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FAREWELL、SCARFACE

青いガウンをタケシから受け取り、ガウンを着ながら、俺はリング上から、降りてコーベットを追いかける。

いや、正確にはコーベットと共に追いかけている、ロジャー・セラノを追いかけているんだ。

会場内を走っていると、複数のピエロの仮面を着けた奴が、ナイフを持って俺を追いかけてくるではないか。

ロジャーの指示だろうが…このまま、振り切ってロジャーを捕まえようと走ってると、ピエロが向かい側に先回りしてくる。


数にしたら、10人はいるな…


くそ…こんな所で足止め食ってる場合じゃないのに…


だが、そのピエロを華麗なステップを踏みながら、拳一つで倒していく、男がいた。

ナイフを躱し、足払いで転がしながら、次と次と現れるピエロをいなして、強烈なパンチで倒してる…この男は!


「ネルソン! 何であんたが!?」


ミドル級1位にして、以前、道場破りを敢行した俺を返り討ちにしたこの男が何で、俺を助けるようなマネをするんだ。


「よお、スカーフェイス、試合おめでとう! 何か厄介な事になってるな」


「何で助けてくれた」


「野暮だなぁ、俺は目の前にいる未来の挑戦者を潰されたら、ボクサーとしての品格が問われるだろう…それに!」


後ろから襲ってきた、ピエロを強烈な蹴りで返り討ちにした…強え…


「1人を多勢に無勢で袋叩きなんて、ダッセェだろ、なあ、王者チャンピオン


ネルソンが親指で指した先には、ジェームス・ロビンソンがいた!


「見事な試合だった、おめでとう、スカーフェイス君、何やら不届き者がいるようだな、そこにいる、ネルソンと俺が手を貸してやろう、急いでいるんだろう…早く行くといい」


思わぬ援護に、「ありがとう、2人共! 何時か挑戦するからな!」


俺は2人に言い、ダッシュでコーベットがいる方へ向かった。



※※※




「ダニエル警部! ロジャーの奴、様子がおかしいですよ」


先程、受け取った無線で連絡を取り、俺は赤いガウンを着ながら、身内の警官隊がロジャー・セラノを追い込んだ現場に赴くと、ロジャー・セラノは、手に何か持っている。


「じゃ~ん、これは何でしょうか? 」


ロジャーが手に持っている物は…何かのスイッチのようだ。


「貴様、この期に及んで往生際が悪いぞ、さっさと捕まって、デーモスクラトスの監獄へ送り返してやる」


「そ・れ・は…無理〜な〜話しでーす」


「何が、無理だ!こうして俺達に囲まれて、逃げ場など、ないぞ!」


俺の言葉に不敵に笑うロジャーは、説明した。


「この、スイッチはこの会場に仕掛けられた、爆弾を起爆する物でーす!」


アーロン・ウィプマンの時と同じか…、あの時は拳銃があったが…今回は…くそ!あと一歩って所で、こいつを見逃さないといけないのか。


「見つけた!!」


後ろを振り返ると、スカーフェイスがいた。青いガウンにグローブを着けたまま、こちらを追いかけて来たようだ。


※※※


「よお、ロジャー…会いたかったぜ、テメェが自由に悪事を働いてる内は、どんな気持ちでいたか…テメェには分かるまい、ここでテメェとの因縁を終わらしてやる!」


コーベットの仲間の警官達が、取り囲んでるロジャーに俺は、今、飛びかかろうとした所、コーベットに静止させられる。


「何だ!コーベット!止めるな!!」


「落ち着け、馬鹿者! 奴が持っている物…あれは、アーロン・ウィプマンが持っていた物と同じやつだ」


「ちっ、そういうことか…」


会場に爆弾を付けてるんだな…それも、恐らく、このアイデアル・スタジアム中に…厄介な事ばかりやるな、この男は。


「さあ、君達は、私をどうにも出来ずに、道を開けるんだ! 悔しいか?悔しいだろう!ハハハ!!出ないとスイッチを押して…BOOOOOM!!」


「コーベット! あんたの仲間の警官に急いで、会場のアナウンスに行ってもらって、避難勧告をしてもらうんだ!」


「何だと、貴様、どうするつもりだ!」


「どうもこうもねぇ、奴と運命を共にしてやるのさ」


「馬鹿野郎!!出来るか!そんな事!」


「いいから!!避難勧告だけでも行ってもらうんだ!」


コーベットは、警官の1人に会場のアナウンス室に行ってもらった。


「さあ、道を退けるんだ、私の栄光たる未来に、君たちは、邪魔は出来ない!」


ロジャーが警官達と睨み合いしてる最中、俺は、コーベットにグローブを外してもらった。


『会場のお客様にお知らせです!!当会場に爆発物が仕掛けられてるとの事です!お客様は慌てず、迅速に避難をしてください!』


おっ、早速、アナウンスが入ったな…さあて、やりますか!!!!


「今更、避難勧告した所で、どうする? 私がこのスイッチを押せば…犠牲者が出るんだぞ!」


「それは…テメェも同じだろ…ここでスイッチ押して、瓦礫の山に埋もれるのは、テメェの今までの行動からして、ありえねぇ…」


睨み合いは続いた、10分、20分、30分…幸いにして、このフロアを通って避難してくる客は、いなかった。

きっと、警官の誰かが誘導してるのだろう。


「ダニエル警部、観客は全員、避難出来たそうです」


「そうか、トイレとかも確認はしたのか?」


「はい、問題なしです」


「スカーフェイス、馬鹿な事は考えるな、いくら奴が外道で憎いからって、心中みたいな真似はするな」


「コーベット、あんた…優しいんだな…」


「なっ!?こんな時に何を言うか!」


「あばよ、ダニエル・J・コーベット警部」


俺は、ロジャーに飛びかかった。


「ぐはぁ!! ガーベラ…貴方は私がスイッチを持っている事を…」


「ああ、知っているさ、だからさ…押してしまえ!!」


俺は、ロジャーが持っているスイッチに手をかける。


「あっ…」


会場に仕掛けられた爆弾が爆発し始めたようだ、その様子にロジャーは


「死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくない、死にたくないよーーー!!!!!!!」


悪のカリスマが形無しだな、いい気味だ、俺に取り押さえられ、慌てふためく様は、奴の本来の姿だろう、小心者が今まで気取って、弱者や負い目を持った者、今まで差別主義を掲げ、少数の民族を弾圧してきたツケが、今、やって来たようだ。


「馬鹿野郎ーーーーー!!!!本当にソイツと死ぬ気なのかーーー!!そいつは法の裁きによって…裁かれないと我々の立場はどうなる!!!」


「コーベット…利用したようで悪いな! みんなには宜しく頼む」


「ダニエル警部!!我々も避難せねば瓦礫に生き埋めです!!」


「くっそーー、くっそー、今からでも遅くない、今すぐに避難を!ぐはぁ!!」


俺は近づいてきたコーベットの鳩尾に思いきり打ち込み気絶させた。

素手だから、いつもより威力はあっただろう。


「離せーーー離せ!!こんな所で死ぬのは嫌だーーー、うわあああん、お母さん!助けて!!!」


片手で首元をホールドし、押さえつけるも、死に際になると、結構、力あるもんだな…まっ、俺に比べたら些細な力だが…


「スカーフェイスさん、ダニエル警部の言う通り、貴方も、その男も避難するべきだ」


「それは、確実にこのロジャーを監獄に…法の裁きを受けさせる事が出来ればな…さあ、あんたこそ、コーベットを連れて避難しな、時間がないぜ」


その警官も悔しそうに、倒れてるコーベットを肩に手を回し、その場を離れて行った。

さあ、この会場に残ったのは、俺とロジャーのみだな。

相変わらず、泣き叫び、今までの横着ぶりが嘘のようだ。

会場は崩れ、落下物も出てきた。



俺は…走馬灯のように今までの事を思い出して…ダマトのおっさん、亡くなったラリー、マーク、今となっては叶えそうにないが…何時か挑戦してやると言って置いた、ネルソン、ロビンソンの両ボクサー…残念だ。


サミエル、ローラ夫人、ラファエル君、いい家族だったな…練習仲間のマックス、リカルド…すまねぇな、今度、練習付き合うと言ったのに…ビクター、アイツ強かったなぁ、こんな所で終わられければ、また再戦もあったかも…マイク・ジョーンズ、あの爺さん、変に野心を持っていなければ、いいんだけどな…

ユースティティア壊滅に手を貸してくれた、ジャンさん、ロバート議員、ガッティ、マイケル検事…壮健に…あとタケシ、今までマネージャーとして、サポート…本当に助かった、感謝してる。


アザレア、ベゴニア、お兄ちゃんさ、あまり兄らしい事してやれなくてごめんなさい…


そして…アムール、ありがとう。


壊れる瓦礫がこちらにも、降ってきたようだ、だが、これを選んだのは自分だ。


降り注ぐ、瓦礫の数々が会場を壊していく、そして、俺達も会場の爆発の中に消えていった。



       試合結果

――――――ミドル級8回戦――――――

勝者

9戦8勝7KO1敗

スカーフェイス(生死不明)


敗者

10戦9勝7KO1敗

ダニエル・J・コーベット



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