教祖 ロジャー・セラノ
―――ズィクタトリア、某ホテルにて
私は、ロジャー・セラノ。
元ユースティティア幹部No.2にして、事実上トップにいた。
だが、あのガーベラ・バラベラ…スカーフェイスとアザレアの奴らが警察や検察、政治屋と結託して、私を監獄に入れたのは、中々の事でしたが…それも想定内よ。
この世に生まれたからには、ありとあらゆる快楽、娯楽、に手を染めないでどうする。
あの男…バルベラ様…今となっては、敬称を付ける意味もないが…今、私はあのバルベラをバラバラにしたいなんて思っている…監獄送りされた恨みより、彼が死ねば彼の周りの人間は悲しむだろう…是非見たい!!
正義ヅラしてたあの男が、死ぬ所をこの極悪人である私が嘲り笑う…最高のエンターテイメントじゃないか。
だが、この欲求はまだ心の内に、留めて置かねば…愉悦たるもの焦りは禁物だ。
電話が鳴る、手に取り受話器を耳に当てる。
「ロジャー様…ピエロの一人が、捕まったみたいです」
「そうか…残念だったな、例のコーベットとかいう警察官が捕まえたんだろうよ、それと、ピエロ達に伝えろ、”2ヶ月後に行われる、ボクシングの試合…スカーフェイス対ダニエル・J・コーベットで暴れろ"っと」
「それは!? スカーフェイスを暗殺するって事ですか? 」
「いや、殺しはするな、だが…スカーフェイスに暴行を与えろ! 観客には手を出すなよ、あくまでスカーフェイスのみだ」
そこで電話を切った。
YOUPhoneでSMSで、自分のアカウントを見る。
ロジャー・セラノ @Roger 1時間前
スカーフェイスって黒人、何かむかつくんだよね…みんなはこいつを暴行しても許すよな
コメント336 RT12000 ♡3505
【ロジャー様の言う通り、なんかムカつく】
【穢らわしい黒人なんて、見るに耐えません】
【エルフ、ハーフエルフ、獣人共みたいに、民族浄化をするべき】
フフ…あはは!スカーフェイスよ、これが現実よ、人は自分より下を見つけて優越感を感じる生き物よ、貴方は以前…
『てめえらの薄汚い事で弱者から死んでいくんだ、それを何とも思わないのか!!』
っと御高説たれたが、人間の本質は、自分の弱さをより弱い弱者に向けて、牙を向けるのが、本来あるべき姿なんだ。
貴方が志しているであろう、弱者救済なんて幻想に過ぎない。
理想論を振りかざす、貴方が試合後、ピエロに囲まれ暴行される所は、さぞかし、私の愉悦に貢献してくれるでしょうよ。
命までは、奪わないのは…己の無力さに苛まれる貴方が見たいから…命を取るのは…言うなればメインディッシュ…これは前菜と言ったとこでしょう。
フフフ…楽しみだな…
※※※
私は、今、首都アイデアルの隣のカドー州にある、私、ロジャー・セラノの新興宗教施設本部にいる。
本部に戻ると、『ロジャー様!!』っと信者が出迎えてくれた。
ここでの、教義とは…
1.白人こそ最も優れた人種であること
2.白人でなくても《《洗礼》》を受ければ名誉白人になれること
3.献金をあげる事によって、白人としての魂のランクが上がる。
4.献金を怠ると、魂のランクが下がるか、家族の魂にも同様のペナルティが起こる。
5.教祖であり、預言者であるロジャー・セラノが神の掲示を受け、その掲示を信者は信じなければいけない。
6.金銭的余裕の無い信者は、勧誘を積極的に行う事。
7.教祖であり、預言者であるロジャー・セラノの言葉は、神の言葉に等しい、例え、人の命を奪う事でも神が言ったのであれば、実行しなければいけない。
等、私が作ったロジャー教団は、いい金の掘り出し物になるに違いない。
「ロジャー様!!」
敬虔なる私の信者が跪き私に懇願してくる。
内容は…どうやら、白人ではあるが…先祖に黒人やエルフの血が混じっている事を私に打ち明ける。
「穢らわしい私にどうか《《洗礼》》を!」
そうか、そうか、それでは洗礼をしなければいけないなぁ…。
「それでは…洗礼を行う!礼拝堂まで来たまえ!」
「ハッハー、ロジャー様!」
※※※
礼拝堂に来た、私達は洗礼を行うべく、信者に用意させた鉄製で熱された烙印を持ってこさせた。
信者は上半身裸になり、今か今かと怯えながら、待っている。
――――そして、烙印を背中の肩に押し付ける。
「ぎゃああああああああああああああ!!」
信者は断末魔のような叫び声を上げながら、それを受け入れる。
烙印を押し終えると火傷が出来るので、「さあ、洗礼は終わりました、よく耐えましたね、さあ、あとは治療室にいきましょう」
烙印を押された信者は、別の信者に付き添われ治療室に向かった。
金のなる木だ、烙印での火傷で感染症にでもなったら、元も子もない。
「ロジャー様!」
礼拝堂にまた別の信者が入ってくる。
「この母娘が是非うちに入信したいと…」
「ほう…」
ボロボロの服に使い古された靴を履いてるな、この白人母娘は…母親は、勧誘係ぐらいにはなるだろう。
娘は…幼いなぁ…もう少し年を取れば…私が…ふふ、いかんいかん、教祖らしくせねば…。
「お疲れの様子ですね、お二人共、食事は摂られましたか? 」
「いえ、それが、昨日から…何も…」
「それは、いけない! 食堂へ行きましょう、美味しいご飯が待ってますよ」
「は、はい、ありがとうございます」
さて、あの母娘をどう料理するか…神の掲示と称して奴隷として売るか、いや…ここで恩を売り使いつぶすのが、一番だな。
こうして、この国での私は、立ち回り、何時か、国の中枢まで喰らいつき、この世での快楽を最期まで貪ろうじゃないか。




