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83.残された者

新作投稿まで、あと二週間です。

表紙付きですので是非楽しみにしていて下さいね。

 それから彼女――アメリアとカトレアは常に行動を共にするようになった。


 そしてアメリア自身も、最初は悲観的に見ていたジークやカトレアの職業に興味を持ち、自らの意志で手伝うようになった。


「じゃあアメリアには、この地区の経路を下見してきてもらうわ」


「分かった。下水道も調べておく?」


「うーん……一応お願い。非常用って事で」


「了解、地図は任せて」


 アメリアはカトレア達の為にと、健気に自分の出来る事を奮闘した。


 まだギルドも結成されておらず、数人ほどで活動していた彼等にとって、一人でも多くの協力者がいる事はとてもありがたかった。


 それに美少女であるアメリアは、彼等にとって荒野に咲く一輪の花であり、彼等のやる気をさらに向上させた。


「そろそろあいつに魔法を教えてやってもいい頃だろう。固有能力との相性もいいしな」


 貴族という事もあり、基礎は学んでいたアメリアだが、応用や実践は疎か、まだ自分の持つ固有能力、『癒しの加護』についても詳しく知らないようだった。


「加護持ちね……魔法なら私が教えるわ。そういうの得意だし」


「…………」


 カトレアの言葉にジークは黙り込む。


「なによ……?」


「いや、お前から誰かに教えたいなんて珍しくてな。いつもは頼まれても教えようとしないくせに、あっ……相手がアメリアだからか?」


 カトレアは図星を突かれたかのように、うぐっ! と一瞬言葉を詰まらせ、誤魔化すように早口でまくし立てる。


「……もう、そんなんじゃないわよ。うるさいわね!」


 赤面しながらジークに言われた事を否定するカトレアを見て、これが世にみるツンデレかとジークが呟いた。


 そんなジークをカトレアは怪訝に思う。


「あんた時々変な事言うわよね?」


「……気にしないでくれ、性分だ」


「まあいいわ。それよりアメリアはこれからどうするつもりなの?」


「うちの伝を使いながら妹の情報を集めつつ、自分達を貶めた者に復讐するんだとさ」

「復讐ね……後悔しない終わり方で終わればいいんだけれど」

「俺もそう願ってるよ」


 カトレアとしては、アメリアには裏の世界に関わって欲しくないと思っていた。

 こんな場所に彼女の笑顔は似つかわしくないからだ。


「それでも……貴方は」


 カトレアには強い確信があった。アメリアが自分と同じ場所に来るという確信が。


 それから数日後、正式にアメリアの加入が決定したとジークからメンバーに伝えられた。



 そして新しい家族――メンバーを迎え入れられる祝いの席が設けられる事になった。


 それはカトレアにとって嬉しくもあったし、同時に失望に近い悲しさもあった。


 彼女にはこっちの世界を選んで欲しくない、来て欲しくなかったのだ。



「これでアメリアも俺達の正式な家族だ」


「まあアメリアちゃんは、もう殆ど家族のようなものだったけどな」


「家族ですか……嬉しいです」


「俺達は家族なんだから、カトレアだけでなく俺たちにも普通に話してくれてもいいんだぜ」


「分かった。そうするねジーク! ベルタさん!」


「なんで私だけさん付け……」

「うーん……なんだかベルタさんはベルタさんだから」

「まあ細かい事は気にするなって。俺とそんなに年変わらないだろ?」


 気にするベルタの肩をジークがバシバシと叩く。そんな二人を見て、アメリアは楽しそうに笑っていた。


 今日、この日、仲間に受け入れられたアメリアは晴れて家族の一員となった。


 家族となったアメリアは、端の方でお茶を嗜んでいたカトレアの元にやって来た。


「カトレア!! これからもよろしくね!」


「ええ、よろしく」


 屈託のない笑顔を浮かべるアメリアを見て、ここに来た当初に憑いていた暗い影は、なりを潜めているように思えた。あの日までは。




「まあ、それから色々あったわ。貶めた奴等を探し出したり、妹に会ったりと……これは言わない約束だったわね。忘れてちょうだい」


「ええ、ここからがいいところじゃんかー」

「そうですよ。もう少し話してくれてもいいじゃないですか」


「んー。そうねぇ簡単に言うと、彼女はその後、心の整理をして暗殺者を辞めて、私と冒険者になった。二人で5年ほど旅をした後、ジルバスと結ばれた。はい、おしまい」


「えー」


「ほら、もう日が暮れて来たわ。今日は泊まっていきなさい」


「また後で話してくれます?」

「気が向いたらいいわよ」


 私は、彼女達にテーブルの片付けをしてもらってる間、自室のベッドに飛び込み、その柔らかいシーツに顔をうずめる。


 本音を言うと、いくらジークに頼まれても死んでしまった親友の話はしたくなかった。彼女との思い出は良い思い出ばかりではない。二人で冒険者を始めてからは意見が合わない事も多かった。


 それでも、お互いがお互いを理解し合えていたと思う。


「はあっ……」


 思わずため息がこぼれる。死んでからも私に色んな影響を与えてくる奴だと。


 それにエト達に、昔の事を話していると彼女の事を思い出し、胸が辛かった。



「なんで貴方の方が先に死んでしまったのよ……ばか」


 私はあの日の事を鮮明に覚えていた。




「こんな、こんなことって…………」


 力をつけた彼女が、とうとう自分達を貶めた事件についての真相を知った時、アメリアは一人で復讐の相手がいる場所に向かおうとした。誰の助けも借りず。


 罠だと知ってもアメリアには行かない選択肢はなかった。

 

 死ぬ確率の方が高かった。


「アメリア!! ちゃんとみんなに相談しましょう。それからでも遅くは……」


「ごめんね、カトレア。私、行かないと……」


 私にはアメリアを止められなかった。そして、気づけば彼女の手を取っていた。


「私も行くわ。貴方が行くならついていく」

「カトレア……ありがとう」


 その日の事は後悔はしていない。私がついて行かなければ間違いなくアメリアは死んでいたから。


 でもその選択が正しかったとは思っていない。



「私は……どうすれば良かったの……ねえ、教えてよアメリア……」

ここまで読んで頂きありがとうございました!


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