妹と弟2
縄跳び用のロープを手にアザレアにロープワークのコツを教える。
「ボクシングの構えと同じように、脇を締めて、手首を意識して、ロープを回すんだ、ジャンプは、なるべく小さくして跳ぶんだ」
「こうですか?」
アザレアは言う通りに、軽快にロープワークをこなす。
「上手いじゃない、そこから、片足で、右2回、左2回ってやってみ」
「分かりましたわ…」
それもそつもなくこなし、テンポも速くなっていく。
「おっ、いいじゃん!上手いね、アザレアちゃん」
見学しているタケシも誉める。
「はぁはぁ…結構キツイですわ」
「最初は、ゆっくりやったらいいよ、ベゴニア、お前にはフックを教えよう」
「うん!」
「いいか、構えてから、オーソドックス構えから、左フック!腕だけじゃなくて腰も連動させて、前足も内側に回すといい…俺の手のひらに当ててみな」
俺が手のひらを前にだし、ベゴニアは力強く打つ、いいね、その調子だ。
「フックはさっき教えたワン・ツーと組み合わせたり、右ストレート、左フックみたいに相手の意表を突くやり方もあるからな、あと打ち終わりのガードも忘れずに」
「うん、分かった!」
それから、2人には俺から夕方になるまで、教えた。
途中に、サミエルとリカルドが合流し、俺も試合が近いので、3人でジムワークをする事にした。
アザレアとベゴニアは、ジムに備え付けのシャワーを浴びて汗を流し、着替えてから俺達の練習の見学をするみたいだ。
練習科目のハンマートレーニングで限界まで肉体をいじめ、バトルロープも体が悲鳴を上げるまでやる。
「お兄ちゃん、頑張れ!」
「おう!」
それから、スパーリングも、して…時間は、夜中になっていた。
「あー、疲れた…」
「お兄ちゃんお疲れ、はい、タオル」
「ありがとう、ベゴニア!アザレア今から買い出しに行くが、行くか?」
「行きますわ、ベゴニアも…連れてもいいですか?」
「いいよ、一緒に行こうか!タケシ!運転頼む」
「分かった、えっと…駐車場で待っていてくれ」
「私達も行こうか?」
サミエルとリカルドが申し出るも、サミエルは、そろそろ家庭に帰る頃だし、付き合わせるのは、悪い、リカルドは練習で疲れてるだろうし…俺が返答に詰まってると、両者は「変に気遣わなくていいよ、私達も行こう」と同行をしてくれるみたいだ。
そこへ、ジムのガラス戸を開いて、マックスが現れた。
「今日、練習をサボって油売ってたからね、タケシ!サミエル!例の奴らの動向を探って来たぜ」
マックスが、言ってる奴らとは…まさか
「ガッティ記者とロジャー周辺の聞き込みをやっていたんだけど…相当だね、あれは、稀代の悪人だぜ」
「マックス!ロジャーに探りに行っていたのか!」
俺はマックスの危険な行動を批判しそうに、なるもマックスは「ほら、俺は白人だろ、ちょっと聞き込みをしたのさ」
「それで、何か分かったのか?」
「ああ、奴ら、人身売買やら、信者から多額の献金を巻き上げてる」
それにアザレアが反応し、「ごめんなさい、私にもっと力があれば、あの男の好きにはさせなかったのに…」と悲しいそうに言う。
だが、これもコーベットと話した内容とあまり差はない、目新しい情報はないな。
「それは…あまり関係ないと思うよ、アザレアさん、君に力があろうとなかろうと悪事を働くタイプだよ、あれは」
っとマックスが言う。
「それで…それだけじゃないんだろう、あいつらは、今度は何をしでかす気だ」とサミエルが聞くと
「ピエロって知ってるかい?」
「ピエロ…最近、巷を騒がせてる、暴力集団だね、殺人も厭わない…名前の由来はピエロの仮面つけたり、メイクをしているから、そう呼ばれているとか」
「そう、そのピエロが、スカーフェイス、お前を狙ってる」
「俺を?」
「ああ、何でも試合後を狙ってるらしいぜ」
「本当かよ、でも、マックス、関係者でもない、お前に喋るぐらいだ、連中の狙いはもっと別にあるんじゃないか」
「そうかも知れないね…ただスカーフェイス、予め、警察に伝えておいたから、『今度の試合にピエロという反社が来ます』ってね」
「そうか…コーベットとも話したが、デーモスクラトスからも警官を1000人送るって聞いたし、揉めないかな?」
「しないよりましさ、あとSMS 見てみな、ロジャーのアカウントをさ」
俺はYouPhoneから、奴のアカウントを見ると其処には、まあ、見るに堪えない投稿がされていた。
「悪いね、嫌なもの見せて、ロジャーは信者を連れてお前とコーベット警部の試合を観にいくつもりだ」
「大丈夫、それも計算の内だ、こちらも、さっき言った警官にプラス、マイク・ジョーンズに掛け合って1000人程、会場に潜り込ませるから…うーん…当日は荒れそうだな」
俺は、今になって不安になる、ターゲットが俺になるなら、いいものを、もし身内に危害が加えらるものなら…と思うと…。
「アザレア、ベゴニアを連れてデーモスクラトスへ戻れ、奴もそこではここほど自由に動けない筈だ、マイク・ジョーンズに護衛を頼んでおくから」
流石に、ここまでしておけば…手出しは出来ない筈だ。
そして、話しは一旦ここまでにして、買い出しにみんなで行った。




