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童話

オルゴールのネジを回したら

作者: 本羽 香那


 アンちゃんとサナちゃんは大の仲良し。

 そんなある日、アンちゃんの家で2人仲良く遊んでおりました。

 そんな中で、2人は部屋にある机の中の引き出しを開けるとある物を見つけたのです。


「なにこれ?」

「あ! オルゴールだね。ネジを回したら音が出るんだよ」

「あら、駄目よ。そのオルゴールは決してネジを回してはいけないのよ。だからお母さんに渡して」


 2人がネジを回そうとすると、アンちゃんのお母さんが慌てて駆け寄ってきて、オルゴールを渡すように言われてしまいました。

 2人は回したい気持ちでいっぱいでしたが、お母さんに言われたら仕方がありません。

 そのため、素直にアンちゃんのお母さんにオルゴールを渡して、その日はそのままサナちゃんが家に帰って行ったのでした。



 その1週間後、再びサナちゃんがアンちゃんの家にやって来て家に遊びに来ました。

 最初はいつものように遊んでいた2人でしたが、前に見たオルゴールをもう1度見たくて、アンちゃんのお母さんが新たに隠した場所へ行き、こっそりとオルゴールがある引き出しから取り出しました。

 

「やっぱりキレイだね」

「今日こそ回してみようよ!!」

「そうだね」


 2人はどんな音が流れるのかワクワクしながらネジを回すと、急に体がフワッと浮いて目を思わず瞑ってしまいました。

 そして、足が地面に着いて目を開けると見たこともないところにやって来たのです。


「ここはどこ?」

「サナも分からない、どうしよう」


 サナちゃんは知らない場所にやって来て怖く感じ、アンちゃんに抱きつきました。

 しかし、アンちゃんは興味津々に周りを見ています。


「アンちゃん、家に帰りたいよ」

「サナちゃん、せっかくだからボウケンしようよ」

「え〜。でも、アンちゃんがいうなら少しだけならボウケンしても良いよ」


 サナちゃんは怖さを消えないものの、アンちゃんの冒険という言葉に興味を惹かれ、2人は前に続く道をゆっくりと歩いてみることにしました。

 

 2人が歩いて疲れ始めた頃、なんと向こうの方から何とも甘い匂いがするではないですか。  

 長い間歩いていた2人は、もうお腹がペコペコ。

 その美味しそうな匂いの方へ少しだけ走って向かいました。


「「わ〜あ!! お菓子の街だ」」


 そう2人がやって来てたのは、あらゆる場所にお菓子があるお菓子の街。

 木の枝にはドーナツが、雲には綿あめ、草にはチョコレートと様々なお菓子があるのです。

 2人は大変喜びながら、お腹がいっぱいになるまで多くのお菓子を食べて満足したのでした。


 2人はもっと歩いたら、他に素敵な場所があるのではないかと思い、家に帰ることを忘れて更に前に進み始めました。

 今度は歩いてすぐのところに遊園地があったのです。


「「わ〜い。遊ぶところがいっぱいだ!!」」


 空の上を駆けるジェットコースター、果物の形をした観覧車、様々な動物の形をしたメリーゴーランドと少し変わった遊園地でしたが、2人は思いっきり体を動かしてたくさん楽しんだのでした。


 2人はまたまた家に帰ることを忘れて、更に楽しいところがあるのではないかと思い、更に前に進むことにしました。


 少し進むと次に現れたのは多くのヌイグルミがありました。

 そこには、ゾウさんもいればネコさんやイヌさんと多くの種類の動物がいます。

 また、例えば普通のゾウさんは水色ですが、ここでは緑色のゾウさんや赤色のゾウさんと変わった色のヌイグルミも多くあり、2人の興味をそそりました。

 そんな中で2人が1番惹かれたのが、ピンク色のウサギさんのヌイグルミ。

 しかし、そのヌイグルミは、1つしかありませんでした。


「これはアンのだよ」

「ちがうよ、先にサナが見つけたもん」

「アンの」

「サナの」

「アンのだもん!!」

「サナのだってば!!」

「「もう知らない」」


 あらあらあら。

 なんと、2人はこんなところでケンカをしてしまいました。

 普段の2人ならこんなところではケンカすることはないでしょう。

 なのに、何故かここではケンカをしてしまったのです。

 そして、2人はあっという間に離れてしまい、1人ぼっちになってしまいました。

 

 1人ぼっちになったアンちゃんは右の方向に進むと、遠くから不気味な声が聞こえてきました。

 そのため、アンちゃんは元の場所に戻ろうか迷った時に、何と大きなカイブツが現れたのです。

 アンちゃんは驚いて、カイブツから逃げるために急いで逃げました。

 アンちゃんは、足がもつれそうになりながらも懸命に走ります。


 一方、サナちゃんはピンクのウサギさんのヌイグルミを抱えて、左の方向に進むと、近くから不気味な声が聞こえてきました。

 そのため、サナちゃんは元の場所に戻ろうか迷った時に、なんとウサギさんのヌイグルミが急に動き始めて、サナちゃんを襲おうとしたのです。

 サナちゃんは驚いて、ウサギさんのヌイグルミから逃げるために急いで逃げました。

 サナちゃんは、足がもつれそうになりながらも懸命に走り出します。

 

 2人が懸命に走っていると、アンちゃんとサナちゃんは再び再会しました。

 しかし、2人は再会する喜びを感じる間もなく、右からはカイブツが、左からは凶暴化したウサギさんのヌイグルミが徐々に迫ってきました。

 

「「家に帰りたいよ〜」」



 2人は思いっきり泣いて叫びます。

 しかし、カイブツもウサギさんのヌイグルミも近づいてくる一方。

 2人はただ泣くことしか出来ません。


「お母さん、勝手にオルゴールのネジを回してごめんなさい〜」

「アンちゃんのお母さん、ごめんなさい〜」

「「おねがい、だれかたすけて!!」」


 そんな時です。

 2人のところになんと小さな妖精さんが現れました。


「来た道を戻って。そうすれば帰ることが出来るわ。急いで!!」


 2人はその妖精さんの言葉を信じて、ただ今まで来た道を戻ることにしました。

 ただでさえ疲れているのに、それを気にする間もなく2人は妖精さんに付いて懸命に逃げます。

 途中で挫けそうになりましたが、2人が声を掛け合ってようやく元の場所に戻ることが出来たのでした。


「ここはね、子ども達にとっては危険な場所なの。だから今はまだ来ちゃダメ。これからは気をつけるのよ」

「「はい!!」」


 2人は体が浮くと目を瞑りました。

 そして、足が地面に着いて目を開けると、アンちゃんの家にいたのです。

 2人は帰ってくることが出来たのだと、お互いに抱きしめて喜びました。

 

「あぁ、2人が無事に帰ってきてくれて良かった〜」


 出迎えてくれたのは、アンちゃんのお母さん。

 涙を流して、2人をそっと抱きしめたのでした。

 

 その後、2人は絶対にこのオルゴールのネジを回してはいけないと強く言われました。

 その言葉に2人は強く返事をします。


 それから2人は大人になるまではあのオルゴール回すことなく、ずっと仲良しの友達でいることになります。


 おしまい


 ◇◇◇◇◇


<補足>

 実はあのオルゴール、大人にとっては癒しの時間を過ごすことが出来る素晴らしいオルゴール。

 しかし、子どもがオルゴールの世界に入ると、様々な誘惑に駆られてしまい、一生抜け出せなくなる時がある恐ろしいオルゴールでもあるのです。

 もしかしたら、どうしても回したくなるほど美しいオルゴールにはそんな魔法もあるのかもしれません。

 お子様がいる場合は、ご注意くださいね。


 

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― 新着の感想 ―
Alice in wonderland. をちょっと思い出しました。ワクワクするようなちょっと怖いような。小さい頃はそんな冒険に憧れるのかもですね(*^^*)
2025/01/23 13:39 退会済み
管理
このオルゴールを使って夢の国で遊ぶと、 使用料がお母様の口座から引き落とされます……というオチを想像してしまいました。(^_^;)
数日前に読了していましたが感想が本日になりました<(_ _)> なるほど、オルゴールを魔性の魅力のように扱って本作を作ったんですね! 確かになんか魅力的ですよね。 「やってはいけませんよ」と言われると…
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