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 それでも、少しずつながら事情がだんだん分かってはきた。


 発端(ほったん)は、港で起きた密輸事件だった。

 俺が捕まる一ヶ月前、ミ・ラーイに外国の貨物船が寄港した。

 通常、貨物船がミ・ラーイに寄港した際には、海上で税関職員が乗船し、船上でその積み荷を調べた上で、規定に従って関税が課され、手形などの支払い手続きが済んだ後に接岸が許される。

 だが、その船はファブレス商会が手配したもので、常々ファブレス商会がらみの船はミ・ラーイの市長から調査免除の指示が出されていたのだ。当然、そのときも入港した貨物船は税関によって調査されず、関税も課されなかった。

 だが、以前から王都の宰相のもとにはミ・ラーイの港で不正が行われているという訴えがあった。宰相は状況を確かめようと秘密裏に信頼のおける配下をミ・ラーイへ潜入させていたのだ。

 そこへ、のこのことくだんの貨物船が入港してきた。しかも、本来規定に沿って課されるはずの関税すら課されていない。

 宰相の配下はその事実をすぐさま把握し、極秘の調査に着手した。

 だが、そのことを市長側はある程度つかんでいたようだ。よそ者が港でこそこそと嗅ぎまわっているのだから怪しまれるのも当然か。

 市長はその地位を利用して密輸を行っていただけではなかった。ファブレス商会と組んで、いろいろな悪事にも手を染めていた。

 それらを何者かが嗅ぎまわっている。これはヤバい! 何者かは知らないが、放置するわけにはいかない!

 そこで、市長はかねてより関係のあった闇ギルドに依頼して、そのよそ者を暗殺させたのだ。

 宰相はミ・ラーイで配下の死体が発見されたことで疑惑をさらに深めた。だが、この時点では、宰相はまだ市長自身が不正の首謀者だとは気が付いていなかった。そして、あろうことか、ミ・ラーイの市長を王都へ呼び出して、徹底捜査を命じたのだ。

 そうなってしまうと、もはやうやむやになんかできない。最低でも宰相の配下を殺した下手人(げしゅにん)は捕まえなくちゃいけない。とはいえ、暗殺を実行した闇ギルドとの関係はこれからも維持しておきたい。だから、事件の犯人である暗殺者本人を捕まえることはできない。別のだれかを犯人に仕立てて捕まえる必要がある。そこで、市長がいけにえに選んだのが、ファブレス商会のバカ息子と以前トラブルになったことがある俺だった。




「あのゲス市長め!」

「ま、よくある話ね。政治家が保身のために一般人を犠牲にするなんてね」


 なんとか、あのゲス市長に報復できないものか?

 そうだ! この資料を宰相閣下のところへ持ち込めば…… もちろん、俺みたいな一般庶民では相手にされないだろうけど、おバカ魔王さまなら。なんといっても、おバカはおバカでも王女様なのだから……


 だが、その王女様に頼んでも、懇願(こんがん)しても、俺が集めた市長の不正の証拠を宰相へ手渡すのをウンとはいってはくれなかった。


『だって、ミ・ラーイの市長はお兄様派で、ファブレス商会は、お兄様の派閥の人たちそれぞれに多額の献金をしてくれているもの。おまけに、今の宰相はおバカヘンリーの後見人よ。娘がヘンリーと婚約してて王太子派なの。だから、こんなの渡せないわ』


 ……


 神も仏もないのか! いや、そもそも魔王に頼んだ俺がバカなのか?


『でも、安心なさい。お兄様が国王になってからなら、いくらでも犯罪者の首ぐらいちょん切れるから。不正を働いている人間を国王となったお兄様のそばにいつまでも置いておくなんてできないわ。国王としての評判に傷がつくもの。だから、それまでにたくさん証拠を集めておくといいわよ』


 というわけで、王女様の約束を信じて市長一味の不正の証拠集めに精をだすことにした。

 うん、しかし、あの市長とファブレス、相当あくどいな。

 密輸や暗殺だけでなく、人身売買、麻薬、売春宿の運営、盗品の取引。調べれば調べるほど犯罪行為がボロボロボロボロ……。

 つうか、こんなやつらが支持するユリウス王子って――?




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