17.ウルティニア第二王女
プロローグとエピローグ少し加筆致しました。
廊下を小さい影が何か叫びながら走って来る。
「エトちゃーーん! プレゼントは決まったー?」
ボフゥー。 勢い余って私のお腹に飛び込んできた。 咄嗟に受け止めたものの、私のお腹は一定のダメージをくらったようだ。 ぐふっ。
「ぐっ……いつも言っているじゃないですか廊下を走ってはいけないと」
「えへへ、ごめんねー。エトちゃんを見たら走りだしたくなっちゃって」
遅れて護衛の者達が小走りでやってくる。 ご苦労様です。
この大層、天真爛漫な少女はウルティニア第二王女様だ。
ひょんな事から私はウルティニア様に気に入られてしまった。
あれは去年のカノン様の誕生日祝いを買いに街に出かけた時の事。
王都の下町で買い物をしていた時、花屋の前でウロウロしている子に目が止まった。
ん、あれ? あの女の子どこかで見た事あるな。
黄金の金髪に碧眼の十代前半に見える美しい少女は何やらキョロキョロしている。
迷子なのかな。
服はとても綺麗なのでどこかの貴族のご令嬢だろう。
恐らく従者の者とはぐれてしまったのだろう。
すると少女は何を思ったか、路地裏に入って行った。
ーーー!! 何やってんのあの子護衛も付けずにあんな所に入ったら誘拐されるよ。
いくら王都の治安が良いといっても路地裏までは警備の目が完全には行き届いていない。
私はすぐさま後を追った。
私の危惧していた通り、少女は見るからにガラの悪い連中に取り囲まれていた。
「ねぇお嬢ちゃん。どこから来たの? 他に人いないの? ここには悪い大人がいっぱいいるから近づいちゃダメだよ」
「そうそう、君みたいな可愛い子は襲われてボロボロにされた後金持ちに売られちゃうんだよ」
「「「「ギャハハハハー」」」」
男の一人が彼女に手を伸ばした。
少女は怯えた表情でいやいやと首を振っているが恐怖のあまり動けないようだ。
私は飛び出した。
「お兄さん達。そんな子に手を出すより私と遊びましょうよ」
「あぁ、なんだよガキか。 ここはガキが来る所じゃねぞ」
おいてめぇ、今どこ見て言った。
「なんだお前も混ざりたいのか。 俺たちにお尻を振るっていうなら歓迎してやってもいいぜ」
「あ〜キモいし、うるさいし、ほら遊んでやるからかかってきなよ。 クソハゲ野郎!」
「てめっ〜〜〜俺様の一番気にしてる所言いやがったな! 絶対許さねぇ。 犯して口もきけなくしてやるよ」
男は私に殴りかかって来た。 私はひょいっと躱すと男のみぞおちに膝蹴りを叩き込んだ。 こんな奴ら魔法を使うまでもない。
「ぐはぁっ」
男は口から汚物を吐き出してその場に倒れ込んだ。
こいつ腹の中もろくなもの食べてないわね。
「このガキ! 兄貴をよくも」
「女だからって容赦しねぇーぞ!」
「ぶっ殺してやる」
男達は一斉に襲いかかって来た。まず私は、私の事をガキだとか言いやがった男の急所を蹴り上げると、そのまま顔面にパーンチしてあげた。
男は急所を抑えて悶え込んでいる。
残る二人の男も手刀で首の後ろを叩き意識を刈り取った。
後には男達のうめき声だけが残った。
私はまだ震えている少女に怖がらせないようゆっくり近く。
「大丈夫だった? 怪我はない?」
少女は私の問いに軽く首を縦に振った。
「うん大丈夫。助けてくれてありがとう」
「どう致しまして……ところで貴方付き添いの人はいないの?」
「あ、それはね……」
「お嬢様ーーーー! どこにいらっしゃるんですか」
「あーみんなこっちこっち」
ぞろぞろと騎士の方々がやって来た。 あれ見た事ある人がいる。
もしかして王族近衛兵?
……という事はこのお方は第二王女のウルティニア様?!
やばい、いつも見る時と服装も髪型も違うからわからなかった。
「も、もしかしてウルティニア様ですか?」
「あら私が分かるの? んん、よく見れば貴方お姉ちゃんのメイドさんじゃない! 全然分からなかったわ」
それはお互い様だよ。
「お嬢様こちらの方は?」
「私を助けてくれたんだよ〜。えっ〜と確か名前は……」
「エト・カーノルドです」
「あぁそうそうエトちゃんだよ。 みんなも選考会に居たから分かるでしょ?」
エトちゃんって……まぁ可愛いからよし。
そういえばウルティニア様は専属の人が居ないから近衛兵の人が護衛してるんだっけ。
近衛兵の人は転がっている男達を一瞥し。
「これはこれはお嬢様を助けて頂きありがとうございました」
深々と近衛兵のリーダー的な人がお辞儀をした。
姫様の名前を出さない辺りしっかりしてるなー。あ、私はしっかり名前を叫んじゃた。
「いえ、当然の事をしたまでですよ、ところで何故お嬢様は先程まで一人でいらしたのですか?」
「それはですね……」
「私が勝手に城を飛び出して来たからだよ」
無許可で来てるのかよ。
「なんでもカノン様の誕生日プレゼントを買いに行くと聞かなくて」
「あ、それなら私も買い物に行きますし、私がお嬢様に付き添いましょうか?」
「それはいい考えね。じゃあみんなは帰った帰った」
「そういう訳には行きませんよ私達の役目はお嬢様守る事にあるのですから」
他の近衛兵の人もうんうんと頷いている。
「心配ないわ。エトちゃんはお姉ちゃんのメイドで信頼できるしすっごく強いもの。怖い人たちを一瞬でやっつけちゃったんだから」
「た、確かにそのようですが……」
近衛兵の人も下に転がっているゴロツキを見る。
「私の言葉が信用ならない? 私の固有能力は見破るよ。 人の心の内を覗けばどういう人間なのか色で判断出来るのだから私の人を見るめは確かよ」
つまりウルティニア様は人柄を色で見分ける事が出来るということか、本能的な直感みたいなものなのだろう。
「じゃあこうしましょう。 皆さんは離れた場所から守って下さいまし。私の隣にはエトちゃんがいるから平気でしょ。 エトちゃんもそれでいいよね?」
もちろんでございます。私は貴方が隣にいるだけで幸せですよー。
「お任せ下さい。 決してお嬢様には傷一つつけさせません」
「う〜固いなー。 私の事はティナって呼んで」
「ーーー!! か、畏まりましたティナ様」
その様子を見て近衛兵の人も諦めたご様子だ。 ゴメンね近衛兵のおじさん。
「分かりました、私達は離れた所におりますので何かあったらすぐにお呼び下さい。 エト様どうぞお嬢様の事をよろしくお願いします」
もう一度近衛兵のおじさんは深々と頭を下げた。
「畏まりました。 私にお任せください」
やったね可愛い女の子とデートだデート。 こんな事知られたらシズルとカノン様に何やってんだって怒られそう。
まぁいっか。
男達は街の警備員の人に連行していってもらった。
彼等は自分達が襲った少女が王女だったと知って青ざめていた。これに懲りてこんなまねは二度としないでほしいね。
その後、私とティナ様は日暮れまで買い物を楽しんだ。
当初の目的を忘れるくらいには。
そして最初いた花屋さんに戻って来た。
「この花お姉ちゃんに似合うと思うの、エトちゃんはどう思う?」
「私も同感ですね。 今年の誕生日プレゼントはこれにしましょうか」
「うん、私達二人のプレゼントだね!!」
私は二人で半分ずつお金を出してカノン様に似合いそうな黄色の百合の花を買った。
その後私達のプレゼントを受け取ったカノン様はとても喜んでくれて、私達の買った花を枯れるまで自室に飾っていた。
ティナ様は枯れるまでお叱りを受けたようだ。
私? 私はシズルちゃんに少し文句を言われただけだよ。
そんな事があり私とティナ様は知らない仲ではないのだ。
カノン様大好きという点ではとても気が合い色々やり過ぎてしまうくらいだ。
今年もカノン様の誕生日が近づいて来たのでティナ様も張りきっているようだ。
「ねぇエトちゃん今年はどうする? また何か贈る?」
上目遣いで私を見てくるティナ様かわいい。
「シズルに相談したら、何か作ってみたらと言われたので誕生日ケーキを作るなんてどうでしょう。 真心を込めて作ったものならカノン様も喜んでくれると思いますよ」
「シズルさんから手作りケーキ……いいわね! 早速作りましょう」
え、シズルさん? 私はちゃん付けなのになんでシズルはシズルさんなの。
ねぇ、何で判断してるのかな? お姉さんに教えてごらん。
「えぇっ今すぐ作るんですか? まぁ、私も暇ですしいいですけど。 練習と思ってやりますか」
かくして私はティナ様に連れられて厨房へと向かうのだった。
美少女エトちゃん、ティナちゃんのケーキ作りいざ、スタートです。
え、私は美少女じゃないって? そんな事ないよ私だって可愛いもん。
ここまで読んで頂きありがとうございました!!
次回もウルティニア回が続きます。
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