16.新しいメイド
少し更新遅れてしまい、申し訳ないです。
「今日は皆に紹介したい方がいます」
カノン様は朝の集会時に元気よく言った。 可愛い。
カノン様に押し出させるように、燃えさかるような赤色の髪をした少女が歩み出て来た。
歩み出た少女は、一瞬私の方をキッと睨んだような気がした。
「皆様お初お目にかかります。 今日からカノン様の専属メイドになる、フリーダ・ジェロシーです。 どうぞこれからよろしくお願いします」
フリーダと名乗った少女は、綺麗な礼をした。 教育が良いのだろう、その動作は実に綺麗で洗礼されている。
ん、てかなんでメイドが追加されるんだ。 五人までじゃなかったっけ?
私達が、揃って困惑しているとカノン様が説明してくれた。
「フリーダは宰相や大臣の強い勧めで特別に加わる事になったの。 勿論、お父様達も了承済みよ」
元々はフリーダが選ばれていたため強く断る事が出来なかったのをエトは知る由もない。
「じゃあフリーダは実践経験豊富だからエトとシズル達の方に加わろうか。エトとシズルもフリーダから学べる事は多いと思うわよ」
フリーダ・ジェロシー。数ある貴族達の中でもジェロシー家は特に有名だ。
位は子爵だが、能力は特異で一族が代々固有能力を継承している。ジェロシー家の固有能力は炎で、敵を殲滅するのにとても適していて密かに王国の矛と呼ばれている。
ジェロシー家はその能力を遺憾なく発揮し戦争や魔族が攻めてきた時など自ら先頭に立ち、敵を屠っていく様は味方から見たら英雄だろう。 敵から見たら悪魔にしか見えないだろうが。
女だろうが次男であろうが、はたまた四女のフリーダであったとしとも炎の能力を引き継いだ者が次の当主になると決まっている。
そう、フリーダの固有能力は炎なのだ。
フリーダの武功は田舎貴族である私の所にまで届いていて、王都の民からは密かに鬼姫っていうあだ名がつけられている位だ。
そんな数々の戦果を誇っていながら、何故ジェロシー家は子爵位なのかというと、簡潔にいうと素行が悪いのだ。
ジェロシー家は嫉妬深く、一度恨まれると地の底まで追いかけて来るという。
今のジェロシー家が出来たのは、身分違いの恋が始まりだと言われていて、一介の使用人の女がジェロシー家の当主に恋をし、その妻となる為に様々な事をして夫人の座を掴んだという。 自分の邪魔をする者は徹底的に追い詰める。 それが彼女のやり方だったそうだ。
そして、その次の代からの子供に炎の能力が備わったという。
まるで女の心を表しているみたいだよね。 怖い、怖い。
彼女の邪魔をした者は、無実の罪を着せられ没落させられたり。暗殺者を雇って、みるも無残な姿にし晒し上げたりしたと言われている。
そこから復讐の鬼と呼ばれ、彼女に一度火をつけたら誰にも止められないという逸話がある程だ。 それくらいジェロシー家は有名で、彼女ほど理不尽な生き物は居ない。
話がそれてしまったね。つまりフリーダには恨まれるような事をしないこれを徹底していこう、これから同僚になるわけだし。
はい、私は絶対に邪魔しません!!
既に恨まれているとは微塵も思っていないエトであった。
フリーダも加わり今日から護衛兼メイドも三人で行う事になった。
まずは仕事に慣れて貰うという事で補佐という形でついてもらう事になった。 仕事に慣れたら一人で任せるつもりだ。
フリーダはみるみる内に仕事を覚え二週間もすれば私達と同じくらい出来るようになった。 お風呂の時はちょっと焦ってたけど。
まぁいうて仕事あんまりないしな。
今日はシズルが担当なので私は自室で自習していた。
すると部屋の戸を叩く音がする……誰だろう?
入室を促すと入ってきたのはフリーダだった。
「どうしたのフリーダ、何か用?」
同僚なので言葉使いは崩している、ローラにも崩して話しかけているがあまりいい顔はしない。
「一つエトに言っておきたい事がございまして」
「なに?」
「私はジェロシー家の次期当主として宣言します。 私はあなたを絶対に許さない」
「〜〜! どういう意味、私が何かした?」
「しらばっくれないで下さい。 元々あなたが選ばれて居なかったのは知っています。 どんな卑怯な手を使って選ばれてたのかは知りませんが、私を落とした事には変わりありません」
「そんな事知らないよ。 でも今フリーダもメイドになれてるからいいじゃん」
「そういう問題ではないんですよ、貴方が良くても私のプライドが許さないんです。 幼い時からの思いを貴方なんかに邪魔されるなんて……」
ダメだこいつ全然私の話聞いてくんない。
「それとローラさんから聞きましたよ。 あなたが不正をして選ばれたと」
……ローラからだと! あの野郎。
「そんなのただの言いががりじゃない! 証拠もないのに勝手に決めつけないで下さい」
「確かに証拠はありませんわ。 でも絶対にあなたの不正を暴き没落させてやりますわ!」
フリーダの目は血走っていて、とてもまともは思えない。
「これから先の日々、楽しく過ごせるなど思わない事ですね」
そう言って彼女は部屋を出て行った。
私はこの時彼女の事を甘く見ていたのだろう。
私はもっと必死に身の潔白を訴えて、もっとフリーダの話に耳を傾けて寄り添っていたら良かったのかもしれない。
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