表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結済み】普通のメイドだったけど王女を失って暗殺者になりました  作者: 水篠ナズナ
2章 絶望と惨禍の始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/133

24,誕生日会前日

今日は10部分まで修正完了。 少し戦闘描写も気持ち増やしました。

 それからの日々は辛かった。 カノン様の誕生日が一週間をきったので、仕事が忙しかったのもあるが、ローラによる嫌がらせが来る日も来る日も続いたからだ。


 カノン様に一度相談してみようかと思ったが、今カノン様達は帝国との会談で公式に手を取り合う事が決まり、その段取りでとてもお忙しいのだ。 だから私なんかの個人の悩みを聞いている時間はないだろう。 迷惑になってしまう。


 言えば何かしらの対応は取ってくれると思うけど、自分の事は自分で解決したいし、カノン様に迷惑はかけたくないからね。


 ミザリーから聞いた話によるとなんでも、帝国の皇帝が第一皇子の事で頭を下げ、正式に謝罪をしたのだそうだ。 その上で戦争をする意思がない事を表明し和平を申し出た。


 陛下も謝罪を受け入れ、和平をとりおこなう事を決め、両国で正式に戦争の終結が発表される事がその場で決まった。長く続いた争いに終止符がうたれたのだ。


 詳しい内容はティナ様が疲れて寝てしまったため、ミザリーがティナ様を簡易のベッドに運び、側についていたため聞いていないそうだ。


 私への嫌がらせは服を切り裂かれるような事は無かったが、廊下で会うとワザと肩をぶつけられ「そこに居ましたの、気付きませんでしたわー」なんて言ってくるのだ。


 私は勿論笑顔で無視。


 他にも私の食事だけ減らされていることもあった、料理人さんに聞いたらもう他の人が部屋に持って行った筈だけどと言われた。


「あぁ、そうなんですね。 じゃあもう届いてるのかな〜」

 

 私は笑って誤魔化すしか無かった。


 その日はシズルちゃんに分けて貰ったが何処まで彼女がやっているのか分からない。


 私の黒い噂は事故となった筈なのだけれど、服を破いた事以外に様々な噂が飛び交っているらしい。 私が雇われメイドに文句をつけたり、料理が不味いと言って料理を捨てたりなど私の株を下げる内容の噂ばかりが流れているようだ。


 それが原因なのか、それともローラに命令されているのか分からないが、廊下で出会った雇われメイドさん達に挨拶をしたが無視されてしまった。


 少し話を聞こうとして、窓を拭いていた人の良さそうなメイドさんに声をかけたが首をフルフル振るいながら「ごめんなさい」と言われ逃げられてしまった。


 私は久しぶりに泣きたくなった。


 その夜、ミザリーやシズルが気にしない方がいいと私を慰めてくれた、私たちは信じているよと。


 二人がいつも通りに接してくれたのがとても嬉しかった。


 明日はいよいよ誕生日の前日だ、カノン様の為に美味しいケーキを作らなきゃね。ベッドに潜り込んだ私はこみ上げてくる涙を必死に堪えた。


 それでも枕は少し湿ってしまった。


 翌朝、殆どの準備を終えた他の使用人達がひと休みしている中、私は厨房へと向かっていた。


 ミシェラさんに短く挨拶をした後、ケーキ作りを始めた、この日の為に私は練習を積み重ねてきたのだ。


 厨房には明日の誕生日会で使われる食材がたくさん準備されていた。そのどれもが高級品で私みたいな下級貴族が普段は食べられないような物ばかりだった。


 誕生日会には普段来ないような貴族もお祝いに集まってくる為、当日は人で溢れかえる事だろう。


 私も明日はカノン様に会いに来た客人などの給仕をしなくてはならないから忙しくなるだろう。 本当はカノン様以外のお相手なんてしたくないけど致しかたない。


 これも仕事だと思って諦めよう、うん!


 二時間ほどでケーキが完成し厨房内を果物の甘い香りが漂っている。 いい匂い、少し味見してもいいかな、いやいやカノン様に最初に食べてもらいたいから我慢我慢。


 ケーキを載せるトレイが厨房内を見渡したがなかった為、少し離れた第二調理室に取りに行くことにした。 誕生日会の準備であらかたトレイが使われているんだろう、一つくらい残ってくれているといいけど。


 私は厨房を出て調理室へと向かった。


  ◇◇◇

 

 トレイを持って戻って来た私は思わずトレイを落としてしまった、丸く綺麗に作った筈のケーキがぐちゃぐちゃにされていたのだ。


「うそ……一体誰がこんな事を……」


 私の落としたトレイの音に驚いたミシェラさんが厨房の奥から目を丸くしてやって来た。


「どうしましたか?!……これは」


 すぐにミシェラさんも状況を把握したようだ。


「エト様にお怪我はありませんか?」


「はい、私は大丈夫です。 ですがケーキが……」


 私の作ったケーキはみるも無残な姿にされていたのだ。 果物は潰され、ケーキは抉られ中の果物が丸見えになり酷い姿になっている。


「外からはエト様以外の方は入られてないのでこれは内部の犯行ですね、ウチの料理人の誰かがやったのでしょう。 どうしますか犯人を捜しますか?」


 ミシェラさんが心配そうに私に問いかける。


「……いいえ捜さなくていいです、見つけた所でケーキは元通りにはならないんですから」


「……分かりました。 でしたら私に何か出来ることはありますか?」


「ケーキの材料ってまだ残っていますか、もう予備がなくて」


「申し訳ございません、私達の方も個人に渡せる材料が残ってないのですよ。ですが……」


 ミシェラさんは私の崩れたケーキを指ですくい舐めた。


 あーーーーーカノン様に渡す筈の一口目が奪われた!


 その場で電撃を浴びせようかと思ったが本人にも悪気はなさそうなのでやめた。


 私の様子にミシェラさんは少し訝しんだが気にしないことにしてくれたらしい。


「とても良い味ですね。崩れてしまっている為、他の料理と一緒に並べる事は出来ませんが棄てるのは勿体無い。 取り分けて渡したい方にあげてみてはいかがでしょうか? カノン様も喜ぶと思いますよ」


「それもそうですね。 では同僚の分も取り分けておきましょう」


「ええ、同僚の方もきっと喜ぶと思いますよ」


 ミシェラさんは私が他のメイドにどういう風に扱われているのか知らないんだろうなぁ。


 本当はローラなんかに食べさせたくはないが一人だけあげないのはやり返しにしてはあからさま過ぎるだろう。

 

 カノン様の心象も悪くなっちゃうしね。


 私はケーキを八等分に切り分け、紙に名前を書きどのケーキが誰のかを分かるようにした。 ワザと大きく切ったケーキにはカノン様と書いておいた。


 取り分けたケーキは責任を持ってミシェラさんが大切に保管してくれるそうだ、冷蔵庫に入れておけば明日までは持つだろう。


 その後、片付けをし厨房を使わせてもらったお返しに皿洗いや調理器具などをピカピカにした。


 ミシェラさんにはそこまでしなくていいよと割と本気で止められたが私の気がすまないので最後までやらせてもらった。


 私はミシェラさんに、「ティナ様とのケーキ作りの時から何から何までお世話になり、ありがとうございました」と改めてお礼をした。


 ミシェラさんは少し恥ずかしそうにしていた。


 厨房から出て、窓の外を見るともう日が暮れかけていた。 なんと丸一日厨房にいたらしい。 私は急いで調理用のエプロンを外しメイド服に着替えるとカノン様の部屋へと向かった。


 夕方に明日の最終確認を行うと言っていたのでもう始まってるかもしれない。 遅れるとまたローラに何を言われるか分からない私はとにかく全力で走った。


 掃除までした私のバカーーー!


 ドアを開け部屋に入ると意外にもローラはまだ来ていなかった。


  ◇◇◇


  此処は厨房内、一人の人物が奥から出て来た。


「これで良かったのですか、貴女様の分もありましたよ」


「貴方は私の言うことを聞いていればいいんです、頼みますわよ」


 彼女はそれだと言い残すと急いで出て行った。


  ◇◆◇◆◇


 夜中一人の男が厨房に入り、迷うことなく一つの冷蔵庫を開けた。 中に入っていたケーキの一つを取り出すと、ポケットからポーションのような物を取り出し中の液体をふりかけた。


 ケーキは一瞬色が濁ったがすぐに元の色に戻った。 男はケーキを戻すと今度は誕生日会用の食材に足を運んだ。


 ポケットから別の色の液体を取り出すと、食材にひとつ残らずふりかけていった。


ここまで読んで頂きありがとうございました!!

 

エトが折角作ったケーキを崩した奴許せませんよねー! 成敗してやります!!


 ブックマーク、評価、感想、レビュー、紹介、リンクなど、もろもろ全て歓迎致します! 


 皆様の一手間が更新の励みになります、どうぞこれからも宜しくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ