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決着

インターバルに入った、ブレンダンから俺が、左アッパーを出すときに右フックをもらったことを聞かされ、ダウンしたことを理解した。


「いいの、貰ったな、次のラウンドから相手は攻めてくるぞ、気を引き締めろ」


「分かってるさ、コーベットは強いな」


「ダメージは残ってる、ガードもしっかりしろ」


「大丈夫…分かってる」


「うん、それならいい」


インターバルを終え、俺は第3ラウンドに向けて、リングに、コーベットを迎える。

互いに徐々に距離を詰め、打ち合いを始める。

コーベットが左ジャブをそれを、ブロックし、俺が右フックで応戦すると、紙一重で躱され、左アッパーを出し、それを俺はスウェイで躱す。

一進一退で進む、リング状況は、客を静観させる程だった。

しかし、コーベットが、油断したのか、ガードを下がった所に、ワン・ツーを叩き込む。

僅かな差で、ガードをする、コーベット!

後退し、ロープ際に追い詰め、ラッシュをかけるも、上手くサークリングし、危機的状況を避けた。

それから、打ち合いは続いた。

お互いに相手の手の内を、探りながら第3ラウンドは、終えた。


※※※


ダニエル・J・コーベットサイド


目蓋が腫れた所をエンスウェルで冷やし、コーベットのセコンド達は冷静だった、いや、むしろ、コーベットが冷静だったと言うべきか、コーベットは笑みを浮かべていた。


「ダニエル、次のラウンドはいけるか!いや、愚問だったな、お前ほど、冷静で頭の回るボクサーもいまい」


「スカーフェイス…奴は強い、まだ、手の内を隠してる…いや、出す気がないといった所か、奴の本気を引き出して見せるさ」


「油断はするなよ、《《あれは出すのか》》」


「まだ、出さん、それに誰に言ってる、俺は奴を倒す」


※※※


ゴングが鳴り、第4ラウンドが始まった。

俺はゴングが鳴ると、次はどう出るか、考えた。

サウスポーに切り替え、動揺を誘い、今までの拮抗した空気を崩すか、ボラードで切り崩すか…だが、まだ早い、向かってくる相手とまだ、《《やりきれていない》》。

相手も手の内を隠してるのを、ボクサー特有の感で分かる、だから、こちらも応戦してそれを引き出してみようと試みる。

暫く、打ち合い、互いに消耗した所で、出して来た!

手を捻り、体ごとパンチに重さを伝える打ち方、コークスクリューパンチだ。

俺はマットに倒れた、何ていう威力だ、足がガクガクするぜ。

レフェリーが、10カウントを数え、ギリギリまで立つのを粘る。

9カウント数えるを確認してから、立ち上がった。

足が少しふらつくが、まだ、いける!

向かって、くる、コーベットに俺はここで、サウスポーに構えを変え、右ジャブからの左ストレートのワン・ツーを繰り出し、今度はこちらがダウンを奪った。

相手は悔しそうに、こちらを睨みながら立ち上がる。

俺は、ここぞとばかりに、コーベットに向かった。

コーベットの繰り出す左ジャブを、掻い潜り、左ボディで追い打ちをかける。

コーベットは堪らず、2度目のダウンをした。

しかし、まだ立ち上がる。

大したタフネスだと素直に思った。

あれを喰らってたつのは、激痛に慣れしんだ…それに相当する鍛錬を積んできたからだろう。

そして、ゴングが鳴った。


インターバルを過ごすのが、ここまで安心するのかと、プロに入って初めてだ。


「もう少しだな、スカーフェイス!」


「まだまだ、奴《やっこ》さんはまだ、隠してる…だが、俺は勝つ、はあ、冷てぇ〜」


エンスウェルが腫れた箇所を、冷やすと、その冷たさが、身には染みないが、精神的には落ち着く。


「まだまだ、油断はならんという、ことだな、よし、行ってこい!」


第5ラウンドの鐘がなる。


オードソックスのスタイルに戻した、俺は左ジャブの差し合いの勝負になる。

序盤の慎重さが、戻ってきたみたいな、空気で、相手は何を考えてるのか…それを理解させない展開だ。

このままだと、ポイントで負けかねないのでは…いや、ポイントでは、こちらが、負けてるかも知れない。

ポイントの事を考えて仕方ない、俺はワン・ツーからの左ジャブで相手からダウンを獲ろうと躍起になっていた。

コーベットはサークリングしながら、ステップを刻み、それらを躱していく。

相手の逃げ場を塞ぐように、移動し、ガードを固めながら、ジャブを飛ばしながら、追い詰めるも決定打にはならない。


(どうする、ここで、もう一度サウスポーに…)


「スカーフェイス、頑張れーー!」


あの声は、フォゲット・ミーノット、着てくれたのか…ますます、負けるわけには、いかない。

俺は、サウスポーに切り替え、相手に近づき、左フックを放った。

その瞬間、周囲が遅く見えた。

自分の動作も、コーベットも…そして、コーベットが左フックをダッキングで躱し、右へと足を踏み込み、右アッパーを当てにくる。


(躱せない!!)


そして、そのアッパーは、俺の顎を捉え、それからの意識はない。


※※※


「スカーフェイス選手、続行不能!レフェリーが試合を止めた!無敗のスカーフェイス選手、惜しくも敗れさりました」


試合の実況席から、どよめきが起こり、会場も同様だった。


「勝者、ダニエル・J・コーベット!!」


リングアナウンサーが勝者の手を上げた。

もっとも、俺達はそれどころでは、無かった。

スカーフェイスの左フックをダッキングで躱した、コーベットは右アッパーを叩きこみ、スカーフェイスをリングに沈め、KO勝ちした。

「スカーフェイス!!俺の声が聞こえるかーーー!!!」


反応がない。


「スカーフェイス!!」


「あんたはフォゲット・ミーノットさん」


客席から、ここまで客をかき分け来ていたのだろう。


「スカーフェイス!!起きて!起きってば!!」


すると、反応がなかった身体がピクッと動き、目が開く。


「うるさいなぁ、聞こえてるさ…タケシ、そして、ミーノット」


スカーフェイスが倒れた身体を起こすと、コーベットに近づき、言った。


「あんた、大したボクサーだぜ、まさか…ここで負けるとは思わなかった」


「俺もそう思った、お前はただの雑魚狩り上がりのボクサーじゃないと…あとは署でな…」


それから、スカーフェイスは警察官同行で、病院で検査を受け、異常なしとの事で、フレイタス警察署に連行されていった。

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