バカ王子の視点
私は第三王子だ。何不自由の無い暮らし。何でも思い通りになり、優秀な兄達のおかげで、煩わしい王位とも無縁だと周囲からも言われていた。ただただ好きなことだけしていれば良い生活は心地よかった。
9歳の時に王立学園中等部に入学した。またこの年にコーステリア公爵令嬢との結婚が決まった。彼女は愛らしかったがお人形のようだった。礼儀正しく、所作は大人と全く同じ。人間味に欠け一緒に居て楽しいと感じたことは一度も無かった。
12歳の時に高等部から途中入学してきたクレイア男爵令嬢と知り合った。彼女との時間は本当に楽しかった。全てが輝いて見えた。そんな彼女が時折悲しそうな顔をする。その原因は我が婚約者だと言うではないか。そんなの許せるはずが無い。
15歳の卒業パーティーで私はクレイア男爵令嬢の手を取り、コーステリア公爵令嬢を糾弾する事にした。そして新たに男爵令嬢と手を取り合って幸せな生活を送るはずだった。
実際はパーティーで婚約破棄を勝ち取ったものの、周囲の反応は予想と反しているものだった。急に皆が私を避けるようになったのだ。パーティーでそれとなく就職できないか聞いてみたが皆一様に、
「王子様に恐れ多くて頼める仕事がありません。」
と言うのだ。いつも一緒にいる面々に聞いても、自分達は身分が低いから雇う立場じゃない。と言われてしまった。パーティーに居るのは御子息やご令嬢、権限が無いだけかもしれない。
パーティーが終わり、男爵令嬢と明後日会う約束をした。本当ならば翌日にでも会いたいが、私は王族だから婚姻するのにもやる事が沢山ある。全部終わらせてからちゃんと求婚しよう。




