医療費問題
色んな人の考え方を参考に医療問題について小説にしてみました。
趣味で作った程度なので、言葉遣いなど間違いにはご容赦ください。
私は神経内科の医師である。普段見る症状は内科の症状が多いが、認知症や統合失調症、パーキンソン病なども診察する。(これらの疾患は精神科か神経内科に振り分けられることが多い。)
専ら、認知症などの神経の病気は高齢者が多く、普段はご高齢の患者ばかり診察している。
そんなある日、昼休憩にTwitterを見ていると「医療費」がトレンドに上がっていた。
自分が医師であるため、医療関係の情報は知っておきたいこともあり、少し他の人のツイートを詮索する。
どうやらこのトレンドは、「臓器移植が95歳の患者に施され、半年後に亡くなった」という記事があったことから、「治療や医療費が高齢者にかかりすぎている。もっと若者にかけるべきだ」という論争になっているようだ。
「医療費や臓器移植を半年後に亡くなるような高齢者につかうよりも、若者や生まれてくる赤ちゃんのためにつかうことの方が社会的に有益だ」
反対意見として、「同じ命であるのだから、平等に命を扱わなければならない」
大雑把にまとめるとこんなような意見が多かった。
確かに、もし臓器移植が一人しかできないとして、臓器を待っている患者が高齢者と若者であったらどうするだろう。待っているのが高齢者の方が先ならば、迷いもなく高齢者に移植することができるだろうか……
私もできることなら若者に移植する方がよいのではないかと考えてしまった。勿論、命は平等であることは理解しているが、だからこそ残っている命の年数を比べてしまうのである。
この臓器移植の延長で、医療費についても同様に考えることができるだろう。
医療費にも限りがあるからである。その場合、どこに優先して使うかは重要な政策の一つになるであろう。
現在の日本では、75歳以上の医療費は総医療費の40%以上を占めているそうである。75歳以上の人口はおよそ13~14%というのだから、いかに医療費がかかるかがよく分かる。
では、どうして日本はこんなにも医療費を高齢者に割いて、これからの日本を担う子供や出産にお金を使わないのであろうか。
そんなモヤモヤを抱えながら仕事に向かう。
今日も認知症の患者さんが診察に来た。
実は、入院は精神疾患で入院している人が最も多い。疾患としては統合失調症や認知症が多いのだが、その理由として大きなものは平均入院日数が280日間であることであろう。
他の疾患では1か月弱が平均入院日数であることを考えると、自然と精神疾患で入院する人が多くなる。
は~、これもまた、医療費の無駄遣いなのであろうか
なんと医師としての自覚のない考え事であろうか。どんな患者も平等に扱わなければならないのに。
さて、今日も仕事が終わり、先輩医師の方と一緒に帰る。研究をしなければ意外と時間通り帰れることもあるのである。
せっかくなので、今日の話題を先輩にも聞いてみた。
「日本の医療ってどうなんですかね。臓器移植や医療費の使いどころが高齢者ばかりでいいんですかね。Twitterで若者に臓器移植した方が有益かどうかという論争が起きてたんですけど」
「私は今のままでいいと思うよ。Twitterの人たちは実際に医療現場を見ていないし、あまり医療が身近でないからね」
「私は医師なんですけど」
「診察の時を思い浮かべてごらん。認知症の方などは一人で来るかい?」
「いえ、家族の方と来られることが多いです」
「ちゃんとよく考えてごらん。そのご家族にとっては大切な家族の一人でしょう?もし、Twitterでそういった意見を言っている人も自分のご両親や祖父母が病気になったら、医療費の無駄だから、臓器の無駄だから移植はしないでおくれという人はほんとに少ないだろう」
「た、確かにそうですね。もし、自分の家族がって考えたら、若者だから優先されるというのは少し納得がいかないかもですね……」
「反省します。患者のご家族の方もそういう思いで来ていらっしゃるはずで、それを無下にするわけにはいきませんものね」
「常に患者やその家族の気持ちで考えることが大事だね、勿論それは医療者だけでなく、政策を考える政治家にとっても、一般の方にとっても」
「本当にそうですね。すっきりしました。ありがとうございます」
「じゃあ、早く帰って、ご家族を大切にね」
そういって、先輩も私も家族の待つ家に急ぎ早で帰ったのであった。




