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スカーフェイス対ダニエル・J・コーベット

ゴングが鳴ると、スカーフェイスはガードを上げタートルシェルの構えから、近づきジャブを繰り出し、コーベット警部は、左を下げたデトロイトスタイルで、スカーフェイスのジャブを躱しながら、自身も隙を見て、スカーフェイスのガードの隙間をこじ開けるように、左アッパーや右フックを繰り出していく。


序盤だからか、立ち上がりは静かで、どっちも積極的には、打ち合わずにいた。

コーベット警部が、サークリングしながら左ジャブ、右フックとかましていく。

スカーフェイスも、コーベット警部の攻勢に流されずに、近づき、左アッパー、右フック、左ボディと打ち込む。

この後も派手な試合展開には、ならず第1ラウンドは終了した。

互いに、自陣営に戻り、セコンドのケアを受ける。

スカーフェイスは元々の左の傷跡から出血し、それをメディカルトレーナーのヤンさんがワセリンと綿棒で止血をして、俺は、タオルで汗を拭いたり、トレーナーのブレンダンさんに水の入ったボトルを手渡し、補助に回る。


「スカーフェイス、もっと攻めてもいいぞ、前回のように、様子見はポイントを相手側に渡すだけだ」


「分かってる、コーベットの奴も積極的じゃないから、こっちもそのペースに乗せられたのさ、大丈夫、ここから、巻き返すさ」


ブレンダンさんがスカーフェイスに水を飲ませながら、アドバイスをする。


「いいか、相手はデトロイトスタイルで、来ている、左のガードが下がってる分、狙いやすい、主導権を握るんだ!」


「ああ、分かってる」


インターバルも終わり、第2ラウンドが始まろうとしていた。


「スカーフェイス、頑張れ!」


「ああ、タケシ、やってやるさ」


セコンドはリングから降り、第2ラウンドのゴングが鳴る。

先程と、同じようにガードを額にまで上げたタートルシェルの構えで、スカーフェイスはコーベット警部に近づき、ロープ際まで追い込み、左ボディ、右ボディへと繋ぎ、左アッパーのコンビネーションを見せる。

コーベット警部も、ロープ際から避け、スカーフェイスのガードの上からワン・ツーを当て、右ボディへと繋ぐ。

スカーフェイスはガードを少し下げ、近づき、スイッチし、右ジャブから、左ストレートを出し、それを距離を取らず、パーリングで右ジャブを落とし、左ストレートをダッキングしながら、左フックを振ってくる。

その直撃を間一髪、ガードを上げて防御に成功するが、その一発はグローブ越しに衝撃…ダメージが入ってそうだ。


第2ラウンドも大きな展開にならず、インターバルに入る。

汗を拭きながら、氷嚢を身体に当てていく、俺だが、スカーフェイスは何処か余裕の表情を見せていた。

ヤンさんがワセリンと綿棒を傷跡に当てて、血をなるべく流れないようにする。

ボトルの水を飲みながら、ブレンダンさんは

「スカーフェイス、相手はお前のガードの隙間から着実に当てて来てるぞ、大丈夫か?」


「大丈夫! 今日はこれでも調子がいい、コーベットの奴も積極的になってるのは、良いことだ、次、魅せてやるぜ」


セコンドの治療を受け、次、第3ラウンドが始まる。

セコンドは早々とリングを降り、ゴングが鳴る、スカーフェイス、コーベット警部がリング中央で、互いにジャブを出しながら、打ち合っていく。

そのまま、移動しながら、スカーフェイスがロープ際に追い詰められていき、ガードの上から猛攻を受ける!!

その猛攻に会場は沸き、観客達が立ち上がり、『コーベット!』『コーベット!』『コーベット!』っとコーベットコールが起こる、だが、スカーフェイスもただ、攻撃を受けてただけではないようだ。

ロープ際から右方向に、体を入れ替え、逆にコーベット警部をロープ際に追い詰め…左、右ストレートを両手合わせてガードしたコーベット警部の右レバーにスカーフェイスの左ボディフックが決まった!!


それに、思わずダウンするコーベット警部、悔しそうに地面を両手で叩き、立ち上がる。

会場もスカーフェイスの逆襲に興奮し、『スカーフェイス!』『スカーフェイス!』『スカーフェイス!』とスカーフェイスコールが起こる。

立ち上がったコーベットにレフェリーが10カウントを取るが、コーベット警部はレフェリーにグローブ両手を合わせ、試合続行の意思を見せた。

レフェリーの判断により、試合は続行、スカーフェイスが襲いかかる、だが、コーベット警部も負けてなるものかと、ばかりに、スカーフェイスと打ち合う。

その様子に、会場は更に沸き、2人のボクサーの戦いの行方を観客達は見守った。

スカーフェイスの傷跡にコーベット警部の左ジャブが当たり、鮮血が舞う。

すかさず、スカーフェイスもスイッチし、右ジャブから左ストレートを当てにいき、右ジャブは躱したが、右ジャブの時に更に踏み込んだ、左ストレートがコーベット警部に直撃する。

ダウンこそしなかったが、クリンチになりダメージを抜けるのを待っているようだ。

レフェリーがクリンチを解かせ、試合を続行させようとした所で、第3ラウンドの終了のゴングが鳴る。


※※※


―――――ダニエル・J・コーベット陣営


「大丈夫か、ダニエル…」


「ああ、心配はない」


第3ラウンドにスカーフェイスが放った…あの左ボディが効いたなぁ…以前、戦ったときより、確実に強くなっている。


「ダニエル、落ち着いていけ、あちらのペースに乗るな!」


「分かってる、だが、打ち合いも…フフッ…悪くない」


セコンドが氷水に浸したエンスウェルを腫れた左瞼にあてがい、腫れを抑えていく。

セコンドが口まで運んだボトルの水を口に含み、水分を摂る。


「ダニエル、お前…楽しんでるな…」


「ああ、スカーフェイス、大した男だよ、見ろ、会場も盛り上がってる…」


「ダニエル、あくまでも、ペースはこっちが握るんだ、分かってるな!」


「すまん、俺は、あの男と勝負の醍醐味を味わいたくなった」


「ダニエル…」


セコンドはそれ以上、言わなかった…そして、第4ラウンドのゴングが鳴ろうとしている。


「さあ、第4ラウンド、どうなるかね」


インターバルが終わり、セコンドはリングから降りる。

俺は、いつの間にかスカーフェイスとの勝負に俺が胸に秘めていたボクシングの本懐を遂げるのではないかと、この時、思い、そのまま第4ラウンドのゴングが鳴った。

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