世紀の一戦 死闘の末に
――――ジェームス・ロビンソン陣営
インターバルに入った、トレーナーから言われた。
「ジェームス、苦戦してるようだな」
「ああ、あいつは強い…多分今まで、最強の相手だろうよ、勝てるかどうか分からん」
「お前にそこまで言わせるか…」
「《《今のまま》》では、な…この試合を経て、俺の強さが盤石になると思う、前言撤回しよう…俺は勝つ!」
そう…まだ、俺には発揮出来てない力がある。
※※※
そして…第4ラウンドの鐘が鳴った。
両者、構えたまま、動きはするが、次の一手を決めあぐねている。
このラウンド、最初に手を出したなのは、ジェームスだ、ジャブをボディ目掛けて打つ。
それを受け、ラリーがジャブを2発上下に放った。
当たりさえしないが、牽制にはなっただろうか…右ジャブと左ストレートを合間に打ち、攻めさせない。
それぞれ、サークリングしながら動き、それぞれボディへジャブを放つ。
ラリーは左アッパーを突き上げるが、これは躱された。
ラリーが、構えをデトロイトスタイルにすると、ジェームスがワン・ツーを仕掛け突っ込んでくる。
それ避け、逆にワン・ツーを叩きこんだ、ジェームスはダウンはしないが劣勢に追い込まれ、ラリーの猛攻を受けることに!
暫く、その状態が続き、第4ラウンドは終わった。
インターバルに入って、ラリーは言った。
「あいつはこんなもんじゃない…まだ底力をもっている感じがする…」
その予感は第5ラウンドになり、顕著になった。
勢いこそ、ラリーにこそ、あるがジェームスは果敢にジェームスに向かっていき、それを撃退するラリーの構図になり、チャンピオンの意地を感じた。
このラウンドも終わり、一応、ラリー優勢に見えた。
インターバル中、ダマトのおっさんも「大丈夫か…お前さんはそんなもんじゃないだろ!」と檄を入れる。
そして、第6ラウンド…開始早々、ジェームスの左ストレートが、当たった。
それから、中盤にはいり、ジェームスの渾身の左アッパーが、カウンターで入り、ラリーはよろめいた。
堪らず、移動しながら打ち合いにもつれ込む。
ラリーはロープ際まで追い込まれ、ジェームスの左、右、アッパーと繰り出して追い込む、防御に徹するジェームスは、ゴングが鳴り、結果、救われた形になった。
インターバル中も辛そうだった。
「ダマトさん、流石、チャンピオンだよ、強い…強いよ」
「棄権するか? 」
ラリーは首を横に振り「冗談でもしねぇ、俺は勝つ!」
いよいよ、中盤戦を超え第7ラウンドへ、ラリーとチャンピオンが激突する。
リング中央でジェームスが右ボディ、左フックと繰り出し、ワン・ツーとヒットさせていき、後退するラリーに、右、左とパンチを出し襲いかかってくる。
またしてもロープ際に追い込まれ、そこで負けじと、右フック、左アッパーと反撃するも、ジェームスの右フックが当たり、足にキテそうだった。
ロープ際から逃れ、反撃に右ボディ、左アッパーを打つも空振りする。
カンカン!!っと第7ラウンドの終了を告げる鐘がなった。
ラリーは…戻る際、足にキてるからか、ふらつきながら椅子に座った。
「しっかりしろ、ワシが見えてるか!!」
ダマトのおっさんの言葉に「大丈夫…見えてる…ちょっと足に来ちゃってさ」
そう言うと、ダマトのおっさんは、足をマッサージする。
少しでもダメージが緩和されるようにと、「ありがとう、ダマトさん…」
「なーに、お前さんに比べたら、わしに出来ることは、これくらいよ!マーク!ラリーに水は!! 」
「もうやってます、はい、このバケツに口に含んだ水吐いて」
ぺっと吐き捨て、俺は汗をタオルで拭いていた、セコンドの仕事は、選手が次のラウンドに、少しでも最高の状態で上がらせることだ、汗を拭き、氷水を含んだ氷嚢をあてがい、火照った身体を冷ますのをやる、一連の作業を終えると、次のラウンドの鐘が鳴った。
第8ラウンドの開幕だ。
セコンドはリングを降りて選手を見送る、この回は、ラリーはアウトボクシングに徹した、サークリングしながら、ジャブを繰り出し、相手に付け入る隙を与えないように。
ジェームスも無理に付き合わず、ジャブを繰り出して様子見でいる。
第8ラウンドは、大きな展開にはならず、そのままラウンドは終わった。
血に飢えた客からは、『もっと打ち合え!』『そうだ、そうだ』と野次が飛ぶが、今はこれでいい、勝利の為に、やっている事だ。
インターバル中も、水分を補給しながら、ラリーは「勝利の為だ、あいつに勝つ為にも」と呟いている。
第9、10ラウンドは、リング中央を中心に、2人共、移動しながらジャブやボディへと、遠距離から、当てあいになる。
両ラウンドも、ラリーがダメージが少なってきたのか、アウトボクシングで、ジェームスを上回ってくる。
このまま、アウトボクシングで、凌げれるか…インターバルでは、ダマトのおっさんの檄にも、熱が入る。
※※※
――――――ジェームス・ロビンソン陣営
「ジェームス!!あのアウトボクシングを何とか崩せないか!」
トレーナーが焦っているが、そんなの関係ない…トレーナーは、奴のジャブで腫れ上がった俺の目蓋を氷水で浸したエンスウェルをあてがい、腫れを抑えている。
冷やされ、思考もこれまでの勝利への軌跡を振り返る、ただ、これまで練習で培って来たものを奴にぶつける…それだけだ、それに…
「焦るなよ、あと2ラウンドもある、ようやく体が温まってきたよ…次見てろよ、あのラリー・フィールドを崩してみせ…王者の意地を見せてやるさ」
奴は強い、だが俺は奴より更に強い!!その事を今から証明してやる。
※※※
インターバルも終わった…あと2ラウンドもある、それとも2ラウンドしかないか…、第11ラウンドの開始の鐘が鳴った。
何だか…嫌な予感がする、俺の杞憂であればよいが…
序盤、アウトボクシングを辞め、リング中央でジェームスと打ち合う、互角に打ち合いっている。
ところが中盤、ギアを上げたジェームスのワン・ツーを喰らい、クリンチの体勢に入るも、ジェームス、いや王者の決死のラッシュがラリーに降り掛かって来て、ロープ際まで追い詰められると、ロープの間を体が、すり抜け、場外まで飛ばされたんだ。
これが…世界王者これが、世界最強の底力なのか!?
そこから、更にダメージが残っているラリーは、一瞬、ジェームスの首を抱えクリンチをし、すぐに解くと、ジャブを放ち、形勢を元に戻すべく、ジェームズに向かっていった。
しかし、ダメージが残ってるからか、相手のペースに飲まれ、この試合では多様しなかったクリンチをし、ダメージが抜けるのを待っている感じだったが…ロープ際に再度追い込まれ、ラッシュを受け……ジェームスが最後の左ストレートを放つと、それは当たらずにラリーは、ロープに、もたれかかり、ながら、膝から力が尽きるようにダウンしていった。
レフェリーの10カウントも、ゴングが鳴りストップし、このラウンドは、ジェームスの独壇場だった。
インターバル中、毎度、暑苦しい程、ダマトのおっさんは檄をいれてる。
「お前さんは、まだ出来る!心はワシたちと一心同体だ!!」
水分補給をするラリーの後ろから、俺は氷嚢で冷やすんだが、何ていうか…これだけのピンチなのに、闘志は衰えてないと感じた。
やる気なんだ、ラリー・フィールドは!
そして…両雄にとって、最後…運命の12ラウンド目が開始された!!
ラリーはアウトボクシングで突き放すように、ジャブを何回も何回も出していった。
ジェームスは、それを回避しながら、右ボディで牽制し、両雄がリングを周りながら、様々な攻撃を展開する。
ラリーも、アウトボクシングから中央へ移動し、打ち合いへともつれ込む。
ジェームスが右フック、左アッパーとガードの隙間へと打ち込み、ラリーをグラッとさせる。
ラリーも、左ボディ、右ボディ、左アッパーと繰り出し、応戦する。
最後の打ち合いに、会場の客は総立ちで両雄を応援していた。
『ジェームス!!ジェームス!!!ジェームス!!!!』
『ラリー!!ラリー!!!ラリー!!!!』
死闘を制するのは、どちらなのか…皆が固唾をのんで観ている。
そして…運命の1撃がジェームスから放たれた。
右のオーバライトハンドが、テンプルに直撃したのだ!?
その1撃で、ラリーは前のめりへと倒れた。
その様子を見たレフェリーは続行不能と見なし、試合の幕は閉じた。




