全ての始まりと終わり
卒業パーティーも終盤。卒業生でもない私が今夜列席させられたのは、婚約者である第三バカ王子のクラウド殿下とダンスをするためだ。そのため在校生や部外者用のブースがある。しかし保護者は参加できず、子供でいる最後の時間を楽しむ場所であり、成人式のようなものである。
ダンスの開始を知らせる音楽が鳴り響き、それぞれのパートナーの元に歩み寄る。ダンスホールの中央には腐っても第三王子が居るため、皆が気を使ってそれぞれホールの端の方に陣取る。
そんな中バカ王子はクレイア男爵令嬢を小脇に抱きかかえ、取り巻きのアホ共が数人待ち構えていた。
バカ王子が手を挙げ大きな声で叫ぶ。
「今宵は皆、卒業おめでとう。だがこの喜ばしい席に不釣り合いな人物がいる!」
突然の大声と不穏なセリフに音楽がピタリと止む。そしてバカ王子はニヤニヤしながら私を指さした。
「それはアイリスきさまだ!今日この場で、私はきさまに婚約破棄を宣言する!」
ドヤ顔のバカ王子はそっとクレイア男爵令嬢を抱きしめ、なぜか男爵令嬢は嘘泣きをしながら王子に顔を埋める。取り巻きのアホ共の拍手だけが無駄にホール響きわたった。
あまりの事に頭が真っ白になる。それは怒りではなく…喜び!ニヤケそうになるのを必死に我慢しながら、なるべく無表情で聞き返す。
「婚約破棄は王家の意向と捉えてよろしいのでしょうか?」
「当たり前だ!きさまには心当たりしか無いだろう?」
バカ王子が勝ち誇った顔で言い放った。失言頂きました。
「承りました。では私はこれで失礼いたします。」
私は、軽く会釈し不要な問答は無視して帰ろうとしたら、
「まだ話は終わってないぞ!アイリスを捕まえろ!」
バカ王子が取り巻きに命じ、アホ共が無礼にも私の腕を掴んできた。
「いたたたぁぁ…。」
アホからうめき声が聞こえたが、そのまま床になぎ倒す。護身術で東洋の合気道を習っている私に力ずくなんて効きませんことよ。