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世の中は小説よりも奇なり

久しぶりの投稿です。


お母様の実家はこの国の筆頭公爵家ラビアン家。資産も国一番。父の実家は、男爵家カカオ家では家格は落ちるし何なら没落寸前の家。代々魔力薬で小さな領地を回して来た努力家だったが先代つまり祖父がギャンブルに嵌り地道が売りの家門を一気に没落へと一直線に進めていった。


また私の父ダイスも凡庸な人で考えるのは楽な道ばかり。どうすれば盛り返す事が出来るかを悪知恵を働かせた結果公爵家の娘であるシェリル・ラビアンに目を付けた。


まぁぶっちゃけ資産目当て。頑丈な箱に入れられて育った箱入り娘の母はあっと言う間に攻略されてしまったらしい(この辺りは祖父と伯父談)

祖父エダンと伯父ハルクは引き離そうとしたらしいが、冷静な祖母マルタは


「逆に火が点いて悪循環だから目が覚める迄待ちなさい。」


と諭したらしいが、より箱を2人掛かりで頑丈にしたら、母は窓から逃げ出して父の元へ行ってしまったらしい。


当時母が好きだったラブロマンスの小説の主人公気分だったのでは?(祖母談)


と言う事らしい。逃げ出しても可愛い娘に仕方なく祖父と伯父は援助をしていたらしい。(目に入れろと言われたらあの2人は喜んで入れるんじゃないかと言う位には愛情深かったから。祖母談)


しかし、現実は小説とは違って上手くはいかない。お金が欲しい時には母に猫撫で声で擦り寄り、お金を回収すると、何処かに消えていく。荒れ果ていく領地を母はやった事がないのに懸命に運営していき、徐々に借金を減らしていった。影で暗躍する2人が面白かった。(祖母談)


影で支える人がいるにしても母はした事がない苦労をする事には違いがない。自身の多くは無い魔力を使って魔法薬を作った。


魔法薬の原材料となる薬草も二代のダメ人間に寄って収穫量は半分以下になっていた。領地民と共に雑草を刈り現存の薬草を種を取ったり、乾燥して売れる物を他領地へ販売したり、先読みをして来年多く入り用になりそうな魔法薬をアカデミー時代の友人を頼り領地入りして貰い一緒に製作して販売をした。


それにより、かなり領地改革が進んで3年後には借金は完済して蓄える事に成功した。

領地民も生活が潤う様になり出稼ぎに主人を取られる事も無くなった。


母には商才があった様だ。


その間に母は私ラリサを出産してワンオペ育児をしていた。何故ならこの頃には父は全く家には帰宅しなくなったから。

祖父の調べに寄ると、私が産まれる1年前に愛人が娘を産んでいたらしい。その間は愛人を抱けないから母の元へ欲の発散に偶に顔を出していたらしい。(祖父談)


父はバカなので単に母が運が良かったから借金を減らせた。と思っていたらしい。(社交場で声高に母を罵っていたらしい。祖父と伯父は眉間に皺を寄せて顳顬の血管が浮き出て拳を握っていつ殴り掛かるか解らない状態でヒヤヒヤしたらしい。祖母談)


苦しい領地経営に過剰な魔力消費、出産、育児と多忙を極めた母は私が10歳の誕生日の夜に倒れた。倒れてからの母はベッドに横になっている時間がほぼでベッドで仕事を行っていた。


魔法薬でも回復見込みが無い程に心身共に疲弊していた。

それでも私が15歳迄持たせてくれたのは、祖父母と伯父の愛情のお陰だと確信している。


公爵家のお金で使用人を増やしてくれて、仕事も信頼出来る補助者も増やしてくれたので身体をゆっくり休ませる事が出来た。


ただ領地運営費を父が掠め取っていく事は止める事は誰にも出来なかった。この時は領主は父だったから。


クズ夫に寄って母は他界した。と私は思っている。責任感が強い母は領民の為に逃げ出さなかった。領民には母の想いが伝わっていたのでそれが救いだと思う。


葬儀は父が簡単に済ませてしまった。公爵家が来たら大変だと思って祖父母、伯父を近づける事を許さなかった。


葬儀が終わると直ぐに愛人キャロルと娘ロリアナを連れて屋敷に帰って来た。

愛人は酒場の給仕をしていたらしく男爵家に入る事により


自分は男爵夫人娘は男爵令嬢になれる。


と思っていた。生前母が使用していたドレスを自分の部屋に持って行き試着をしてみたが、サイズが小さくて入らず背中のボタンが弾け飛んでメイド達が顔を背けて肩を振るわせていたのはツボった。


あれだけの我儘ボディでは母のナイスバディのドレスはいくらコルセットを締め付けても無理だと思う。結果全てのドレスを布切れに変化させてしまった。


ロリアナは、父におねだりをしてブティックへ行き10枚のドレスに首飾りやイヤリング、ブレスレットセットを5点購入して来た。


請求書の店名を見て驚いた。王都でも有名な最高額のショップ 


マイオニーブティック


が書かれていた。領収書ではなく請求書と言う事はツケ払いである。


娘のドレスや宝飾品を見たキャロルは、父に自分にも購入する様に強請った。鼻の下を伸ばした父は今度はキャロルと外出した。


ロリアナはメイド達にドレスの着用をして貰い態々私に見せに来た。


「お前は、父に愛されないからこんな事して貰えないでしょう。今度私とお母さんを連れて王室主催の舞踏会へ連れて行ってくれるんですってよ。」


得意気に話すロリアナを首を傾げて見つめた。


招待状をどうするつもりなのか?

しかも王都迄の馬車も無くなると言うのに。


心の中で呟いて言葉にはしなかった。舞踏会は2週間後。既に招待状は発送されている。

当たり前だが、我が家には父宛には届いていない。

と言う事は、彼女達の招待状はない。


数時間後に父とキャロルも浮かれて帰宅した。ギリギリ舞踏会前日にドレスが仕上がるらしい。


父も何年も王都から離れていたから貴族の集まりがどんなモノか忘れているようだ。

各家門で開かれる夜会等は招待状が無くても知り合いだったり、友人紹介であれば顔パスが出来る。

普段父は顔パスを使用して夜会に参加していた。


しかし、王宮は当たり前だが顔パスなんてモノは無い。


機嫌が良い父とキャロルとロリアナは王都でも有名なレストランへ向かった。


お上りさんのキャロルとロリアナがせがんだらしい。

馬車を使用しようとしたが、厩舎番に


車軸が壊れているから無理


と断られて文句を言いながら辻停馬車迄歩いて行った。


私はその間に厩舎番が守ってくれた馬車に乗り込んで公爵家へと移動した。


母の具合が悪化してからこんな事になるのでは?と予想して少しずつ私物を公爵家に移動していた。


いつ何があっても身一つでも逃げられる様に。


私が屋敷から出ると、メイドや従者達も次々と公爵家へ辻馬車を使用したりして移動した。


父達が帰宅後は勿論灯も無い暗い屋敷になっている。


誰も居ない屋敷でどうするのか見たかったが、公爵家に居る私には叶わなかった。


それから2週間後の王室主催の舞踏会で騒ぎは起こった。


公爵家から王宮入りした祖父母と伯父と私の4人は会場で寛いでいると、父の声が響き渡った。


「私はカカオ男爵だ。何故入る事が出来ない!可笑しいではないか!」


「カカオ男爵家の招待状を出して頂かないと入場出来ません。」


「私は長い間留守にしていたから招待状は来ていないんだ!何故解らないんだ!良いから入れろ!」


「ダメです。招待状をお持ち下さい。」


同じやり取りを繰り返していると、美丈夫な男性がマントを靡かせながらやって来た。


「カカオ男爵お久しぶりですね。覚えていらっしゃいますか?私レッドクリフ公爵家の次男フレドリック・レッドクリフです。」


父は訝し気な顔をしながら首を傾げた。知っている筈が無い。天と地程身分が違い面識すら無いのだから。


「その貴殿がなんだ?」


「カカオ男爵は爵位を返還されているので入場は出来ません。」


「は?」


父の一言が会場に響いた。

フレドリックは、続けて話し出した。


「シェリル・カカオ様が3年前に男爵位返還と当主不在届けを出されてました。それにより、奥方様は未亡人扱いとなりご自身もラビアン家に帰還となりカカオ家はその時点でお家断絶となり爵位を返上となっています。」


父は顔を真っ赤にして怒鳴り出した。


「私とシェリルには娘が居るのに何故断絶なんだ!」


フレドリックは小さく溜息を吐いてからゆっくりと話し出した。


「今から3年前ですと、ラリサ嬢は12歳成人扱いになる為に父の家門を継ぐか母と一緒に公爵家入りするのかを選べます。結果ラリサ嬢は公爵家のハルク様の養女となり、男爵家は無くなりました。宜しいですか?」


「宜しい訳ないだろう!」


フレドリックは、父を睨んで言い放った。


「おや?これは陛下が下知をされた案件ですよ。それは王家に反旗を翻す事になりますが、宜しいですか?なれば我々近衛騎士隊が全力で立ち向かいますが。」


父は震え出した。元々自分が何もしなかった事が悪いのにそれをすっかり忘れている。

祖父はゆっくりと父の方へ歩み出して目の前に立った。


「久しぶりだな。ダイスよ。我が愛娘を大分可愛がってくれたなぁ。感謝を込めて、お前の領地は我々が今後は管理出来る様にさせて貰ったよ。勿論陛下から許可を貰っている。逃げ出したお前に代わってシェリルと我々が管理していたから何の問題も無かったよ。あぁ屋敷は今領民達が壊しているから帰る家は…無いなぁ。それから先日マイオニーブティックから現存しない男爵家からドレス等の購入があったと王家へ詐欺報告があったそうだ。おや、帰る家は無いが場所は出来たな。良かったではないか。我らも安心して生活が出来る。なぁマルタ、ラリサや。」


私と祖母は笑顔で何度も何度も頷いた。祖父は思い出した様に手を叩いた。


「そうそう、お前には一つだけ感謝をしているぞ。この世にラリサが産まれる手助けをしてくれた事だけは感謝をしている。まぁそれしか無いがな。」


愕然とする父とキャロル、ロリアナはフレドリックの指示でやって来た近衛騎士に連れて行かれた。


3人が連れて行かれると


「パンパン」


と手を打つ音を合図に楽団が演奏を始めて何事も無かった様に舞踏会が始まった。


招待客が揃うとファンファーレの後に王と王妃が入場してその後に王子達と姫君が入場した。


私は祖父母と伯父と一緒に挨拶周りをした。途中から仕事を抜けて来たフレドリックが私の横に立ち一緒に両陛下の前に行き婚約の報告をした。


フレドリックはラビアン公爵家への婿入りとなる。父は知らなかったが私とフレドリックは幼馴染だった。私の祖父母と先代レッドクリフ公爵家のは仲が良く親友同士と言う事もあり、祖父母に連れられてカカオ領地迄遊びに来ていた。レッドクリフ公爵家は長男のエドウィンが継ぐ予定なので次男のフレドリックは公爵家を継ぐ事は出来ない。


母も私が10歳の頃には全く帰らなくなった父に見切りをつけ始めてラビアン家に相談をしていたので、先行きラビアン公爵家に戻る事を考えた時、未だに独身の伯父の養女となった時を考えフレドリックと私の婚姻を想定始めた。


フレドリックも私も違いに想いあう関係にはあったので、2人共に受け入れた。


12歳の時には男爵家はお取り潰しになったので、15歳迄の間には余裕で準備期間となった。


その後、近衛騎士隊からの事情聴取で明らかになった父と母の婚姻から今日までの経緯は呆れる事ばかりだった。


公爵家の箱入り娘だから駆け落ち同然であっても、数日で許して援助をする事を見越していたらしい。


また、父は母を落とす時には既にキャロルと付き合い出していた。

しかし、キャロルと会うにはお金ぎ掛かる。だからこそラビアン公爵家の援助が必要だった。


しかし、いつになっても許しが出ない事に苛立ち、家にある納税分の金額を持ち出しキャロルと同棲を始めた。


キャロルは、領地に父を偶に帰せばお金に困る事は無い。と考えて帰宅を勧めた。

案の定父は自分とキャロルの為に母を騙してお金を持って行った。


子供を身籠ったキャロルは出産迄に掛かるお金を考えて今まで以上に父を領地へ帰らせた。


結果私が産まれた訳だがそれは計算外だったそうだ。

あの父なのに子供が出来る事が無いと考える方がどうかしている。


その後帰宅しなくなったのは、キャロルが私が産まれた事で父が里心を出さない様にロリアナ以外の娘に愛情を持たない様にする為だったらしい。


その間は、父を上手く操縦して仕事をさせたらしい。

あの怠惰な人に仕事をさせた。この部分はキャロルを尊敬する。


3人で仲良く暮らしていたが風の便りでシェリルの命が空前の灯火と聞くと男爵家に帰り男爵とその夫人、令嬢となり贅を尽くす事を考え偶に母の様子見に領地に来ていたそうだ。


だから母が亡くなると直ぐに行動に出る事が出来たそうだ。


そして、私や使用人達が公爵家を出た後は、暗い屋敷で2時間掛けてやっとランプに火を入れて風呂に入ろうとしたが、湯を沸かす事が出来ず諦めて寝たそうだ。


翌朝も誰も居ないので、キャロルが仕方なくキッチンで料理をしようとしたら、食材は空なので作る事が出来ず街のビストロへ足を運んだが、父達が着席する前に


「材料が切れてしまったので提供が出来ない。」


と断られてしまったそうだ。結果辻馬車を使い隣領地迄赴き食事をして、帰る時に市場で食材を購入して賄っていたらしい。

2週間は手持ちのお金で何とか繋いだ様だ。お風呂は湯を沸かして浴槽に湯を入れる労働がキツくて1回は何とか入る事が出来たが、それ以降は井戸の所に木で浴槽を領民に作らせて火を入れて入っていたらしい。


制作費は未払いらしい。


そして、辻馬車を乗り継いでやっと王宮にたどり着いたそうだ。


何だろう。そこまでして貴族になりたかったのかと考えると、


虚しくないのかな?


と思ってしまう。まぁそんな考えを持ち合わせて居ないからこんな現状なのだろうが。


そして、マイオニーブティックのドレス代と領民に作らせた浴槽代は一度祖父が立て替えて支払った。


しかし、祖父はこんな慈善事業はしないので、裁判後に使役に出された父とキャロル、ロリアナの賃金90%を毎月徴収している。

90%を取られると食事はかなり質素で野菜カスのスープで着る物も購入出来ない。

(囚人でも支払われる賃金から食費等は引かれる)


残りの10%を使わずに貯めたら違うのだろうが、キャロルとロリアナがこっそりパン等を購入して食べてしまうので来月には手持ちが空になっているらしい。


父は痩せていくのにキャロルは余り体格は変わらないそうだ。


今日私はフレドリックと挙式を挙げる。ウェディングドレスに身を包み鏡の前に立つ。

良く母にそっくりだ。と言われる。儚げな美人でスタイル抜群。


そんな母が何故父に落ちたのか?

それはロマンス小説の読み過ぎだったのでは。


と思うが、そんな美人の母よりもあのキャロルを選んだ父の感性は…

理解し難い。


現実は小説よりも奇なり。


だと思う。


読んで頂きありがとうございました。


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