試合当日、選手紹介、無冠の帝王対狂戦士
控え室で、俺たちは、サミエルにバンテージを巻き、グローブをテーピングテープで止めている。
モニターでは前座の試合が終わり、いよいよこちらへ試合の順番が回って来たようだ。
「サミエル選手、出番です」
いよいよ、サミエルの出陣だ。
紫のガウンを纏い、会場の通路を通り、リングへ向かう。
『青コーナーより、サミエル・エルナンデス選手の入場です!!』
セコンドとして、マネージャーとして、何度も選手にこうやって付き添うのは、いいんだろうか…と思うこともあるが、俺もチームの一員だと、俺は、白野武は、思っている。
リングが見えてきた所で、盛大な観客の歓声が沸き上がり、『サミエル!!』『サミエル!頑張れよー!』『応援してるぞー!』と応援の声も聞こえてくる。
そして、サミエルはリングインし、会場のお客さんに四方八方に胸に手を当てながら、挨拶していく。
『赤コーナーより、ジョー・ハットン選手の入場です』
青いガウンを着た、ジョー・ハットンが会場の通路を歩き、リングに向かってくる。
『ハットンーー負けるなよーー!』『ハットン様ーー素敵ーー!結婚してーー!!』『ジョー、頑張れ!頑張れ!』
女性のファンも中々、多いのか、黄色い声援が目立つな、ハットンは。
ハットンもリングイン、ガウンのフード部分から顔を出し、リングを回って観客に手を振っている。
そして、既にリングに上がってる、リングアナウンサーが試合までの進行を取り仕切る。
『会場のお客様、大変お待たせしました、本日のメインイベント、スーパーミドル級10回戦を行いたいと思います、青コーナーより身長は182センチ、体重76キロ、30戦18勝12KO9敗3引き分け、キングプロモーション所属、スーパーミドル級4位、“リングの狂える戦士"サミエル・エルナンデス改め…クレイジー・サミエル!!
対しまして…赤コーナーより、身長185センチ、体重76.200キロ、35戦27勝20KO8敗、カイザープロモーション所属、スーパーミドル級1位、“無冠の帝王"ジョー・ハットン!!』
『ジャッジ…マイケル・スミス、ダニエル・フォアマン、アレフ・ロペス、3名で行われます、レフェリーは、ジョージ・コルテスで行われます』
『それでは…紳士淑女の皆様!大変お待たせしました!"戦いの準備は出来ているか“!!!』
『うおおおお!!!!』
リングアナウンサーの煽り文句に会場は沸き、これから起きる激闘への期待感が会場を埋め尽くしていった。




