「メス堕ち」
診断メーカーのアレから書こうと考えつきました。
「女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡許ひ゛ッ♡女の子です゛ッ♡♡許ひ゛ッ♡」
「メス堕ちとはね……興味深い」
俺は、昨日まで橋口健太という高校2年生の男だった。なぜ過去形かって? 今は体が女になってるからさ。いや、されたからだけどな……。
原因は、5コ上の兄、橋口遼太郎による何やら怪しげな実験だった。コイツは、部屋でよくわからない薬品やらを調合したりするのが趣味で、今回はそれに巻き込まれた形だったが……。寝てる間の出来事で、俺は自室まで漂ってきたその薬品を、吸ってしまったらしい。
その結果が冒頭の醜態に繋がったわけで……。
「ごめんな、健太。兄ちゃんはな、しっかりガスマスク着けてやってたから、何も異変は起きてnウガッ!」
腹が立ったから鳩尾を殴ってやった。
「ごめんな、じゃねーよ! どうすんだよこれ! 戻せるのか!?」
今はそれだけが気がかりだったが、対する返事は絶望的なものだった。
「残念ながら無理だ。最初に対になる薬を用意しておけば問題なかったが、こっちを作ってから、……その、薬瓶を割っちゃってね。揮発性の薬だから回収は不可能だし、それに調合の比率も適当にやってたら成功しただけだから、新たにも作れない。そんな代物の対抗薬を、現物が存在しない状態で、完璧に作れるとでも?」
「なっ! それじゃあ俺は一生このままってことか!?」
「……あー、妹として可愛がってあげるから、我慢してくれとしか……」
「そんな……」
なんてことだ……。まさか巻き込まれてメス堕ちだなんて。人生は何が起こるかわからない。ってレベルを軽く超えた事態になってしまった。
受け入れ難い状況ではあるが、自分の体の安否も確認しなければ。全身を把握するために、風呂の大きい鏡の前に立ち、服を脱ぐ。
マイサンは当然消滅しており、胸は少し膨らんでいる。だいたいBくらいか? 筋肉は落ちてないように感じるが、全体的に少し丸みを帯びている。これが女性の体か。
「おーおー、大変なことになってますなぁ。ほんと、申し訳ない」
まるで他人事のように!!
「申し訳ないと思ってるなら見るなぁ!」
「おー、怖い怖い」
体を隠すようにしゃがみこむと同時に、心が少し動いていることに気づいてしまった。今までは、同性に裸を見せるくらいは問題なかったのに。
そこで、ふと思い出す。
「揮発性ってことは、まさか、他にも被害者が!?」
「多分いるね……恐らくだけど、ここの近所の若い男性はやられてるんじゃないかな」
結構多い!
他の人も気になり、すぐに服を着て外に出ると
「許ひ゛ッ♡ごめんな゛さい゛ッ♡許ひ゛ッ♡お゛ッ♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡」
「ごめんな゛さい゛ッ♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡ごめんな゛さい゛ッ♡女の子です゛ッ♡♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡」
「許ひ゛ッ♡女の子です゛ッ♡♡ごめんな゛さい゛ッ♡ごめんな゛さい゛ッ♡お゛ッ♡」
「ごめんな゛さい゛ッ♡許ひ゛ッ♡女の子です゛ッ♡♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡お゛ッ♡」
「許ひ゛ッ♡お゛ッ♡女の子になりま゛すぅッ♡♡♡♡ごめんな゛さい゛ッ♡ごめんな゛さい゛ッ♡」
薬が丁度作用し始めたのか、そこは地獄絵図だった。
事態の大きさに恐れを為した兄は、バレなきゃ犯罪じゃないとかぬかして、どこかへ立ち去った。
そして、この事件は後に、この町の都市伝説として、語り継がれるのだった。
おしまい
とんでもないものを生み出してしまった。