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  作者: ぁぃ(。・Д・。)ノ
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4話 『陰気な性格』


「はぁ…はぁ…ただいま渚帰還しました」


「はいはい、お帰りなさい」


数分後、顔色が悪いままの渚は覚束無い足つきで席に戻った。ぐったりと座っており、何かトイレで壮絶な出来事が起きたのだと推測される。

だが、机に並べられた品々を認識した瞬間、渚の淀んでいた目に活気が戻った。


「コーラとハンバーグだ!」


机には数分前に頼んだ料理が並べられており、コーラも置かれていた。これは渚が吐いている最中に運ばれてきたものだ。ちなみに、コーラは紗月が気をきかせて用意したものだ。


「ぷはぁ、やっぱりコーラって最高だね」


「ビール飲んだ後のおっさんみたいなことしないでよ」


渚はコーラを一気に飲み干すと、大きくため息を吐いた。その行為に紗月は控えめなツッコミをしてから、ハンバーグに手を付け始めた。


それに続いて、渚もハンバーグに手をつけ始める。既に元に置かれているナイフとフォークを駆使して切り始める。

これは恐らく紗月が用意してくれたものだろう。その事に内心感謝しつつ、渚はハンバーグを真っ二つに両断した。


「いいっすねぇ…」


ハンバーグを真ん中で切ると、そこから肉汁と溶けたチーズが一気に外へ放出されていった。

肉の香ばしい匂いとチーズの匂いが渚の鼻腔を刺激し、食欲を活性化させてくる。食欲に本用されるがままに、渚は早速細かく切ったハンバーグを口の中に放り込んだ。


一口噛むと、肉の旨味とチーズのまろやかさが口内に充満し、思わず顔がうっとりしてしまう。


「ねぇ、渚」


「ん、何?」


そのまま食べ進めようと思った矢先、突然紗月に名前を呼ばれたので、渚は手を止めた。

見ると、紗月も手を止めており、真摯な眼差しでこちらを見据えていた。ただならぬ緊迫感を感じたので、渚はゴクリと息を飲んだ。そして紗月がゆっくりと口を開いた。


「さっきは曖昧にしたけどさ、なんで一時間も遅刻したのかな?」


紗月は万遍の笑みで渚にそう訊くが、目元が一切笑っていなかった。明らかに紗月は遅刻した事に怒っている。ここは何とか弁解しなければ───、


「ぇ?いやぁ…ねぇ?うん、あれだよ…うん…あれ…」


弁解しようと試みるが、何も言い訳が思いついてこず、明確な答えを出さないまま、おずおずとしていると、


目の前からドンッと机を叩く音が聞こえてきて、渚は恐怖で肩を大きく跳ねさせた。恐る恐る顔を上げると、渚の顔にはナイフが向けられていた。


「ひっ」


ナイフの先端は妙に光り輝いていて、恐怖心を沸き立たててくる。怯えて後ろに下がろうとするも、これ以上後ろへ下がれず、絶体絶命の状態だ。そして再び紗月はゆっくりと口を開いた。


「もう一回聞くよ?なんで一時間も遅刻したのかなぁ?」


心臓に直接ナイフを突き立てられている気分だ。そして、嘘をついたら殺されると本能が警告している。

鼓動が異常なほど早くなっていき、鼓膜に鼓動の五月蝿い音が渦巻いている。

周りから聞こえていた喋り声が全て遮断され、強制的に紗月に集中が注がれる。

この絶体絶命な状況を打開する方法を必死に探すが、頭の中が真っ白になり、何一つ思いついてこない。

故に、渚は正直に遅刻した理由を話す事にした。


「じ…実はね…き…昨日の夜に面白そうなアニメ見つけて…そしてそのアニメが面白すぎてぶっ通しで全部見ちゃったんだよ…そしたら深夜の四時になってたんだよ…」


渚は顔を背けながら、おずおずと遅刻した理由について話した。だが、渚はアニオタとしてのプライドが捨てきれなく、バンッと机を叩いて、その場で立ち上がり───、


「だって面白かったから仕方がないじゃんか!あのアニメが面白かったせいで遅刻したんだよ!つまり、私は悪くない!全てはアニメが悪いのだ!」


渚が待ち合わせに遅刻した理由はアニメが面白すぎたせいだ。

アニメが面白いのを免罪符に、渚は自身を無罪だと主張すると、紗月はナイフとフォークを机に置いて、席から立ち上がり───、


「そうだよな、この世に面白いアニメがあるからいけないんだよな。だったら許す!」


「おぉ、ありがとう!」


渚がアニメの話題を出すと、紗月は異常に食い付いてくる。同じアニオタとしての生き血が働き、遅刻した事をすんなりと許してくれた。


「流石は我が親友である紗月よ!」


「あのー」


周りを気にすることなく、同じアニオタ同士で盛り上がっていると、店員がやってきて、控えめな態度で渚たちに話しかけてきた。そして店員は続けて───、


「そのナイフは人に向けるものではありません。それに、他のお客様がご迷惑になられますので、店内で叫ばないでもらえますか?」


「───え?」


店員に注意され、渚は周りを見回すと、他に店内にいる客全員が、渚たちに注目しており、皆共々怪訝な表情を顔に浮かべていた。


「ぁ……す…すみません」


先程までの紗月のテンションは完全に消え失せた。視線は定まらず、猫背になりながら顔を伏せて、身体をブルブルと震わせながら、小さな声で店員に謝罪する。

紗月の謝罪を受けた店員は「気をつけてくださいね」と言い捨てて、厨房の中に帰っていった。


「ぁ…ぁぁ…」


「大丈夫?」


「大丈夫…なわけないよ…」


紗月は酷く挙動不審になり、自分で肩を抱いて顔を伏せていた。渚は紗月を心配に思い、声を掛けると、紗月は震え切った声で返答した。

紗月の性格は非常に陰気であり、こうして目立つことが大の苦手なのだ。

渚が聞いた事によれば、小学生の時にある出来事でクラス全員の注目を浴びた事がトラウマとなり、それ以降自身が注目を浴びることが苦手になってしまったのだ。


「もう嫌だ…この世の全てが嫌いだ…もう嫌だ。みんな死んでしまえ。死んでしまえ。死んでしまえ」


「おい、やめろ」


紗月の思考がマズイ方向に向いたので、すかさず渚が紗月の思考を止めにかかる。

だが───、


「死ね、死ね、死ね、死ね。撃ち殺してやる…」


紗月の呪いのような呟きは止まることを知らず、狂気と化していた。そんな状態に陥った紗月を救出する為、渚はある作戦を実行することにした。


「そう言えば紗月に勧められた『きみはる』ってアニメ凄い面白かったよ」


アニメの話をして、 紗月を負の感情から救い出そうとする作戦だ。一件、こんなに簡単な事で紗月を救い出せるのか心配だが、渚は紗月が大のアニオタである事を知っている。

ならば───、


「だよね、だよね、面白いよね」


と、先程の負の感情は全て消え去り、紗月はアニメの話に興奮を隠せないでいた。扱いやすいと言ったら何なのだが、とにかく非常に単純だ。どれだけ落ち込んでいようと、アニメを話をされたら瞬時に活気が湧いて出てくる。これが真のアニメオタクだ。


「最終回で桜の木の下で凛と千夜が抱き合ってキスするシーン。あれ本当に最高だったよ!」


「だよねだよね!そこのシーンが一番好き。二人とも色んな葛藤を経ての邂逅だから、様々な思い出がぶつかり合って、二人は結ばれる。これを最高と呼ばずにいられないよね」


異様な食いつきを魅せる紗月は、食事の事をすっかり忘れて、アニメの話に熱中していた。これで解決はしたのだが、渚も感想などを語り合いたかったので、このまま話続けることにした。






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