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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アイドルな私と引き籠もりの君

作者: 南條 樹

今、人気で話題沸騰の恋愛カードバトルゲームがスマホアプリ版として登場。

今回、ヒロインの声優を務めるのは、人気絶頂アイドル “ ミーナ ” こと篠崎美奈。 このゲームの見所をミーナさん本人に聞いてみました!


『このゲームの見所は?』

『そうですね……』




******




「…………ゲームなんてやった事無いのに、良くこんな発言が出来たね」

「仕方無いでしょ。ヒロインの声優やってるのに、何も答えられ無いは問題なのよ」

「ふぅ~ん。それで? 何でうちに来たの?」

「伊織ならゲーム詳しそうだし、ソフト版の方なら買ってそうだし、一緒に遊べるかなって……それに伊織(好きな人)と一緒に居たいから」


ゲームをやるのは建前、伊織と一緒に居たいのが本音。ソロアイドルとして売れてからは、一緒に居られる時間が減って寂しい。

“ 好き ” と告白してないから、甘えるのは控えているつもりだけど、何処かで気付いて欲しい気持ちもあって、抱き着いたり、くっついたりしてるけど、伊織は全然気付いてくれない。


「確かに買ってあるけど……それと、最後何か言った?」

「な、何でも無い」

「そう? まぁ、いいや。 でも美奈、炬燵入ってだらけてるだけじゃん」

「そんな事無いよ?」


そう言いつつも、目の前の籠に積まれたミカンを手に取り、皮を剥き始める。炬燵にミカン、どっちも私の好きな組み合わせ。何も言わなくても用意してくれてる辺り、伊織の私に対する気遣いが嬉しい。だって、伊織って一人暮らししてるせいか、引き篭ってばかりだもん。


「じゃあ、こうしよう。私にゲームで勝ったら美奈の好きにしていいよ。 私が勝ったら私の言う事を聞いて貰う」

「いいよ。 それで何のゲームで競うの?」


これはチャンス! 伊織に勝てば好きにしていい……この機会に伊織との仲をもっと深めて気付いて貰うんだ!


「このゲームなら美奈もやれるでしょ?」

「マ〇オカートね。 分かった」

「じゃあ、自分がプレイするキャラを決めよう」


そう言って、伊織と私は自身がプレイするキャラを選ぶとゲーム開始。プレイエリアは私に気を使ったのか、初心者向けの所だ。

ここで伊織を見返してやるんだから!





ゲーム結果は、伊織の勝ち。

かなり手抜きをしてくれたみたいだけれど、それでも私は勝てなかった。こんなハズじゃ無かったのに……伊織とのキスが……


「私が勝ったから、美奈は私の言う事聞いてよ」

「分かってるよ。 それで? 何をして欲しいの?」

「美奈って、明日もオフだよね?」

「そうだけど」

「じゃあ、今日の夕飯と明日の朝食の用意よろしく」

「え? それでいいの? ……と言うか、ご飯作るって今日は今からとして明日の朝はどうしよう? それとも伊織の家に泊まってて事なの?」

「そう言う事になるかな。 ああ、そうだ! 寝る所、私のベッドしか無いから一緒になるけど良い?」

「え? そ、それは良いけど……」

「じゃあ、決まりだね」


ま、待って! 私、今夜伊織と一緒なの!? 嬉しいけど、どうしよう。伊織は私が好きと言うのは知らないよね? そんな状況で同じ布団で寝るの? そんなの我慢出来ないよ!


「ふふん♪ 美奈の手料理楽しみだ……それと今夜は一緒だから色々と……」


何か伊織が楽しそう…… でも、本当にどうしよう……


「美奈。 取り敢えず家戻って、着替え持って来たら?」

「あ、うん。 取ってくる」





美奈、出て行ったかな?

……本当なら泊まらなくても良かったのだけど、何となく言ってしまった。 後悔は無いけれど、恥ずかしさの方が勝る。 何時かはと思っていたけれど、ずっと言えずにいた。 美奈は、私が気付いて無いと思ってるみたいだが、随分前から “私の事を好き”だと言うのは気付いていた。私も美奈の事が好き。でも、彼女はアイドルだから、同性同士の恋愛は世間に知れたら不味い。事務所にだって内緒にしておかないと、もしバレたら別れさせられるに決まっている。そんなのは嫌だ。

美奈との事を考えていたら、いつの間にか美奈が着替えを持って戻って来てたらしい。


「伊織どうしたの? 何か考え事?」

「この問題が分からなくてね」


丁度、開いていた問題集を美奈に見せる。別に分からない事でも無いが、誤魔化すには丁度いい。


「え……と、 これは……ごめん。私でも分からない」

「そりゃ、そうだよ。これ大学で勉強する問題集だから」

「そ、そうなんだ……って、私たちまだ高校生だよ! 何で大学の問題集やってるのよ!」

「高校の勉強なんて授業聞くだけで分かるから、予習しておこうかと」

「はぁ~ ……伊織が天才なのは知ってたけど、ここまでだとは知らなかった。そりゃ、大学の問題集やってたら学年一位の成績になるよ」


普段引き篭っているくせに、学校へはちゃんと行ってるみたいだし、やる事だけはきちんとやっている。そういうのもあってか、仕事で学校へ余り行ってない私ですら、伊織が学年問わず人気なのは知っている。 だが、伊織は人見知りの性格だから、誰かと付き合うとか友達作って遊ぶとかは無かった。それだけは唯一の救いなんだよね。でも、早く告白しないと何時か誰かに取られちゃうかも。


「そう言えば、夕飯の材料ってあるの?」

「冷蔵庫にある物なら何使ってもいいよ」


そう言われて冷蔵庫の中を確認すると、色々な食材が入ってた。

伊織は独り暮らしだから、必然的に自分で作らないといけないもんね。




******




「ご馳走様」

「お粗末様でした」


手料理なんて滅多に作らないから不安だったけれど、伊織が美味しいと言ってくれて嬉しかった。あんな笑顔が見れるのなら、毎日作ってあげたくなるよ。もっと早くに気付けば良かったなぁ。


「美奈、お風呂沸いてるから先に入っておいで」

「そこは家主の伊織が先でしょ」

「美奈は、お客さんだから美奈が先に入ってよ」

「……一緒に入るのはダメ?」


な、何言ってるのよ私!


「……美奈が良いなら一緒に入ろうか」

「うん」


着替えを持って脱衣所へ行くと、伊織は既に全部脱ぎ終えていた。自然と、その容姿に目が釘付けになる。アイドルやってる私よりスタイルがいいって、どんだけなの!?


「美奈、脱がないの?」


伊織が不思議そうに此方を見ていたので、慌てて着ていた服を脱いでいく。 私だって容姿には自身あるけど、伊織の体見ちゃうと凹むよ。

と言うか、好きな人の裸見ちゃったら我慢なんて出来ないよ!

あんな事やこんな事もしたい……って、ダメダメ!そんな事考えてちゃ! どうにか理性を掻き集めて、伊織にバレない様に頑張った。






「電気消すよ」

「ま、待って。まだ終わってない」


アイドルとして、肌ケアは重要だ。少しでも怠ると大変な事になる。ただ、それだけじゃないけどね……伊織と一緒の布団で寝るのドキドキしちゃうし、お風呂での事思い出しちゃって恥ずかしい。


「お、終わったよ」

「じゃあ、電気消すよ。アイドルも大変だね。肌ケアとかファンの事も大切にしないといけないだろうし、私には無理な世界だな」

「伊織が芸能界デビューしたら、ファンがいっぱい出来そう」

「それは無いよ」


一瞬、伊織が芸能界デビューして、ファンに囲まれているのを想像したら寂しくなった。


「美奈、どうしたの? 急に抱き着いてきたりして」

「え? あっ!」


無意識に伊織に抱き着いていた。想像しただけなのに、本当に離れていっちゃいそうと思ってしまった。 離れなきゃと思ってたら、伊織に抱き締められていた。


「そんな泣き顔見せられたら離せない」

「……好き。 伊織の事がずっと好き。 誰にも取られたく無い……私だけを見て」


言うつもりなんて無かったけれど、溢れる思いは私自身でも止める事は出来なくて言ってしまった。 こんな私なんて気持ち悪いよね、伊織とはもう一緒に居られない。 そう思うと更に涙が溢れてきた。


「私も美奈の事、好きだよ」

「え……?」


唇に柔らかい感触が残る。 一秒二秒と経って、 伊織にキスされたと知った。ずっと願っていた……けれど、叶わないと思っていた。


「美奈が、私の事好きだって言うのは知ってた。ずっと黙っていてゴメンね。 美奈はアイドルだから、ファンや事務所に知られちゃ不味いと思って、ずっと言えなかった」

「ううん。私の事を想って黙っていたのでしょ。それだけ私の事が好きって事なんだよね? だったら怒る事なんて無いよ。寧ろそこまで想ってくれてて嬉しい。事務所には理解してもらえる様に頑張る」

「無理しないでね。美奈がアイドルやってる姿も好きだから、事務所辞める事になる事はしないでね」

「うん。約束する」


今度は私の方からキスをした。

想いが通じあって今まで我慢していた事が一気に溢れて、でも伊織は優しくて全てを受け入れてくれた。

伊織、絶対に離さないし離れないから。


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