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女子ヒッチハイカー部〜出会いと旅立ち〜  作者: マナマナ


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期待しちゃいます

 落ち着いたところで席に座り直す。同時にドアが開いて誰かが入ってくる。

 音に反応してつい視線を送ると

「え?沢渡先生?」

「藤川に相澤に逸見。俺のクラスばっかりだな」

「えっと、もしかして先生って」

「そうだ。俺がここの顧問だ。おい浅倉これを」

 部長に手にしていたクリアファイルを渡す。中身を確認してから今度は凛柊先輩が私達新入部員に渡してくれた。先生は部長と副部長の後ろ側に折り畳み椅子を置いて座った。

「先生もいらっしゃたので早速始めたいと思います。新入部員は今配られたファイルを見ながら説明を聞くように」

 クリアファイルの中には十枚ほどの資料が入っている。取り出してみると表紙に

『ヒッチハイクの心得とコツ』とあった。


「それじゃ一枚目を捲って」

 言われた通り一枚めくる。横書きで『ヒッチハイクの目的』とある。


「え〜、ちょっと聞いてようか。新入部員の中でヒッチハイクをした者はいるか?」

 部長はいきなりそんなこと聞いてきた。

 誰も手を挙げない。まあ当然と言えば当然だよね。他の二人は知らないけど私に至っては家族旅行だって数えるほどしかしたことがない。その中にはただ単に両親のどっちかの田舎に行くといったものが含まれている。本気で純粋に旅行なんていったら小学生の頃に行った海水浴くらいじゃないだろうか。

「ふむ。なら今度は一人旅ならどうだ?」

 この問いにも私に手を挙げる資格はないし遠い世界の話のような感覚でしかないのだが、ここで手を挙げる者がいた。っていうか私以外の二人共ってホントに?


「ほう・・・ちなみに逸見は何処に行った?」

 ともりは立ち上がって

「えっと。一人旅っていっても中学の時に一回だけ。福島のお婆ちゃんの所です。新幹線で行きました」

「なるほど。それも立派な一人旅だ。じゃあ相澤は?」

 イケメンは座ったままだがともりはここぞとばかりに注目している。

「・・・中学一年の時。夏休みに二週間ほど。青春18切符で本州を一周した」

 なんか壮大なことさらっと言ってるよ。

 みんなから賞賛を浴びているイケメンを見ながら、私は青春18切符ってなんだろう、と思っているとともりが独り言を言いながらうっとりした顔をしている。

「私が行って来いって行かせたんだ。渋々出発したんだよな、瞬」

 アイアイ先輩は笑いながら付け加えた。

「・・・亜衣香は余計なこと言うな」

 イトコとはいえ、まさかの呼び捨て。っていうか二人共名前で呼び合っているんだ。おまけに私の隣りでは小さな声で『瞬・・・くん』と言っている人物が一人いる。自分で言ってて顔を赤くしているともり。あらためて恋というモノが歯痒く思えてしまうのは何故だろう。


「二人共、貴重な体験談だな。藤川はこれからだ。では本題に入るか。まず、ヒッチハイクとは。これは言うまでもなく他人の車の乗せてもらって目的地に行くことだ。1960年頃アメリカのヒッピーが始めたと言われている。旅費をかけないというのが本来の目的であるが、この部の最大の目的はいろいろな人との交流にある。それによって得られるモノはたくさんある。結果、自分の価値観や人間性の向上を目指している」

 部長は一気に喋るとコーヒーを飲んで喉を潤す。

「では何故公共の交通機関を使わないのか。これのさっきと言ったことと重複するが、見ず知らずの他人の車に乗ること自体、そこはある意味密室になる。そこで会話は始まってゆく。言っておくが我が部は沈黙は厳禁だ。もちろん相手が静かな環境を望むなら別だが基本はこっちが話題を振って相手から会話を引き出す。内容は何でもいい。その内相手が話したいことを話始める。面白いこともあればそうでない場合だってある。他人の経験談を聞くっていうのはなかなか興味深いモノだ。他にも向かった場所でしか見られない景色や料理の味も旅の醍醐味だということ私は声を大にして伝えたい。金沢で食べた回転寿司。あれを食べたらもう東京の回転寿司なんて・・・名古屋・・・いや岐阜だ。あのホルモン焼きは絶品だった。他にも・・・そうそう山形は・・・」

「部長、部長、暴走してます」

 凛柊先輩が言ってアイアイ先輩が「どうどう」と宥めてコーヒーを勧める。浅倉部長って食べることが大好きなんだろうな。指摘されてちょっとだけ顔を赤くしながら

「・・・コホン・・・ヒートアップしてしまったな。話を元に戻そう。とにかくいろいろな人との交流だ。では次はメリットとデメリットについて話そう・・・」


 こんな感じで説明が続いてゆく。あらかじめネットとかで知った情報とそんな大差ないことが分かる。けれど私が知りたいのはその先にある。いかにこの部の安全性が保たれていたということだ。

「ちょっと休憩しよう」

 部長が座ると凛柊先輩が新しく注いだコーヒーを出す。飲みながら先生と話始める。私も含め他の人は立ち上がって伸びをしたりトイレに行ったり、などなど。


 10分後説明会は再開する。資料もいよいよ最終ページ。そこには

『旅の安全対策として』とあった。

 いよいよ私が一番知りたい事が紐解かれることになる。集中力が増してゆく。これでお母さんにちゃんと説明が出来る。期待は膨らんでゆく。


「では最後。君達、この部に入ったことはちゃんと親に話してあるだろうか」

 真っ先にともりが

「両親揃って、大反対してます」

 私も立ち上がって

「ウチも同じです。反対されているっていうか賛成はしてくれないです」

「問題ない」

 静かに答える相澤君の顔を見る。一瞬目が合ったがそれ以上は何もない。イケメンの親は理解があるってことなのだろうか。それは考えれば分かる。アイアイ先輩というすでに部活をしているイトコの存在があるからなのだろう。

 つまりこの問題は私とともりの二人だけの課題になる。資料の最後の方には親の同意が得られない場合はヒッチハイクをすることが出来ないとまで書いてある。ここまで来ておいて頓挫なんて絶対に嫌だ。ここはなんとしても有効な情報が欲しい。


「そこにも書いてあるように藤川と逸見の二人はちゃんと了承してもらわないとならない。親の同意を得られて初めてこの部の入部が許可される。だから今から説明することをちゃんと伝えるように。それでも同意が得られない場合は残念だが・・・せっかく入部を希望してくれたんだ。部長としてヒッチハイクの真髄を知ってもらいたいと思っている」

 二人一緒に頷く。ともりと顔を見合わせて

「あやせ、頑張ろうね」

「うん。この部に入れなかったら私の高校生活は終わってしまうことになる」

「あやせ大袈裟・・・でもその気持ちなんとなく分かるよ。あやせのこと応援する。だから私のことも応援して」

「もちろん。お互い頑張ろう」


「オーケー始めよう。先ずこの部のことをもう少しちゃんと話そう。発足して5年。まだ歴史の浅い部なんだ。沢渡先生がこの高校に赴任して始まった。だが学校には正式な部活動として認証されていない私設の部ということになる」

 そうなんだ。だから部活紹介の時いなかったんだ。

「だけど最近は功績が認められはじめて来年はちゃんとした部活として認証されるって話だ、今のところ。認証されれば部費もちゃんと出るし部活紹介にだって出られる。ま、どっちにしても私達が卒業した後の話になるから後輩達のためにも事故のないようにしないとならないんだ」

「あ、あの」

「藤川。今度はなんだ?」

「私設ってことだとしたら部費になる資金ってどうしているんですか?」

「気になるのか?ま、そうだな、その件に関しては後にしよう。そのこともちゃんと説明はする。だが今は一番のキモの部分だ。話を続けてもいいか?」

「す、すみません。お願いします」


 部長はホワイトボードを自分の近くに寄せてマーカーを手にする。

「さっきも言ったが今まで危なかったことがなかったということは100%とはいかない。ただそれは怪我をするとか目的地と全く違う所で降ろされた、というのはあるが事件性のモノは今のところ一つもない。怪我と言っても捻挫が一番大きいか。それももう昔の話。私がこの部に入った時はそういうことすらなくなった。これはこの部の伝統になりつつある。だからこの先みんなにも継承して欲しいと思っている。もちろん不慮の事故だってある。けれどもしそうなったとしても最小限で留めておきたい」

 言葉の説明が続く。今はまだホワイトボードには何も書く様子はない。

「正直今までは運みたいなところがあった。事件に巻き込まれなかったのはある意味奇蹟としかいえない。それは乗せてくれる人達が本当に親切で良い人ばかりだったからだ。部としてもどんな車を選べば良いかとか運転手と交渉する時にその人の人柄の見分け方とかの基準はあった。要は人間の五感に頼っていたというのがほとんどだった」


 え〜と、今までのことを総合的に捉えると『具体的な安全対策はない』って言っているようなもんじゃん。これじゃとてもお母さんを納得させることなんて出来ないよ。そんな私達の視線を感じたのだろうか

「ではこれからの話をしよう。期待してくれていいぞ」

 部長は何やら自信ありげな笑みを浮かべる。

 そっか今からが本懐なんだ。ここまでずいぶん焦らされた感はある。言葉通り期待しちゃいます。いいんですね。希望はまだある。私の高校生活はこんなところで終わるはずはないんだ。

 さあ、お願いします。私の脳裏には快諾している親の顔が浮かんでいた。

淡々とただ淡々と物語は進んでいきます。

読んでいただきありがとうございます。

実はヒッチハイクってしたことないけどされたことはあります。

その時は丁寧にお断りしました。

そんな未経験で書いている私。完全に妄想です、はい。

次回もよかったら読んでいただけたら嬉しいなって。

よろしくお願いします。

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