弟
「アザレア…その子は? 」
翌日、アザレアは銀髪の男の子を連れて、ジムにやってきた。
その子は、サミエルの所のラファエル君と同じぐらいの年頃で、聞くと8歳だそうだ。
年とかどうでもよくて、その子は誰だいと、改めて聞くと、息子と答えた!
なんだってーー!?と俺が驚くと、冗談ですと返され、安心した? いや、安心というか、冗談にしても…たちが悪いぜ。
「この子は、ある富豪の子で、私が預かる事になったの…お兄様、暫く、匿うのを手伝ってくれませんか!」
「ある富豪の子って抽象的だな、教えられない何か事情があるのか」
「そうですわね…事情…というか…実は…弟なんですの」
「弟!? アザレアの弟という事は、俺の弟でもあるな!!」
銀髪の髪が、アザレアと同じだから…母親譲りなんだろう…確かマイク・ジョーンズによれば、そうだった筈だ。
「そうですの、私達の弟になりますわ、ですから…」
「なあ、アザレア、どうして今日はそんなによそよそしいんだ? 何かあったんじゃないか! 」
「それは…その、ロジャー・セラノですわ、彼にこの子の存在を隠していたものですから…万が一誘拐されて、酷いことでもされたらと思うと…お兄様でも中々、言い出しづらくって…」
なるほどな、ロジャーか…あの男なら、子供相手なら、奴隷として売るとか平気でやるだろう。
「ロジャー相手なら仕方ない、なあ…お前は名前は何て言うんだ? 」
少年はアザレアの後ろに隠れながら「ベゴニア」と答えた。
「ベゴニアか…いい名前じゃないか…どうだ、ボクシングやってみないか? 」
「ボクシング? それって怖くない? 」
ベゴニアが俺に怯えた様子で聞いて来るので、「怖くないよ、ああ…でも…相手とは殴りあうからなぁ…全く怖くないって言ったら嘘になるな」
「じゃあ、僕は…やりたい」
「あら…てっきり、やりたくないと思ったんだが…」
「僕…どうしても殴りたい相手がいるんだ」
「えっ…どうした、ベゴニア…そんな相手がいるのか? 」
ベゴニアは拳を突き出し、「うん、お母さんの仇を取るんだ…ロジャーって人に」
俺はアザレアの方を向き、そうなのかとアイコンタクトを送ると…「そうですわ…お母様はロジャー…正確には彼の刺客によって命を絶たれたのです」
「そうなのか…」
3人で、暗い雰囲気になっているところに「おーい」とタケシがやってくるではないか。
「あら、この子はもしかして…弟さんだったりする? 」
「正解、タケシこそ、どうした」
「ああ、スカーフェイス、お前に見せたい物が有ってな、ジャ〜ン!! 」




