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BARルーストへ

ズィクタトリアのブレンダンジムから、離れたあるバーにタケシと飲みに、誘われ、訪れていた。

バーの名前はルースト、店内は落ち着いた様子で、店内には、俺達以外にも何人かいた。

席に座り、バーのマスターに飲みやすそうな物を注文する。

それにしても……


「タケシ、いつの間に見つけたんだ、こういう所を」


「いや、なに、マネージャーとして、相手と交渉するには場所だって重要だろ? こういう穴場的な所もリサーチするのが、俺の仕事なわけ」


タケシはこの世界の住人でもないに、その順応性には驚かせられる。


「あのさぁ、スカーフェイスよ…」


タケシが何かを言おうとすると、後ろから声がかかってくる。


「こんばんは」


振り向くと、金髪、碧眼のあの人だった。


「フォーゲット・ミーノットさん!? 」


「さん、何ていらないわ、ちょっとお話したいなと思って…時間ある? 」


俺が舞い上がってる様子を見て、タケシは、「ちょっと用事が出来た、お金置いとくから、あとは二人で飲んでね」と俺とフォゲット・ミーノットに気を使ったのか、席を後に店を出た。


「あの人は? 」


「マネージャーのタケシ、えっと今日はどうしたの? 」


「実は、これを…」


渡されたのは、真っ赤な薔薇の束だった。


「今更だけど、試合勝利おめでとう、あの試合見にいって、応援もしたんだ、声、届いたかな」


「バッチリ、あのあとリングアナウンサーのコールで、聞こえなくなっちゃたけど」


「そうなんだ、怪我とか大丈夫なの? 」


「そりゃあ、大丈夫さ、なんたって身体は丈夫だから」


「そっか、よかった…スカーフェイスは、歌に興味ある? 」


「うーん、ないわけじゃないけれど、あんまり聴かないかな」


「実は、今度、コンサートがあるんだ、私、歌手だから」


「そうなんだ、君は歌手だったんだな」


「うん、《《歌姫》》なんて持ち上げられてるけれど、まだ駆け出しなんだ」


「それじゃ、俺と同じだ」


「えへへ、そうかもね、それにしても…どうしてズィクタトリアへ来たの? 」


「ああ…それは、新しく環境を変えようと思って…心機一転でもっと強くなれるかなって思ったんだ」


嘘だった、だけど彼女にユースティティアとの争いに巻き込む訳にはいかない、だから…本当の事は言わない。


「ふーん、そうなんだ…ねぇ、スカーフェイス、貴方、どうして人を殴るの? 」


思いがけない言葉だった、どうしてだって…そういう生き方しか、俺には、選択肢が無かったから? 他に選択肢が思いつかない…だけど…。


「人を殴るのは、置いといて、ボクシングだけが、俺にとって掛け替えないのものというか…」


「人を殴るのは、楽しくないなら、辞めたほうがいいと思うんだ…あのね、私の父もボクサーだったの」


「えっ」


突然の告白に戸惑いを隠せない俺を尻目に彼女は続けた。


「父も同じことを言ったわ、それで続けてリング禍で亡くなった、ねぇ、どうしてなの?

続けて言うね、どうして人を殴るの? 」


彼女は、じっとこっちを見た。

バーのマスターが丁度よく酒を差し出したので、それを一気に飲み干し言った。


「楽しいからかな…自分にある暴力性を一気に解き放てる場所があそこだから」


それを聞いた彼女は、表情を変えず、見たら吸い込まれそうな綺麗な碧眼で俺を見続けていた。


「ごめんね、意地悪な質問をして、ただ私は歌ってる時が1番楽しいんだ、自分の居場所がここにあるんだって…それでね、《《私の楽しい》》と《《貴方の楽しい》》が何かズレてる感じがしてね、何か貴方には、誰かに言えない悩みとか、あるように見えたの」

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