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スカーフェイス対ダニエル・J・コーベット2

第4ラウンドが始まった。

スカーフェイスは、ガードを下げ、攻撃的なスタイルでコーベット警部に向かいながら、ワン・ツーを打ち、コーベット警部は、ワン・ツーのジャブを食らいながら、左フックを打ち返し、スカーフェイスは少し怯みながらも、インファイトにもつれ、左ボディ、右アッパーとコーベット警部に当てていくも、クリンチ状態になり、互いにボディを攻めている。

レフェリーがクリンチを解かせ、再び、向かい合う2人は、接近し、積極的に打ち合いを始めた。

再び、会場は沸き立ち、その会場の熱気に押され、互いのパンチが当たるか、当たらないか…リングを移動しながら、ギリギリの攻防戦をしている。

この展開は、ジャッジ泣かせだろう…どちらか、優勢にスコアをつけるか迷う所だ。

そして、第4ラウンド終了のゴングが鳴り、インターバルに入った。


※※※


―――――ダニエル・J・コーベット陣営


「ハアハア…」


「ダニエル! 大分消耗しているなぁ…アウトボクシングに切り替えたらどうだ?」


腫れた瞼にエンスウェルをあてがい、腫れを抑えるトレーナーがそういうと、俺は首を横に振る。


「スカーフェイスとは、このままでいい、奴も俺との勝負で消耗している」


「あまり、無理をするなよ…口を開けな、水分を摂れ」


口を開けて、ボトルから水を口に含み、水分を摂る。


「ダニエル、あくまでも…このままでゆくんだな」


「ああ、スカーフェイスと決着つけるまでな」


※※※


「スカーフェイス、コーベット警部とはこのまま打ち合うのか、消耗が激しそうだけど」


「ああ、勿論だ、まだまだやるぜ」


「そうか…」


俺はタオルで汗を拭きながら、氷嚢で火照った体を冷ましながら、スカーフェイスに聞いて、彼の意思を尊重した。

ヤンさんもブレンダンさんも同様だ。


「いいか、お前がやりたいようにやれ、そして…勝つんじゃ、ボクシングは最後に明暗を分けるのは気持ちだ」


「ああ、コーベットに勝つ、勝ってみせる」


インターバルが終了し、第5ラウンドに突入しようとしていた。

以前はこのラウンドでコーベット警部に負けたんだよな、気持ち的にもプレッシャーがあるだろう…頑張れ! スカーフェイス!勝つんだ!!

そして…第5ラウンドのゴングが鳴った。


サウスポーに切り替えたスカーフェイス、右リードジャブで、コーベット警部を突き放そうと、サークリングしながら、打ち込んでいく。

コーベット警部は、右ストレートでスカーフェイスのボディを狙い打ち、ペースを掴ませないようにしている。

スカーフェイスに近づいた、コーベット警部は右リードをダッキングしながら躱しながら、左アッパーを飛び跳ねながら、打ち込んで来た。

さながら、決死の一発だ、だが、スカーフェイスもそれをスウェーで後方半歩にズラし、躱し、そこから右へ移動しながら、相手の右ボディへ拳を叩きこんだ。

だが、それを読んでいたのか、コーベット警部もギリギリの所でスウェーバックし、躱し距離をとった。

それからも、お互いが持てる全てを使い、打撃戦となり、会場の客も満足そうに歓声を上げながら、『コーベット!』『スカーフェイス!』『コーベット!』『スカーフェイス!』とどちらも名前を挙げながら、歓声が沸き上がる。


どちらも一進一退の攻防を続け、ジャッジ泣かせのラウンドとなった。

そして、第5ラウンドは終了した。

インターバルに突入し、こちらはメディカルトレーナーのヤンさんが、スカーフェイスの傷跡の止血を続けてやっている。

トレーナーのブレンダンさんは、水の入ったボトルを飲ませながら、「スカーフェイス、前回よりは良かったな、聞けば以前は5ラウンドで勝負はついたそうじゃないか!」


「ああ、だが、コーベットの奴も相当だぜ、強い、奴もまた強くなってる」


「そんな、お前もそれと渡り合ってるんだ、頑張れ! ここからが正念場だ!」


スカーフェイスの顔を両手で包み、顔を向かいあって、ブレンダンさんはそう言った。


「ああ、そうだな…やってやりますよ!」


「その意気だ!」


もう5度目のインターバルが終わり、次は第6ラウンドに入っていく。

俺達、セコンドも早々とリングから降りて、次を見守る。


―――――――カーン!!


第6ラウンドの鐘が鳴り響いた。

サウスポーからオードソックスに戻した、スカーフェイスは、左リードでペースを掴もうとする。

コーベット警部も左リードジャブで、主導権を握ろうと、互いに一歩も引かない。

スカーフェイスが左ジャブから、右ストレートを放ち、それをパーリングとダッキングで躱すコーベット警部はロープ際に追い詰めれていた。

それを見逃さずに、ロープにもたれかかるコーベット警部をスカーフェイスは攻める。

左ジャブ、右フックボディ、左フックボディ、両手を合わせ、ガチガチにガードを固めたコーベット警部にスカーフェイスは容赦なく攻める。

『スカーフェイス!』『スカーフェイス!』『スカーフェイス!』『コーベット!』『コーベット!』『コーベット!』観客達も応援している選手が攻める側、守る側になり、コーベット警部を応援しているファンからは、悲鳴に近い声が聞こえる。


だが、コーベット警部もやられてばかりではない、スカーフェイスの打ち込んでくる、ほんの僅かな隙を見て、ロープ際から脱出し、距離を取りながら、右ストレートをボディにめがけて打ち込んでくる。

それをスウェーバックで躱し、スカーフェ イスとコーベット警部はリング中央に寄り、壮絶な打ち合いを演じる。

短くとも、長く感じる打撃戦を制するのは、スカーフェイスだった。

ダウンこそ、奪えなかったが! コーベット警部に強烈なワン・ツーを叩きこみ、クリンチになる。

その状態でも、互いにボディへ打ち合って様は、さながら修羅と修羅が互いを削りあってるようだった。

そのクリンチをレフェリーが割ってはいり、解かせ、睨みあいになり、互いに攻め手にあぐねると、ゴングが鳴り第6ラウンドは終了した。

インターバルに入ると、ブレンダンさんは喜びを隠しながら「スカーフェイス、今のラウンドは良かったぞ、ペースはお前にある!」と水を飲ませながら、言った。


「どうだろう、コーベットの奴も大分、消耗している筈なんだけどなぁ…決め手に欠ける」


スカーフェイスの止血をしているヤンさんは、「大丈夫です、貴方なら勝てますよ」と檄を飛ばす。

ボクシングは蓋を開かないと、分からない事が多い、互角だと思っていたら、一方的だったり、格下だと思っていたら、まさかの格下が勝ったりと、この試合もどうなるやら…、


だけど!


「勝てるよ!スカーフェイス!もう少しだ!お前のやりたいようにやれ!」


「タケシ…いいぜ、勝利を信じてくれ!」


短いインターバルも終わり、いよいよ、あと2ラウンドとなった。

セコンドは、さっさと降りる。

どちらに勝利の女神が微笑むのか…それは、分からないけれど、俺は、勿論、サミエルさん、ローラ夫人、ラファエル君、リカルド、そして、アザレアちゃん、ベゴニア君、ミーノットさん、みんながお前の勝利を信じてる、あとはやりきれ!!スカーフェイス!


第7ラウンドの鐘が鳴った。

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