ダニエル・J・コーベットの活躍
―――――パンッ
俺は、拳銃でピエロ姿の男に応戦し、走りながら、まだ誰も乗っていないパトカーの後ろに身を隠し、ライフル銃に警戒しながら…銃撃戦は始まった。
「キャハハ!!お兄さん、そのままだと…蜂の巣だよ」
相手はライフル銃をフルオートにし、俺が身を隠してるパトカーに向けて乱射してきた。
クソっ、火力が違いすぎる、こっちは拳銃だけってのに…
不幸中の幸いというか…奴隷にされてたエルフ族や獣人族を乗せたパトカーは、すぐにその場を離れ発進していたことだった。
防弾ガラスを張ってあるとはいえ、ライフル銃、相手にその場に留まるのは、危険だと判断したのだろう…良い判断だ。
残りは奴隷商人と取り押さえてる警官達だな…相手の標的が俺である内に、アイツの持っているライフル銃を何とかしなければ…
俺は思い切って、身を隠していたパトカーから上半身を出し、拳銃で奴が持っているライフル銃へ、目掛けて、発砲する。
―――――パンッ、パンッ!!
乾いた音を響かせ、相手を目視する。
俺が撃った弾はライフル銃に当たり、あのピエロ野郎は落としていた。
その隙を逃さんとばかりと、俺はその場から走り、ピエロ野郎がライフル銃を拾う所を阻止する。
「動くな! 手を後ろに組んで跪け!!」
ピエロ野郎は、言う通りにし、俺は手錠をかける。
「貴様、何者だ、組織に雇われた用心棒か、何かか? 」
「うふふ、お兄さん、詰めが甘いよ…もう一人、いるんだから…」
「詰めが甘いのは、貴様だ!」
「何だって!?」
――――パンッ
物陰からこちらを撃とうとする影に俺は発砲した。
すると、相手は倒れ、踞《うずくま》っていた。
「ダニエル警部!お怪我は! 大丈夫でありますか!」
「ああ、ウィリアム巡査だな、こちらは平気だ、あの物陰にいる男も身柄を確保だ」
こうして、ユースティティアの残党の奴隷商人による捕り物は幕を引いた。
※※※
港近くのマルコ警察署にて
取調べ室で、奴隷商人は口を割らなかった、いや、割れなかったと言った方が正確か…口を割る事で、組織の報復を恐れているのだろう。
一方、あのピエロ姿の男はと言うと、あっさりと口を割った。
何と…ロジャー・セラノによる指示で雇われた殺し屋だと言うこと、あとロジャーが作った宗教の熱狂的な信奉者である事と、こちらが聞いてないのに、「お兄さん達は、あの方の偉大さを分かっていない、あの方は救世主なんだ!! 」と演説までする始末だ。
あのロジャー・セラノは本当に厄介だ…この始末だと、ズィクタトリアでも同様の事を、してるに違いない。
あの悪党をどうやって捕まえるか…難しい問題だ。
スカーフェイスに連絡してみるか…YOUPhoneを取り出し、連絡をする。
「はい、スカーフェイスです」
「コーベットだ、いきなり悪いな」
「何か…あったの?」
「ああ、こちらでな、ユースティティアの残党をな、検挙してな、その内の仲間がロジャー・セラノによる指示で雇われた仲間だと、言ってな…そっちの動向を知っている限り教えて欲しい」
「ロジャーは、今は…あの白人至上主義者と新興宗教を広める為に、SMSを活用して活動を広めているよ、何でも…貧困に喘いでいる者に炊き出しとか、やってイメージアップを図っているみたいだ」
「その裏で人身売買のビジネスに手を貸してるというのに、とんだ悪党だ…お前とは2ヶ月後に試合があるが…その試合にロジャーを呼んでみないか?」
「試合が…終わってから、身柄を拘束してズィクタトリアからデーモスクラトスへ連行する気か…」
「そうだ、かなり難易度は高い、警察とはいえ、国境を越える際には拳銃も取り上げられる、無理矢理連れていくわけだから、向こうの警察とも揉めるだろう…あれでもそっちでは、一市民だからな…笑わせるがな」
「マイク・ジョーンズとも協力しよう、あの爺さん、野心家だが…ロジャーには快く思ってないし、こちらの数、対ロジャー確保の為、1000人を試合、当日配備しよう」
「そうか…ならば、こちらも署長に
掛け合って、同様の数を当日の会場に潜り込ませよう…不思議なもんだな、2ヶ月後には、お前とはリングで闘うのに…」
「それは、こちらだって同じだ、言っとくが試合では、手加減無しで闘うからな!」
「ああ、分かっている、試合では全力を…対ロジャーでは手を組む…それでいいな」
「ああ、共同戦線って奴だ、あの野郎を野放しにしておけねぇ」
「そうだ、では、またな、今度は試合で死力を尽くして戦おう」
電話を切った。
これで、ヤツを捕まられるだろうか、作戦通りに、行くだろうか…なんせ、あのロジャーだ、こちらがやろうとしている事に、勘づいて対策をしてくる違いない。
――――ふぅ~
溜め息が思わずでる、作戦にどれだけリソースが使えるのかも、署長に聞かなければ、実際は分からないしなぁ…だが、署長も長年、頭を抱えて来た問題を解決するのには、協力はしてくれる筈だ。
俺に流れてるハーフエルフの血が言う、奴らを許すなと、ロジャー・セラノ、お前を必ず監獄にいれ、法の裁きを受けて貰うまで、俺は追いかけるぞ。




