ラリー・フィールド4
「ラリー、さっきのは…」
俺は、集会でのラリーの立ち振る舞いを聞いた。
あれだけの聴衆がいて罵声も嘲笑、冷笑めいた、集団の中でラリーは毅然とした態度で相手を批判していた。
それは、あの集団に暴行されるリスクだってあるのに、何で…あんな事が出来るんだろう。
「ははは、スカー、別に驚く事はないさ、ただ、ああいう手合いは、見逃すのも良くないからな」
「ユースティティアってマフィアでしょ、そんなのが、バックにいる団体に喧嘩売るなんてどうかしてるよ」
「どうかもしてないさ、私はただ…自分の気持ちのままに、やっただけ…ありもしない事を吹聴して対立を煽る連中なら無視できないさ」
「それで、批判、罵倒、誹謗中傷が来ても、ラリーは戦うのかい? もしかしたら、暴力だって…」
「それでもやるさ、それにな、いいか、スカーフェイス…国や権力が牙を向いた時、お前やお前が大事だと思う者は守ってやれ、家族や親しい者とか、それは、その人の人権を守ってやる事に繋がるから…たとえ罪を侵した者でもあるんだ、勿論、お前や私にもある権利だ、相手が国や権力側だったとしても、不可侵な概念だ」
人権ねぇ…俺には難しい言葉だけど、だけど、親しい者、家族を守るってことは、理解出来た。
スーパーに着くと、買い出しを始める。
パスタ、プロテイン、清涼飲料水、牛肉、鶏肉、牛乳ほか等、袋いっぱいに買った。
「結構買ったな、3人合わせると、結構な量になるんじゃないか? 」
マークがそう言い、車のバックドアを開けて荷物を積めていく。
そうして、俺達、3人は車に乗りジムへと帰って行った。
※※※
ジムへ戻り、保管庫や冷蔵庫に荷物を詰めていると、ダマトのおっさんが、「ラリー、ちょっと来いと」ラリーを呼び付けた。
気になったので、後をつけてみると、おっさんのオフィスで何やら話してるようだ。
あと電話が鳴り響いている。
「まったく…お前という奴は…差別主義者の集会に首を突っ込むから…電話が鳴り止まないぞ」
椅子に座り、腕を組んで、ラリーを見つめてる。
「迷惑でしたか? 」
「いや、むしろよくやった、3人とも怪我はないかね」
「無いですよ、奴らにそんな度胸はない」
「ワハハ、言うじゃないか…白人のワシが言うのもなんだが、辛くなかったか、色々言われただろう」
「それが、今度のジェームス・ロビンソン戦の挑戦者だって知られたら、手の平返しで握手まで求められて…」
「そりゃ結構! よくやった…ああもう電話がうるさいのう、『はいもしもし、はいはい結構ですよ、うるさいので切りますね〜』ふー」
「何だったんです、電話は? 」
「脅しだよ、【お前のとこのジムを爆破するぞ】ってね」
「警察には? 」
「もう通報済みだよ、なーに、心配はいらない、ただお前さん達が、何かされてないか心配だったから、こうやって呼び付けただけだよ…あとこっそり、覗き見してるスカー!バレてるぞ」
あちゃー、結構、こっそりしてたんだけどな、あっさりバレちゃった。
部屋へ入ると、ダマトのおっさんから「覗くにしてももっと上手くやらんか」と叱られた、そこぉ!?と思いながら、「あのぉ…」と聞く。
「なんじゃ、聞いておったんだろ、ラリーは別にお咎めなしじゃ」
「そうか…そうなんだ、電話また鳴ってるみたいですけど、大丈夫なんですか? 」
ジリリと鳴く電話によそにダマトは、俺に「構わん、どうせさっきと同じラリーへの抗議じゃろ、さて…半年後のジェームス・ロビンソンだが、ラリーお前は、本当に受けたわけじゃが、明日から練習を特にやり込むぞ」
「ああ、宜しく頼む」
※※※
半年後…
半年間、様々なトレーニングをラリーはやった…バトルロープ、タイヤフリップ、ハンマートレーニング、アトラスストーン等…ミット打ちやスパーリングも欠かさず、対ジェームズロビンソン戦に備えて、肉体を練磨して対決するための下準備をラリーは終えた。
―――――そして運命の時が来たんだ。




