世紀の一戦 ジェームス・ロビンソン対ラリー・フィールド
前座の試合がTKOで幕が終わり、会場の熱気冷めやまぬMSGスタジアム、観客達は、いよいよ、自分達が見たかったであろう、試合が始まることに、さらなる熱狂を隠そうともせず、秋だというのに、それは、真夏の暑さにも匹敵しよう。
モニターで、前座の試合が終わったことを確認した、ラリーは、既にバンテージにグローブにもテーピングを巻き終わり準備をしていた。
ダマトのおっさんと軽いミット打ちで体を暖め試合に備えていた。
「ラリー選手!準備をお願いします!」
会場の係員が試合へ行くことを促すと、青いガウンジャケットを纏い、俺達、ラリー陣営は、リングへと向かう。
会場の実況席のアナウンサーも興奮気味に『青コーナから、挑戦者ラリー・フィールド選手の入場です!!!』っと控室から会場への通路にも聞こえた。
「会場は大賑わいなんだろうなぁ」
ダマトのおっさんも「そりゃ、そうじゃ、近年稀に見る好カードだからな!」
マークも「ラリーさん強いですからね、ここ、6戦、全部1ラウンドKOですから、そりゃ、みんな興奮しますよ!」と興奮気味に語っている、落ち着けと言いたい所だが、そんな雰囲気じゃないことも分かる。
『おおっと、遂に現れました、Maravilla|《驚異の男》ここ、6戦、全て1ラウンドKOという…今日もその腕は世界チャンピオンにとっても、驚異になるんでしょうか!!!』
会場のボルテージも最高潮で、リングまでの通路をラリーが通ると、みんなYOUPhoneのカメラで、撮影している。
そして、リングに颯爽と上がるラリー! 片腕上げて、観客にアピールする。
――――そして……いよいよ奴が入場する。
「赤コーナーより、世界チャンピオン、ジェームス・ロビンソン選手の入場です!!!」
実況席のアナウンサーは、喉大丈夫かってぐらい、先程と同じくらい興奮気味で紹介している。
赤コーナーを黒いガウンを纏い、圧倒的な威圧感をも感じさせるぐらい、覇気をも纏い、みんなの喉をゴクリさせた。
リングに上がると、ラリーと同じように観客に挨拶するかのように片腕を胸に当て、四方八方に頭を下げていった。
そして、リングアナウンサーより試合進行の為の選手、及び、ジャッジ、レフェリー紹介が行われる。
『青コーナー、身長190センチ体重72.57キロ、32戦25勝25KO7引き分け、Jプロモーション所属、Maravilla|《驚異の男》ラリー・フィールド!!!!対しまして、赤コーナー身長186センチ体重72.57キロ49戦49勝49KO、キングプロモーション所属、パーフェクトレコードを持つ男、現ミドル級世界王者、THE ・ONE《ザ・ワン》ジェームス・ロビンソン!!!!』
『ジャッジ…マイケル・セルダン、ロジャー・スミス、アレフ・ロペス、3名で行われます、レフェリーは、トニー・ベイレスで行われます』
『それでは国歌斉唱です、斉唱はマリア・デュバさんです』
ラリーもジェームスも同じデーモスクラトス出身、2人共、胸に手を当て清聴する。
デーモスクラトスの国歌が流れ、歌手の、マリアも歌った、彼女特有の穏やかな声が国歌に合わせて歌い、そして歌い切ると会場から拍手が鳴る。
そして、両者ガウンを脱ぎ、俺達、セコンドもリングから見守る。
―――――いよいよ、ゴングが鳴る。
カンっと鳴ると同時に、両者、間隔あけて、様子見で、ラリーはジャブを放つ。
ジェームスは、それを躱しながら、ワン・ツーを突進しながら打ち、ラリーは、ダッキングでそれを躱しながら、右ボディを打ち込む。
互いにサウスポー同士だが、試合の主導権を握っているのは誰になるのか…。
細かいジャブで、相手が付け入る隙を与えず、サークリングするジェームス相手に、同じくリングを周る。
右ボディが、ラリーに入るも、それを右アッパーで返す。
実力伯仲の両雄…だが、ジャブで牽制しながら、主導権をジェームスに握らせない!!
リングを駆け巡り…時折、右ボディを入れ踏み込ませない、ジェームス・ロビンソン、それを追いかけワン・ツーを入れ込むラリー、それぞれが試合に勝とうと試行錯誤する中、第1ラウンドは、終わった。
インターバルの中、ラリーは、水分を取るため、ストロー付きの給水ボトルで、口に含む。
ダマトのおっさんは「どうじゃ、王者は? 」と聞くと「強いよ、だが、負ける気もせん」
「そうか、1ラウンドはいい感じだ、その調子でいけ」
インターバルが終わり、第2ラウンドに入ろうしていた。
第2ラウンドのゴングが鳴る。
お互い、ガードを緩く下げ、一定の距離を保ちつつ、様子を伺っている。
そして、ラリーの右ジャブが飛ぶ。
それを躱しつつ、ジェームスも右ジャブを飛ばす。
お互いに、手の内を明かさないように、構えを変え、中々、手が出ない。
ラリーが右ジャブを2連撃を放ち威嚇すると、それに応えるかのように、ジェームスも右ジャブで応戦する。
右の差し合いで試合が、拮抗している中、ジェームスが放つジャブを躱し、ラリーは躱し、ジャブを打ったあと鋭い左フックを当てた。
だが、当たったのが弱かったのか、ジェームスもすぐに体勢を立て直す。
ラリーの猛攻をしのぎ、これ以上攻めさせない為、ジャブを放つ。
所が、ほんの一瞬の隙に、ラリーのジャブがジェームスを捉えた!
会場もそれに、熱狂する。
チャンピオンもジャブで牽制するも、そのまま、右ジャブ、左アッパーのコンビネーションで攻める、チャンピオンとラリーは、そのあとジャブの駆け引きになり、新たな決定打もなく、2ラウンドは終わった。
インターバル中、ダマトのおっさんが「イケるぞ!ラリー、チャンピオン相手に優勢に進んでるじゃないか!」
ラリーは「まだまだだよ、試合は終わるまで分からないさ、どう転ぶかね…」
「お前さんなら出来る!」
「そうだな、その姿勢で上手く戦うよ」
そして、第3ラウンド…。
最初に攻勢を仕掛けたのは、ジェームスだ、右ジャブを飛ばし、牽制する。
ボディに右ジャブを仕掛けるも、ラリーは躱す、そしてロープ際で、ジェームスの右フック、ラリーの右フックが交差し、先に当たったのは、ラリーだ!!
ラリーは仕留めようと追い打ちを! ジェームスは、リング内をサークリングし、凌いでいた。
ラリーの左ストレートを躱し、逆にワン・ツーを放つも躱され、ラリーのジャブが決まる。
効いているのか、効いてないのか分からないが、ジェームスは、リングをサークリングし、反撃の機会を狙っている。
そして、隙を見て、ワン・ツーを放ち、リング中央で、打ち合いが始まる。
両者、拳を振り回し、当たるか当たらないかの瀬戸際で、ギリギリの攻防を繰り広げる。
そして、ゴングが鳴り第3ラウンドは終わった。




