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ジョー・ハットン対サミエル・エルナンデス

サミエルさんが脱いだガウンを俺は預かり、試合が始まる為、スカーフェイス達、共々、セコンドアウトする。

リングにレフェリー、サミエルさん、ハットンの3人が残り、ゴングが鳴るのを待った。

見ているこっちも緊張している中、いよいよ…ゴングが鳴る。


――――カーン!!


ゴングが鳴るともに、真っ先にサミエルが先手必勝とばかりに、ジャブからのワン・ツーで、ジョー・ハットンに襲いかかる。

それを腕を高く上げて、タートルシェルというスタイルでブロックする。

ジャブを打つが、全てガードの上からで、このままでは、ポイントにならない。

ハットンも打たれぱっなしではない、ガードを下げ、サミエルに近づき、ジャブを打ち込む。

それをダッキングしながら避け、左アッパーで、迎え打つと、それは当たらず空を切る。

お互い、一進一退の攻防を続ける中、ハットンが繰り出した右ストレートが、サミエルさんの顔面を掠れ、その反対にサミエルの右ストレートが、カウンター気味に入った。

それで、ダウンしたハットンは10カウントを取られる。

当たりは浅かったのか、ダメージはそこまで残ってないのか、ハットンは立ち上がり、レフェリーは試合続行を促した。

互いに、コンビネーションを駆使した、打ち合いは、第1ラウンドだというのに、最終ラウンドかと思える程、打ち合いを繰り広げている。

そして…残り10秒の拍子木が鳴り、お互いに決定打が出せずに1ラウンドは、終わった。

インターバルに入り、目蓋が切れてるサミエルさんにメディカルトレーナーのヤンさんがワセリンを塗り止血する。

「どうじゃ、奴は…」

トレーナーのブレンダンさんが水の入ったボトルを飲ませ、水分補給をさせながら聞くと「思ってたよりもずーーと、強い!」

俺は氷嚢を頭や肩に当てて、時折、水をかけながら、汗も拭いてやると「タケシ、私は今、とんでもない奴と闘っているようだ…リング上では“クレイジー"と評された私だが、恐怖心を抱いている…どうすればいい? 」


あのサミエルさんが、恐怖心を抱いていると言う…だが、俺は、サミエルさんに「きっと、相手も同じ事を考えていますよ、"なんて相手だって“」


「そうか…そうだといいなぁ、彼にとって私は、強敵でありたい!」


その言葉にブレンダンさんも「その意気じゃ、いいか恐怖心を飼い慣らすんじゃ、それは、火のように扱え、上手く使えば試合だって乗り越えられる」

などと、往年の名伯楽のような事をサミエルさんに言い、インターバルは終わった。

セコンドアウトし、試合を見守る、そして、インターバルに入ったら、次のラウンドの為の選手の体調を見ながら、闘えるように、トレーナーと最善を尽くす…、神経を使うが、1番は戦う選手だ、愚痴なんて言ってられない。

そして……

―――――次のラウンドが始まった。


中量級なのに、軽量級のような速さでお互い、試合を繰り広げていく2人、正直、試合実況者も巡る巡る変わっていく、この展開についてこれてるか、疑問だ。

サミエルさんが突っ込みながらも、右ジャブ、左ストレート、右アッパーとコンビネーションをハットンに見舞うと、それに反撃する為に、多少の被弾をしながら、反撃として、左アッパー、右フックを移動しながら放ち、互いに命の削り合いをしてるかのような、そんな打ち合いを続けている。

そんな中、クリンチになり、サミエルさんは、右ボディ、ハットンは左アッパーを出しながら、攻撃を続けている。

レフェリーが間に入り、クリンチを解かせると、互いにサークリングしながら、攻勢の機会を狙っている。

そして、先に出たのはハットン!

ワン・ツーからロープ際に追い詰めると、ガードを固めたサミエルさんにコンパクトに纏めたラッシュで追い込みをかける。

それを暫く、受け続け、若干の隙がハットン側に出来ると、サミエルさんが、左フック、右フックとお返しとばかりに、打って出る。

めぐまるしく、変わる攻防は第2ラウンドに入っても変わらない。

残り10秒になったのか拍子木が鳴り、ハットンの放ったオーバライトハンドがサミエルさんに、当たり、そのまま転びダウンした。

10カウントを取られるも、ダメージはそこまで無かったのか、試合は続行かと思いきや、第2ラウンドが終わった。


※※※


―――ジョー・ハットン陣営


「強いな彼は…」


私は心の底から思った。

彼同様に、切れた目蓋にワセリンを塗り、止血して貰っているが、血は止まるが彼の放つパンチは、鋭く被弾して、心が折れそうになる。


「止めるか? 」


トレーナーから言われる、勿論、冗談だろうが…


「御冗談を、心、折れそうですが、私も負けられないのでね」


私は妻と一年前に結婚し、更に妻のお腹には新しい命が宿っている。

妻は会場ではなく、自宅でこの試合を見ている。

そんな妻と新しい命の前で、心を折られるなんて、あり得ないのさ。

キツイ練習も積んだ、彼に勝つ為に。


「私は勝つ!」


そう…自分の為にも妻や新しい命に勝利を捧げる。

私は、そうインターバル中に、改めて、誓った。

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