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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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16/36

少しは通じ合えたのかな?

「お気に召しましたか、ご主人様」

「ごちそうさまです。すごく美味しかったです」

 そう言ってきたのはもちろんお姉さんだ。私は笑顔で答えると今度は相澤君の方に向いて

「じゃあこれ。領収書とカード」

 受け取って確認する。けれど

「宛名が違う」

「え?そう?先生の名前で良かったんじゃないの?」

「今日は先生個人のお使いじゃない。部活のお使いだ」

 相澤君は宛名をちゃんと『女子ヒッチハイカー部』に訂正してもらった。お姉さんは私のことを見て

「もしかしてあなたも?」

 確認するみたいに聞いてくる。あ、私まだ自分の名前言ってなかった。

「あ、はいそうです。自己紹介まだでした。相澤君と同じクラスの藤川あやせって言います」

「へ〜、瞬を無理矢理部活に入れたってことは聞いてたけど、他にも新入部員がいたんだ」

「私ともう一人。全部で三人です。みんな同じクラスなんです」

「へ〜みんな六組だ。亜衣花もそうだったし、私も六組出身」

 それを聞いてお姉さんとアイアイ先輩に対しての距離感がイッキに縮んだように感じる。

「もしかしてお姉さんもヒッチハイカー部だったんですか?」

 ついそんな風に聞いてみたけど

「あ〜、そこは違うかな。まあ、ちょっとは興味があったけどね。私は天文部。星が好きなの。だから大学もそっちの方」

「なんかそれはそれですごいです」

 ニッコリと笑って答えてくれる。やっと慣れてきてもっと話していたい。と思っていたのに

「おい。何時まで喋っている。本来の目的を忘れたわけじゃないだろう」

 そうでした。確かにそうでした。けど、もうちょっとくらいゆっくりしても。

 なんて思っていると相澤君は立ち上がって

「相手を待たせている。遅れたら迷惑をかけるからな」

 当たり前のことを当たり前のように言う。急にモヤモヤ感が湧いてくる。

 その件に関して私に対しても同じことを思っていたのだろうか。相澤君を見ていても謝罪の言葉や理由なんてとても期待できそうにない。今までの楽しい気持ちは消えていた。


 せめて『悪かった』の一言でもあったらそれで許してあげるのに。

 そんなこと露とも思ってもいないだろうな。だから余計にイラっとしてくるのは当然。

 けど私がそんなこと言っても分かってもらえないかもしれないな。

 仕方ない。こういう場合は私の折れた方がいいのかな。


「・・・はいはい。『遅れたら』・・『悪いもんね』・・『待たせたら』・・『悪いもんね』」

 私、なんでこんな調子で話しているの?

「・・・待ち合わせに遅れたこと言っているのか?」

 さすが学年一位は察しの良いことで。私の気持ち、分かってもらえるかな?

「それはここでのお茶でチャラだ。終わったことを何時までも引きずっていると先に進めない」


 あんたのその無神経な言葉。どうゆう思考回路をしているのよ。


「ちょっと、あんたもしかして女の子を待たせたわけ?」

 私達の会話を聞いていたお姉さんが私と相澤君の間に入ってきた。一体どんな会話が展開するのかな?


「遅れる可能性があると前もって言っておいた」

「で、実際遅れた」

「そうだが」

「で?あんたは藤川さんに何か言ったの?」

「特にそのことに関して言うべきことはない」

 お姉さんは大きく溜息をついて

「瞬、あんたねえ、それは駄目よ。ねえ、藤川さん、っていうかあやせちゃんでもいい?」

 お姉さんは私の返事を待たずに頭を自分の胸に引き寄せる。良い匂いはもちろんだが、服の上からでも十分分かる柔らかさに顔が赤くなる。

「こんな弟でごめんね。代わりに私が慰めてあげる」

 ひとしきり頭を撫でた後解放される。


「あんたも一言なんか言ったらどうなの?いくら遅れると宣言していたとしても実際遅れたんだからね。男が女の子を、こんな小さくて可愛い女の子を待たすなんて良くないことよ」

 言われたことについて何か思考している。あなたのその頭脳ならあっという間に答えが出るんじゃないのかな。

 相澤君はどこから話そうか考えた末、私の正面に立つと

「女って細かくて面倒だな。(小声だけど聞こえてるからね)・・・・・・・藤川、遅れてすまない」

 なんとなく納得していないみたいだけど結論は出ていたらしい。


「素直なのは良いけど一言多いのよ。あやせちゃん、これで瞬のこと許してくれる?」

 なんだ。言えばちゃんと分かってくれるんだ。ちょっと呆気に取られる。けどそれを知ることができただけでも今日は付き添いの収穫があったかな。

「そうですね、はい。ちゃんと一言あったんで私は大丈夫です。それに待ったって言っても15分くらいだったし」

「時間の問題じゃないの。モラルの問題なの。まあ、これで今回はこのことはおしまい。瞬がまた何かやったら報告してね」

 お姉さんは名詞を渡してくれた。見ると手書きでスマホの番号とメアドが書いてあった。

「解決したなら今度こそ行くぞ」

「う、うん。あ、あの、いろいろごちそうさまでした」

 私の返事を待たずに歩き出すイケメンの後を追うように着いてゆく。

「また来てね。今度は部活のメンバーみんなで」

 帰り際にそう声をかけてくれた。私は『はい』とだけ返事を返してお店を後にした。


 外に出ると暑さはさらに増しているように思う。まだ四月だよ。今からこんなんじゃ本格的な夏になったらどうなっちゃうっていうの?


「どうやら俺は藤川のことをかなり不快にさせていたらしい」

 ふいにそんなことを言う。

「それはもう終わったことだけど、まあ、正直に言うなら会った時にそう言ってくれた方がよかったかな。そしたら私だって素直に受け止めていた。あえて言うけどさ、ずっとあの場所から動けずに待っていたんだよ。暑くて倒れるかと思った。せっかく連絡先教えてもらったけど、あの時はなんとなくできなかった」

 別にこっちに振り向くわけでもなく

「・・・そうか・・・人っていうのは自分の思い通りにはならないものだな。分かっていたとしても。コンピュータは違う。こっちが完璧なプログラムを組んでやれば答えてくれるからな」

 はて、結局何が言いたいの?私とコンピュータを天秤にかけたって意味ないと思うけど

「今度からはもう少し人の気持ちを考えた方が良さそうだ。もし俺が意味ある行動を取ってないと思ったら遠慮なく言ってくれ。同じクラスで隣りだしな」

 振り返って私を見つめる真剣な眼差しに思わず目を奪われる。ホント、イケメンだと感心してしまう。

 これが私だからいいものの、ともりだったら絶対失神しているレベルだよね。

 自分が他人からどう見られているかなんて思ったことあるのかな?いや、あまり気にしたことないような気がする。もう少し自覚した方がいい。

 それを伝えるかどうか悩んでいると


「どうなんだ?」

 はい?いつの間にか隣りにいるイケメン。今度は私に何かを求めているような視線を投げかけている。

「あ、ああ。うん」

 咄嗟に曖昧に答える。

 協力はしてもいいけど、私はあんたのマネージャーじゃない、っつうの。けど、そう答えたからには少しは向き合ってあげよう。

「友達としてなら」

「分かった。俺と藤川は今から友達になった。ということでいいんだな」

 同意のつもりで頷いて答えると微かに笑ったような気がする。イケメンはどんな表情をしてもイケメンなんだな。

 もう一度言うけどさ、ここにいるのが私で良かったね。ともりだったら絶対絶望しているかもしれない。


 その後は特に会話もないままただ相澤君の後を歩いた。未体験の街の風景はいろいろと新しい発見をさせてくれる。世の中いろんな世界が広がっているんだな。私って知らないことばかりだな。国内なのに異国情緒みたいかも。そんなことを思いながら私は私で楽しんでいた。

 

 どこまで行くのかな・・・え?・・・ここ・・?


 相澤君は裏通りに面した古いビルに躊躇なく入ってゆく。

 蛍光灯は点いているがどことなく薄暗い。おまけにジメっとしていてカビ臭いような。壁だって稲妻のようなヒビがあちこちに走っている。廃屋?と思ってしまうほどのクオリティだね。

 屋内はかなりヒンヤリとしている。エレベーターはないので階段を登ってゆく。上がるごとに照明が暗くなってゆくような・・・正直不安しかないんだけど。

 私一人だったら絶対に立ち寄らない。


 三階の薄暗い廊下を奥に向けて進んでゆく。両側には等間隔にドアがあってそれぞれの会社の名前が入っているが小さかったり擦れていたりしていてはっきりと読み取ることができない。一体何をしている会社なのかさっぱり分からない。実にブキミであると同時に世の中にはいろいろな会社が存在している。

 廊下の突き当たりのドア。ここでやっと立ち止まった。どうやら到着したみたい。どこを見てもパソコンのパの字も見当たらない。ホントにここに入るの?

 でもここが目的地なら大丈夫だよね?健全な会社だと信じたいのに信じきれない自分がいる。そんな私の気持ちなんて気付くはずもなく古くて重そうな鉄の扉を何の躊躇もなく開ける相澤君。

 仕方なく私も続くしかなかった。でもそこは廊下に比べるとずっと明るい。それだけでホッとした。

 見回してみると中にはパソコンが所狭しに陳列されているし段ボールは天井近くまで積まれている。なんだか倉庫みたい。


「おお。やっと来たな。待ってたぞ」

 奥のカウンターに座っている男の人が声をかけてくる。ここからじゃ顔が暗くてよく分からない。

「そこまで遅れていないと思うが待たせたなら悪かった」

 そう言って私の顔を見る。

 えっと、何か?

 私が答えないでいるとまた正面を向いて

「なんだかヤケに素直じゃねえか」

 カウンター越しに相澤君の顔をじっと見ているみたい。ちょっとの間だが空白が出来る。

 きっとお店の人もいろいろなことを思っていたんだろうな、この御仁に対しては。


「注文していたモノを確認させてくれ」

 特に答えもないままカウンターに向かって歩き出すので私も黙って付いてゆく。やっぱり私にはまだまだこの人を理解出来そうにもないなぁ。


 間近まで来て男の人の顔がはっきり見えた。

 髭のせいで若いのかそうじゃないのかイマイチよく分からない。少し太めのせいで着ているTシャツがパツパツなのはTシャツが小さいのか身体が大きいのか。そんなことを思って見ていると

「なんだ、デートのついでか?」

 ん?今、何て言った?ずいぶん熱心に見られているような・・・なんか恥ずかしいな。

 相澤君はなんて説明するのかな?それはそれで気になる。

「勘違いしている。今日はここに来るのが目的だ。コイツはただの付き添いだ」

 ・・・・・まあ、そうだよね。事実だよね。私は何を期待していたのだろう。ちょっと前に戻れるなら戻りたい気分だよ。


「てっきり一人で来ると思っていたからな。しかし、お前が女と一緒なんて成長したんだな」

「意味が分からん。それより早く見せてくれ」

「今出す。それよりお嬢ちゃん、コイツと一緒だと大変だろ」

 ニヤニヤしている店員さんの言っている意味は分かる。洗礼はもう済ませている。苦笑いして答えた。

 どうせ釣り合いが取れているって思われてないんだろうな。駅でのことが思い出される。

 どんな女の子だったらいいのかな?つい相澤君の顔を見る。あんたの隣りを歩くのってもしかしてすっごく勇気のいることなの?


 悶々としょうもない思考している間にカウンターの上にはパソコンの本体が置かれていた。

 え〜こんなゴツいの初めて見た。家にあるのとは全然違う。今からこれを買うんだ。

「ほらよ。これだ。お前さんに言われた通りのスペックで組んである。高校生でここまでやるヤツなんていない。一体何に使うんだよ」

 相澤君は黙って真っ黒なボディの中を確認し始める。パソコンの中ってこんな風になっているんだ。初めて見た。まあ、私には何がなんだかさっぱり分からないけどさ。

 二人だけでいろいろとやり取りを始める。どうせ素人の私なんか蚊帳の外だよね。単語や名称なんかも何を喋っているのか分からない。これじゃ英語の授業の方がマシだよ。


「問題ない」

「だろ。石だって現時点で最高のロットだ。期待以上の働きをしてくれる」

 専門的な内容を二人はしばらく喋っていた。私は相変わらず放っておかれている。仕方なくなんとなく周りを見ているけれどみんな同じようにしか見えない。

 世間にはこういうの必要としている人がいる。それは私達の部活だってその中の一つである。世の中って複雑過ぎる。でも部活に入っていなかったら私には一生知らない世界だった。少しは見聞が広がったって考えるっと付き添いも悪くなかったのかも。

 はあ〜ながい・・・一体何時になったら帰れるんだろう。


「おい。何か気になるものでも見つけたか?」

 気になるもの?そんなのあるはずないじゃん。でも私に話しかけてるってことはもう終わったってことでいいのかな?

「別に。パソコンのこと詳しくないし。でも今日で何となく相澤君のことが少し分かったような気がする」

 そのことについては何の返答もない。別に何かを期待してたわけじゃないけどさ。

「これから部室に行く」

 手元には購入したパソコンが台車に載せてあるし、それ以外にも幾つか箱があった。

「え?今から?今日は日曜日だよ」

「そのことなら問題ない」

「?」

「行くぞ」

「ちょ、ちょっと、待ってよ。今からって」

 私のお役目はまだ終わらない。まだ付き合う必要ってあるの?


 外に出るとずいぶんと日が傾いていた。まだまだ日が落ちるのが早い季節だ。おかげで気温の方もずっと過しやすくなった。

 このまま解散なら言うことないんだけど期待するだけ無駄なことだよね。今からこんな荷物を持って電車に乗るつもりなの?

 相澤君は台車を押しながら駅方向に歩き出す。ま、私は特に何も持っていないけどさ。なんか気が引けるんですけど。これだと飼い主についてゆく犬みたい。せめて何か手伝えることないのかな?

「そういえば・・・・」

 何の前触れのなく急に何を言い出すつもり?

「良かったな。了承してもらえたんだろ」

 振り返った顔は逆光でよく分かんないけど笑っているよね、多分。意外なことが起こって急に胸の辺りがざわざわする。

 そ、そうよ、その通り。そのことについても聞きたかった。あんただけなんだからね。みんな返事を返してくれたのに無視されていると思っていたんだから。

「・・・ありがとう。ちょっとだけ苦労したけどね」

 意識し過ぎて声が震えている。たったそれだけのことなのに。でも、ちゃんと思っていてくれたことが嬉しい。なんだ、見てたんじゃん。

「え、えっと、なに?」

 なんでずっと私のこと見てんのよ。黙っていられると緊張するのよ。

「友達として今度聞かせてくれ」

 それだけ言うとたまたま通りかかったタクシーを拾って乗り込んだ。

 まだ返事をしていない。何か言わなきゃ。でも隣同士で座るとなんだか言えない。近過ぎるのよ。


 会話は途切れてしまう。私は窓から流れる風景を見ていた。時折反射して映る相澤君はスマホで何かしている姿だ。少しでもこっちに視線を向ける仕草なんてなかった。

 ・・・・・・・はぁ

 聞こえないように溜息をつく。

「どうした?」

 え?もしかして今の聞こえていた?

「え、えっと・・・」

 自分でも小さな声だと思ってしまう。さっきからどうしちゃったのかな。窓に映る姿を見るとこっちに視線を向けていた。

「あ、あのさ、さっきのことなんだけど」

 そう言って振り返る。あ〜、近い。まともに見れない。

「・・・さっきの返事なんだけど・・・その内ってことで・・いいかな?」

 声・・・届いているのかな?

「そうか。気が向いたらでいい」

 頷いて答える。私は急いで窓の外に視線を戻すと同時に相澤君のスマホが鳴る。

「ああ。もう着く」

 それで通話は終了。そっか。もうそんな近くまで来ていたんだ。

 すっかり日が落ちて辺りには夜の帳が降りる。誰なんだろ?と思っているとタクシーは停まった。


 カードで支払ってタクシーを降りると学校が目の前にある。入学して間もないのになんだか凄く懐かしい感じがする。自分の場所に帰ってくるってホント安心する。

 今日は知らないことだらけだった。これも小さな旅ってことでいいのかな。

 見上げる空は星に被われている。私の気持ちはなぜか満たされていた。

11月最後の投稿は出血大サービス。

読んでいただきありがとうございます。

なんてこと言っても、ただ長くなっただけです。すみません。

もういくつ寝ると・・・一年があっという間に過ぎてゆく。

残り少ない今年も来年も幸せであれ。(孤軍奮闘中)

のんびり進行ですが次回もよろしくお願いします。

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