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退場

 バカ王子とポンコツ令嬢が婚約破棄の誓約書を嬉しそうに見ている。私からもお礼を言わなくては。

「殿下。婚約破棄したのですから、コーテ貿易商への花婿修行は不要です。」

このバカ王子を我が家の商会で面倒を見る必要性が無くなったのは本当に喜ばしい事だ。王家であることにあぐらをかいてまともに勉強もしない。多国語をまともに扱うこともできない。父のお付きとして、住み込みで一から叩き込む予定だったがバカすぎて不安しかなかった。

バカ王子の目が点になって、すっとんきょうな事を言い出す。

「婚約破棄と就職は別の話だろ?」

「契約書に婚約者である事が条件と明記されています。後でご確認ください。」

「まぁ構わない。私は優秀だからな。どうとでもなる。」

そう言い放つと軽く数回手を叩いて声を張り上げた。

「中断させて済まなかった。私はクレイア男爵令嬢と結婚する!さぁ、今宵を楽しもう!」

それを合図にまた音楽を奏で始める。このバカは事の重大性にまだ気づいていないようだ。軽く会釈してホールを去る。明日が楽しみでしかない。

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