バカ王子の末路
公爵家に行ってみたものの、特に何の成果も得られなかった。
王城に入ろうとした時だ。門番に止められた。
「すみません。国王陛下から第三王子はこのまま城に入れるなとの事です。」
「何だと!?荷物などまだ何もまとめてないぞ。」
城門の内側から私の執事が大きめのトランクを二つ持ってやってきた。
「殿下の代わりに荷物はまとめておきました。トランクの中に男爵令嬢との手紙と、餞別にわずかばかりのお金が入っています。どうかお元気で。」
こいつ今までに見たこと無いくらいの笑顔でトランクを押し付けてきた。
「ま、待て。そんなの父上が許すわけがない!ここを通せ!」
「国王陛下のご命令なんで。」
門番が馬車の扉を無理やり閉め、外から施錠された。本来なら内側からも開けられるが、気が動転していてそんな事も忘れて、扉を強く叩くがびくともしない。
「待ってくれ、父上にちゃんと話を…」
執事が御者に地図と賃金を渡すと、馬車は動き出した。どんどん城が遠ざかっていく。いったい何でこんなことに。
馬車はやがてさびれた村の家の前で停まった。家の中から見知った顔が出てきた…。
「何で師匠がこんなとこに⁉」
以前に剣術の稽古を付けてくれていた人だ。飲み込みが悪いだの、姿勢がなってない、基礎がまるでなってないなどと言ってやたら叩いてくるクソじじいだ。
「今日からお前の面倒をみてやることになった。ここじゃ働かざる者食うべからずだから覚悟しろよ。」
じじいがにたぁっと笑った。絶対、私が稽古をサボり過ぎてクビになったことを恨んでいる。絶対にこんな所で暮らすのなんてごめんだ!
実際は老齢により騎士団長を辞任。国王陛下からたんまりいただいた退職金で王都で何不自由の無い暮らしをしていた。そこにバカ王子のお守りの依頼がきたので、憧れの田舎暮らしを条件に引き取ったのだ。
この団長、ハッキリ言ってやばい。剣術もさることながら、山菜や薬草の知識もピカイチ。素手で熊を仕留められる変態である。
そんな変態に鍛え上げられ、バカ王子が仙人と呼ばれるようになったのはまた別のお話で。
ブックマーク、イイね、誤字のご指摘ありがとうございました!
ご要望があれば、ポンコツ腹黒令嬢の末路も書きます。
ご愛読頂きありがとうございましたm(_ _)m




