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朝食を取り終えた。朝食もまた金色鎧の男はとらない。
「おぬしは、これからどこを目指す?」
「この先にある魔王城へ届け物があるんだ」
「ほお。なら、わしと行く先は同じじゃな。なら、同道いたそうか?」
「一人旅にそろそろ飽きていたところだから、そうしてもらえると助かる」
「うむ。では参ろう」
二人で街道をたどり、魔王城を目指す。
途中、何度か魔族や魔獣の襲撃もあったが、なんなく撃退。やがて、遠くに魔王城の威容が見えて来た。
おどろおどろしい魔王城。その周囲には魔族の町が広がっている。通りを行き交うのはほとんどが立派な身なりの魔族なのだが、中には人間の姿も見える。人間たちは、裸足のものが多く、ボロボロの格好をしており、クビに首輪をはめられている。奴隷の証なのだろう。
そんな町を眺めていると、通りの隅で一人の人間がつんのめってこけた。その腕に抱えていた大量の荷物が地面に落ち、辺りに散らばる。
すぐに、その人間の傍に鞭をもった魔族がやってくる。そして、
「こら、うすのろ! 立て! 立たないか!」
ビシッ――
わめきながら、鞭を振るう。人間はうめき声を上げながら、よろよろと立ち上がり、落ちたものを拾い集めようとするが、
ビシッ――
「この役立たずめ! まともに荷物一つ運べねぇのか!」
鞭うたれ、再びその場で倒れた。だれも助けに行こうとしない。
まわりには魔族たちが集まって輪をつくり、口々に鞭をもった魔族に声をかける。
「もっと鞭打って、分からせろ!」
「そんな無能は殺してしまえ!」
「人間なぞ! 魔獣のエサにしてしまえ!」
まわりの魔族たちに声をかけられ、気を良くしたのか、鞭をもった魔族、再度、倒れている人間に鞭を振るおうとした。
だが、鞭を頭上に振り上げたまま固まっている。
いや、鞭を振るおうとしてはいるのだが、誰かがその鞭の先を押さえている。ピクリとも鞭を動かせない。
「なにしやがる!」
振り返った先にいたのは、全身金色鎧の男だった。
金色鎧の男はスラリと剣を抜く。驚愕して動けない魔族にその剣を無造作に振り下ろした。
ギョェエエエ~~~~
魔族を切り捨てた金色鎧、ついで周囲に集まっている魔族へ迫っていく。そして、さっきと同じように剣を振るう。
ギョェエエエ~~~~
金色鎧が剣をふるうたび、断末魔が次々にあがり、魔族が道に倒れていく。魔族の死骸が転がっていく。
そんな異変に気が付いたのだろう。魔王城の方角から完全武装した魔族たちが魔獣にのって駆けつけてきた。
「なにごとかっ! 貴様、何をしている!」
そんな魔族騎兵たちにも容赦なく剣をふるう。
カキンッ!
さすがに魔族騎兵たちはただ斬られるなんてことはなく、剣を抜き放ち、金色鎧の剣を受け止め弾き返そうとしたのだが、
「なんて、バカ力だ!」
弾かれたのは魔族騎兵たちの方だった。