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約束の晩餐

「美味しい!」


ベゴニアが肉汁滴るロース肉を頬張り、実に美味しそうに食べる。

焼き肉プレートの上で、ジュウジュウ焼かれる肉たちは、人間の持っている食欲を掻き立て、みんなで焼いていく。


「ママ、もう食べてもいいでしょ? ベゴニア君はもう食べてるよ」


「そうね、もう焼けたかしら、食べて大丈夫よ」


向かい側の席で、ラファエル君も焼けた肉に手を伸ばし、箸でつまみ口へと運び、柔らかくとろける肉に舌鼓を打っていた。


「さあさあ、皆さん、肉もいいですが…野菜も食べないとバランスが悪いですよ~」


タケシがそれぞれの焼き肉プレートにピーマンやトウモロコシ、スライスされた玉ねぎを置いて焼いていく。


「僕、ピーマン、嫌い」


「僕も嫌い、なんだか苦いもん」


ベゴニアとラファエル君が口々に、言うもんだから、アザレア、エルナンデス夫婦は困った表情で、「ピーマンはビタミンCやらビタミンEが豊富なのよ、食べないのは体に損だわ」

「そうよ、ベゴニア、食べなきゃ」とアザレアが諭しても、「嫌だ」と聞かない。

俺はそんな2人にピーマンに肉を挟んで食べて見せた。


「うん、美味しい!2人ともピーマンは単体では、美味しくないかも知れないが、肉と食べると、肉の油ぽっさを緩和してだな…とにかく美味しいからやってみ」


二人は焼かれたピーマンに肉を挟み一緒に躊躇いながら食べると、「美味しい!」と喜んでくれた。

「スカーフェイス、何だか悪いね、食育までさせて」

サミエルが申し訳なさそうに言うが、俺は「いや、俺がやらなかったら、サミエルがやってたでしょう、父親の立場を奪ったみたいで、こっちも悪かった」っとフォローする。

「ほら、皆さん、肉はまだありますよ、じゃんじゃん、焼いてかないと無くなりませんよ~」

タケシが、忙しく肉をプレートに乗せていく、そんなタケシを見て、俺は「タケシ…お前、食べてる?」と聞くと、「ああ、合間にこそっとな!」

いくら、マネージャーだからといって、ここまで世話を焼く…焼き肉だけに…とか、下らないジョークはいいとして、「お前ももっと、食えよ、ここは仕事じゃないんだぜ」

「そうだぞ、タケシ、いつもマネージャーで忙しく働いてるんだ、どれワシも焼き肉係に徹しようじゃないか」

ブレンダンが立ち上がり、肉をみんなのプレートに乗せていくと、リカルドとマックスが「ご老体にさせて貰うのも、あれだから…俺達は、飲み物を注ぐぜ! アルコールはないがな!」

2人で、皆の飲み物が少ないコップに、水かジュースを注いでいく。

「お前たちは座って食っておれ、食べるのも練習の内じゃ、スカーフェイスを見ろ、子供達に負けじと、肉を頬張っておるではないか」


俺の食べぷっりにみんなが、笑った。


「そうだぞ、俺は試合もあるからな!今、こうやって英気を養ってるんだ!」

リカルドとマックスはそれに口を揃えて、「「お前はいつも、そんな感じだろ」」って言うから、「まあな、ほら、そんな事言ってないで、食おうぜ、俺とベゴニアとラファエル君に全部食べられるぜ」

そう言うと、「それは!我々も食べ足りない、食うぞ」

2人は、ご飯を片手に焼き肉を頬張っていく。

「平和だな…」


サミエルがポツリと呟く、俺は「ああ、そうだな、試合の日も平和で熱狂的な日であって欲しいもんだが」


「難しいだろうな…」


「そうだろう…あのロジャー・セラノも中々しつこい男だな、君に余程、恨みがあるのだろうな」


「アイツは、怨み辛みで動く男じゃない、ただ支配欲とモラハラで動いてる最低な男だよ、残念ながら、そうした態度、振る舞いが支持されてる所だから始末に終えない」


「そうか…そうだな、対戦相手のコーベット警部は、ロジャー対策で警官隊を潜り混ませるんだろう?」


「ああ、こっちはマイク・ジョーンズに頼んで、警官隊と同数の数を当日、配備させるから出来る限りの事はやっておくさ」


俺は隣に座ってる、ベゴニアに首に着けているネックレスをベゴニアの首にかける。


「お兄ちゃん、これは…何?」


「これは、お守りみたいなもんだ、ある人から貰った物でな、これをお前に預けておく」


「そんな大事な物、僕に預けるの?」


「ああ、それは首にかけてる時間が長い持ち主に何か、あったら…ネックレスの宝石が砕けるのさ、万が一、俺に何かあったら、お前がお姉ちゃんを守るんだぞ!」


「僕、自信ないや、まだまだ弱いし」


「そんな事はない、それに弱くたっていい、その時、自分が出来る事をやったらいい」


「お兄ちゃん…それって難しいよ」


「そうだな、弱いまま人を守るのは難しいが、全く何も出来ない訳じゃない、あっちに…デーモスクラトスへ戻ったら、ダマトジムって所知っているか?」


「うん、知ってる、お姉ちゃんと一緒に行ったことある」


「そこにな、《《スカーフェイス》》ってロッカーがあるんだ、中には、箱があって、そこに魔銃マナ・ブリットてのがある、子供でも扱える銃だ、戻ったら、持っていけ」


魔銃マナ・ブリットは、普通の拳銃と違い、持ち主の生命力まなを吸収し、そのエネルギーを標的にぶつける代物だ、殺傷能力は拳銃よりなく、相手を気絶させるのに、重きをおいた銃だ、マイク・ジョーンズに貰った物だが、俺は使わずにロッカーに仕舞ったままだ。

それをこの子にやる事にした。

護身用には充分な代物だ。


「分かった、お兄ちゃんのロッカーから貰っていくね」


「ああ、貰ってくれ」


そして、ベゴニアは俺の顔を見つめて、「お兄ちゃん、試合勝って、無事に帰ってね、お姉ちゃんと待っているから」


「ああ、約束する」


「絶対だよ」


こうして弟と交わした約束…絶対に無事に戻る事は、2ヶ月後の試合に叶わないことは、この時、俺は考えもしなかった。

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