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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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12/35

昔とは違う。今の私は

 夕食のメイン食材はお母さんの実家から送られてきたアジフライ。そこには海老フライも付く。あとはアボカドとトマトとスプラウトを混ぜてお母さん手作りドレッシングがかかったサラダがあった。

 お父さんは仕事で遅くなるのでお母さんと二人で食べ始める。

「はい、タルタルとウスター」

 どっちも適量を小皿に取って熱々のアジフライに添えて大きく一口。さっくりとした衣にふんわりとした鯵の身。

「どう?」

「・・あつ・・・うん、美味しいよ」

「たくさん食べてね」

 なんとなく緊張感のある空気が漂っている。お母さんも察しているんだろうな。

 とりあえずご飯の後だよね。足元に置いた鞄の中にはクリアファイルがいつでも取り出せる状態で待機してあるが、できればお父さんもいて欲しい。多分、お母さんも同じことを思っているだろうな。


「どう?」

「どうって?美味しいって言ったけど・・・」

「違う。学校のこと。お友達とかできた?」

「うん。入学式に一人。逸見ともりっていうの」

「ふうん。それで?どんな子なの?」

「一言で言えば元気かな。私よりちょっとだけ背が高くて、髪が長くて日本人形みたいって最初思った」

「そうなんだ。会ってみたいな」

「家に連れてきてもいいけど、ともりの家遠いんだよね」

「まあ、じゃあ学区外ってこと?優秀じゃない」

「まあそうかもね。同じ六組だし。でね、部活も一緒なの」

 それを聞いたとき急にお母さんの顔がイッキに曇る。やはり了承を得るのって無理があるのかな。でも私だってここまで来て引き返すわけにはいかない。気持ちはどこまでも真摯で本気なんだ。

「あのさ、ちゃんと説明するのはお父さんが帰って来てからでもいい?」

 私は思いきって提案してみるとお母さんは「当たり前でしょ」とだけ言って夕食を続けた。

 

 私の予想というか予感は当たっていたみたい。あとは私次第ってことかな?

 

 夕飯が終わると自分の部屋に戻って待機状態になる。机に置きっぱなしになっていたスマホを覗くと部活のレインとともりのレインとイケメンからのレインが入っていた。急に慌ただしくなったみたい。

どれどれ、内容を確認。


『今日はお疲れ様。いい返事を期待している』と部長。それに続いて他の人が同じような内容が続く。まだ答えは出ていないけれど一応簡単に送信。


 で、次はともり

『どうしよう。やっぱり駄目って。あやせはどう?』

 やれやれ思っていた通り、向こうも戦況は厳しいなあ。

『私はこれから。でもさ、ここは一つ。何かと交換条件を出してみてはどうかな?』と送信。すぐに返ってくる。

『例えば?』

 少し考えて、やっぱりここは学校であるということを意識した方が無難か。

『例えば今度の模試。学年で10位以内になったらってどう?どのみち悪い成績だと部に入ることだってできない。だからその辺に話題の重点を置くって作戦は?』

『10位って厳しくない?』

『あのさ、私に勝つって言ってなかったっけ』

『それは勢いだって』

『なら30位以内とかは?』

 ここで少し間が空く。きっといろいろ考えているんだろうな。その内返事が返ってくるだろう。


 じゃ、次。イケメンはどんなことを書いて来るのだろう。

『日曜についての追加事項。用事があるから一足先に行っている。それ次第では少し時間に遅れる可能性もある。連絡を忘れた時のために先に断っておく。だが必ず行くから待つように』

 明後日のことをもういろいろ計画しているみたい。

『了解しました。私は改札出た所で待っていたらいいのかな?』

 穏便な会話で返信したつもり。すぐに返事がきた。

『そう言ったつもりだ。理解しているなら用件は終わりだ』

 何これ?喧嘩でも売りたいのだろうか?もう少し言い方ってものを考えろって。でも返事をしないのは具合が悪いので

『では日曜日。おやすみなさい』

 返信はない。ま、予想するまでもないか・・・


 ここでやっとともりからの返信が入る。

『学校の成績をキープできるなら許可するって。模試は30位以内に入る。これが条件。あやせも頑張って』

 そっか。よかった。親を説得しているともりのこと想像できる。彼女のバイタリティ。本気を出したらきっと凄いんだろうな。

『良かったじゃん。おめでとう。私はこれから。応援よろしく』

 ともりは“頑張れ”的なスタンプで返してくれた。

 さて、お母さんにも同じ手が使えるかどうか分からないけれど頑張るか。

「あやせ。パパ帰って来たわよ」

 お母さんの声が聞こえる。いよいよ出陣。頑張れ私。なんてね。

「は〜い。今行く」


「おかえりなさい」

「ただいま。さて、早速聞こうかな」

 お父さんは着替えずにダイニングテーブルの席に着いた。

「ご飯は?」

「食べるよ。あやせの話を聞いたらね」

「いいの?私の方が先で」

「もちろんだ。ずっと待っていたんだろ?」

 頷いて答える。

 私は手に持っていたファイルを渡すとお父さんとお母さんは交互にじっくりと見始めた。私は言葉でも説明を加えた。自分でもずいぶん早口だったと思う。上手く伝えることができたかは疑問が残る。


 二人が特に念入りに見ていたのは、言うまでもなく安全に関するページだ。

 確かに今までは運が良かったのと、それなりの見分け方で乗り越えて来た。それは確証とは言えず説明しづらかったしそれだと絶対に二人を納得させることができるはずもない。

 対して、今回から導入される技術についてはそれなりに理解してもらえるのではなかろうか。そんな安易な考えでいると


「やっぱりこの新規安全対策って穴だらけよねえ」

 お母さんはお父さんの気を引くような言い方をする。そのことにはお父さんも同意している節がある。

 でも穴って、例えばどんな?それを聞かせてもらいたい。その上で可能なら先生なり部長なりイケメンでもいい。追加対策をしてもらうまで。

「あ、あのさ、今のところこんな感じで進めているみたいなの」

 それで?という顔をする二人。ここはもっと言葉による説明が必要不可欠だ。けれど一体私に何をどう説明することができるのだろう。機械は苦手分野なのに。


「そもそも担任の先生が同行しないこと自体、この対策は絵空事よ」

「同行って・・・それじゃヒッチハイクっていうよりただの遠足じゃない」

「でも部活動なら然るべきことだと思うわ。私の時代も遠征に行くってなったら顧問はもちろん他の先生だって同行したものよ」

「それって遠征の話でしょ。私の入った部はヒッチハイクをする部だよ。先生が一緒なんてありえないでしょ。だから今ある技術でそれをカバーしようと・・・えっと、だからそれで一人一人を監視するっていうか」

「それじゃ顧問がいても同じでしょ」

 そうだけど。と、つい心の中で同意してしまいそうになるがここはもっと頑張らないと。

 ふと頭の中にお姉ちゃんの言葉が頭に蘇る。


 そうだ。私はこの部活をどうしてもやりたい理由がある。そのことをまだ説明してはいない。

 決して譲れない想い。そんな風に言っていた。それは今の私の中にもある。上手く言葉にできるか分かんないけど。でも今言わずしていつ言う?ここで負けることは自分自身に負けることになる。


 冷静になれ。表面の感情じゃなく、もっと私がやりたいって思う本質を話すんだ。

 呼吸を整えると自然と気持ちが落ち着いてくる。今が勝負の時。あやせ、自分の言葉で話すんだ。


「危ないなんてことは始めから分かっていた。もし、そんなことになったら自分を含めて周りのみんなに迷惑を掛けることも分かっている。けどそんなこと言い出したら私は前に進むことができない」

 考えなくても気持ちは言葉になってゆく。もっと、もっと素直になるんだ。

「まだ何も始まっていない。それをこれから始めるの。もちろんまだまだ子供だし、親に頼らないと生きてゆくことなんてできないけど、それでも一歩ずつ大人になろうとしている。私は後悔したくない」

 二人は特に反論をすることなく、じっと私のことを見ている。まだまだ言うべきことがある。

「なんでヒッチハイクをしたいか。それは偶然。完全に偶然。でも出会ったのは運命だと思いたい。だから今の高校を選んだ。その人に会うために。私はこれからの人生をキラキラしたものにしたい。中学までの私はいろいろあったから。体はもうあの頃とは違う。先生だってもう普通に生活しても大丈夫だって言ってくれた。元気になったんだよ。お母さん、私、ホントに元気になったよ。だからもう自分のせいになんかにしないで」

 小さな頃、自分の自我が目覚めた時から私は定期的に病院に行く子供だった。何でも母子感染というヤツで生まれつき患っていた。季節の変わり目には必ず学校を休んだし、体育の授業なんて一度も参加したことがなかった。

 夏は特に悲劇的過ぎた。みんなはプールで気持ち良さそうにしている。私はその間は何もすることなく、日陰でみんなことをただ見ているしかなかった。水の弾ける音、蝉の鳴く声、それに太陽がチリチリと音を立ててアスファルトを焼く音、そんな音の記憶しかない。これがどんなに惨めなことだったかきっと誰にも分からない。

 仕方ないから図書館にいることが多くなったし、勉強くらいしかやるべきことはなかった。林間学校も修学旅行すら行けなかった。旅行の中には私の姿はどこにもない。ここまでが小学校。


 中学になってもあんまり状況は変わらなかった。体育は相変わらず見学だった。だけど少し違ったのは中学の時の修学旅行は担当の医師から『行ってもいい』と許可が出たこと。

 飛び上がるほど嬉しかったと同時に、もし体調を崩したら、って考える自分がいた。みんなに迷惑をかけるくらいなら休んだ方がいいのかな、そんなことすら考えていた。

 気持ちのどこかには行きたいって思いがある。

 『けど』と『もし』その言葉はしばらく頭の中で繰り返し、繰り返しリピートし続けていた。


 気持ちはみんなと同じように未来に向かっている。でも私の身体はまだスタートラインにすら立てない状態だった。

 私はホントはどうしたい?行きたいの?行きたくないの?それは何のため?誰のため?


 そんな時に偶然目にしたのはアイアイ先輩のブログだった。

学校での旅行の思い出はいつまでも消えないと思います。

読んでいただきありがとうございます。

私は今、昔を懐かしむことが増えています。歳を取ったということでしょう。

これからものんびり物語は進んでいきます。

次回もよろしかったら立ち寄ってください。

よろしくお願いします。

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