を指す。予鈴が鳴る。

「今?」

 私に返事をすることなく教室を後にする。ともりも一緒に行こうとすると

「悪い。藤川だけに用がある。だから二人だけにしてくれ」

 ともりはさっきまでの幸せの顔が吹き飛んで今度は私に何か言いたそうな視線を向ける。またこの展開だ。このことについてもちゃんと言いたいが、どう切り出したらいいのか。ともりはあんたのこと好きだから誤解されるような言動は慎むように、なんて言ったところで余計なお節介だよね。ここはすぐ行動に移った方が良さそうだ。

「ごめん。ちょっと行ってくるね」

 ともりはちょっと不貞腐れていたが何も言わずに自分の席に向かう。これは後で昨日のことと合わせて弁明しよう。そうだ、そうしよう。

 廊下にはもう生徒はほとんどいない。当たり前。そろそろ授業始まるもんね。そんなことはあまり気にしていないイケメンはむしろ好都合らしく

「今なら人がいない。話っていうのは昨日のことだ」

「・・・昨日?」

「ああ。俺がバイクを乗っていることは学校には内緒にしておいてくれ」

「え?なんで?」

 理由を聞くのかよ、って感じの溜息をついて

「学校の許可無く取ったからだ。ま、先生は知っているし、昨日の面子も。その内ちゃんと申請に行くがそれまでは内緒だ。停学になりかねないからな」

「そういうこと。でもさ、ともりには話してもいい?」

「逸見に?何故だ?」

 何故だ。と言われましても。ここはほら、え〜と、

「同じ部だし。また昨日のようなことがあるかもしれないでしょ」

「それならその時知ればいい」

「じゃなくて」

 確かにそうかもしれないけど、今私が欲しいのはこれ以上あんたとのことを説明するのが面倒なのよ。ってそれを言っても相澤君には関係ないことか。

 返答に困っている私を見て

「・・・仕方ない。藤川がどうしてもっていうなら話しても構わない。けれどいいふらすようなことだけはしないようにすると約束できるか?」

 なんだかずいぶん物分かりがいいような気もするがせっかくそう言ってくれたんだ。だから私もちゃんと約束すると答える。そうしている内に本鈴が鳴った。

「チャイムだ。先生が来ないうちに戻ろ」

「ああ。約束だ」

「うん。分かってる。約束」


 昨日の今日なのに相澤君とはずいぶん距離感が近くなったような気がするのは気のせいなのかな。

 それは私達が友達になったことと関係しているのだろうか?

 ともりとはまだ仮親友だっていうのに・・・

 私達はこれから向かってゆく場所は同じなのに、同じ関係性なのに・・・違いが分からない。

 それでも今は昨日とは違う一歩進んだことの方が大きい。

 人ってこうやって近づいたり、距離を取ったりして関係を作ってゆくんだ。

 

 自分が少し前進していることが嬉しく思う。

 さあ、今日はどんな一日になるのかな。躍る背中で教室に戻っていった。

師走になり皆さま年末に向け、いや来年に向け走っているところですね。

お忙しい中、読んでいただきありがとうございます。

私も走っているのですが物語は相変わらずのんびり進めさせてもらっています。

懲りずに読んでもらったら嬉しいです。

次回もよろしくお願いします。

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