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異世界の飛鳥4

お姉ちゃんと他愛のない会話をしていたらあっという間に玄関前へとたどり着いていた。

やはりお金持ち、玄関の扉も立派で大きい。



「なんか改めてお姉ちゃんを見直した気がする。」


「何?今までは馬鹿にしてたの?」


「そういうわけじゃないよ。今まではお姉ちゃんがお嬢様だって聞いてたけどあんまり実感なかったの。けどこんな大豪邸に来たら本当にお姉ちゃんってお嬢様なんだなって思って。」


「そうよ、もっとあがめなさい。」


「・・・前言撤回。」


「ごめんなさい。」


「もう。・・じゃあ開けるね。」



私は扉を開けた。

開けてすぐに見えたのは豪邸らしいエントランスホール。

こんなの初めて見た。

と、その光景に見惚れながら周りを見渡してみると正面に老いた男性が立っているのに気が付いた。



「お待ちしておりました、お嬢様。」


樫山かしやまさん、お久しぶりです。」



どうやらこの家の執事さんみたいだ。



「この子が例の飛鳥です。父上から話は聞いてますよね?」


「ほう、この方が・・・。」



お姉ちゃんが私を紹介すると執事さんの目つきが変わった。

私はそれに対して怯み一歩下がった。



「樫山さん、そんな怖い顔をしないでください。飛鳥が怖がっています。」


「・・・申し訳ありません。では、案内します。お嬢様、そしてそちらのお連れの方もこちらです。」



私はそれについていこうとする。

だが、お姉ちゃんが動かなかったのを見て足を止めた。

お姉ちゃんはなにか頭を抱えているみたいだった。



「・・・やっぱりこうなったか。」


「え?どういうこと?」


「樫山さん、私わかりますので自分たちで行きます。」


「いえ、お荷物などがありますし。」


「手荷物程度なので大丈夫です。さ、飛鳥いきましょ。」


「う、うん。」


「お待ちください、そちらは・・・」


「まずお父様に挨拶しに行きます。」



私はおとなしくお姉ちゃんについていく。

樫山さんはお姉ちゃんにしたがってその場で待機し、私たちが見えなくなるまでずっとみていた。







「しゃべらないって言ったじゃない。」


「ごめん、お姉ちゃん。」



樫山さんが見えなくなったところでお姉ちゃんは元の口調で私を叱った。

この豪邸のことで頭がいっぱいになって出発前のお姉ちゃんの言葉を忘れていた。



「・・・まあいいわ。けどこれから気をつけてね。」



「・・・お姉ちゃん、何か理由があると思って聞かなかったけど何か問題あった?さっきの執事さんも態度がどこかしらおかしかったように見えたし。もしかしてやっぱり私が養子になることに問題があるんじゃ・・・。」


「・・・飛鳥は鋭いわね。いや、私が隠すのが下手なだけか。・・・飛鳥の言った通りあなたの養子の件で親族や使用人が反対しててね、今説得中。でも気にしないで、絶対に認めさせるから。」


「説得中って・・・そんな状態で私に話したの!?」


「別に頭の固い分家の許可なんて無くてもゴリ押せるっちゃゴリ押せるから。結果だけどうにかしておけばあとは何とかなるものよ。」


「それは・・・私が納得できないんだけど。ちゃんと他の人たちからの了解を得てからそういう手続きしようよ。」



とは言ってももうそれはおこなってしまった後みたいなので、今更言っても遅い気がする。

それはわかっているし、もう私自身は養子の話を了承してしまったので、お姉ちゃんの手法は半ば不服であるけど反対せずに廊下を歩いていくお姉ちゃんを追いかける。

お姉ちゃんは私の注意にあまり悪びれることもなく



「ごめんごめん。けどもうやっちゃったことだし、今回は大目に、ね?」


「はぁ・・・。ほんとお姉ちゃんって・・・」


「いつもそうやって勝手に話を進めるんですね。」



突然した声に私とお姉ちゃん二人して振り向いた。

そこには私と同じくらいの歳の女の子が立っていた。

お姉ちゃんはその少女を見て先ほどまでの笑顔が消えた。



「・・・椿。」


「お久しぶりです、お姉様。」



お嬢様らしく丁寧にあいさつをする。

お姉ちゃんは何か後ろめたいことがあるのか何も言わず椿と呼ばれた少女から目を逸らす。



「今日はどのようなご用件で?」


「この子の養子縁組のことで父さんと話すためよ。」


「この方ですか?」



椿さんは私をまじまじと見てくる。

私は今度こそお姉ちゃんの言うことを意識して何も言わずにお辞儀する。



「そうよ。あなたも話は聞いてるでしょ?」


「ええ、もちろん。なんたって次期当主ですから。家を捨てたお姉様とは違います。」


「・・・・。」



お姉ちゃんは黙ってしまった。

椿さんはそんなこと構わずお姉ちゃんに続けて言う。



「それに、この方の養子縁組の話ですけど私は認めませんよ。立場を考えてください、あなたは家を捨てた人間です。そんなことを言える力などこの家では・・・。」


「捨てたのは家督だけよ。それに父さんからの許可はもらってる。現当主の了承を得ているんだからあなたがどうこう言う必要はないはずよ。」



お姉ちゃんは他にも言いたいことがありそうだったがなぜかそれを言おうとしてやめた。

しかし椿さんはそれに気づかない。



「そうですね、お父様が決めたなら仕方がありません。ですけど覚えておいてください。あなたのやろうとしていることは他の親族の方々からあまり良いようにみられていないと。なのでもし今家長が変わることになればお姉様は完全に家から追い出されることになりますよ?」


「心配してくれてありがとう。でも大丈夫よ、その時になったらその時で手は打ってあるから。」


「・・・・・やっぱり昔と変わりませんね。常に相手の一手先以上をいこうとする・・。」


「そうじゃないと不測の事態への対応が遅れるからね。あらゆる局面を想定していないと経営者としてうまくやっていけないわよ?」



椿さんはお姉ちゃんを睨みつけた後、最後にこう言った。



「・・・・なら、戻ってきてよ。」



椿さんはそう言って私たちの間を通り抜けて私たちが行く方向とは反対の方向へ歩いて行ってしまった。



「・・・。」



そしてお姉ちゃんは何も言わず、振り返って椿さんを見ることなく自分の行く部屋へと歩き始めた。



「あの・・・、お姉ちゃん・・・。」


「言いたいことはわかってる。・・けど、今は聞かないで。」



お姉ちゃんの声のトーンは落ち着いたものであったが、その中にイラつきが見えた。

私はそれに触れるのが怖くて今はそれ以上言おうとはしなかった。

音鴨おとがも 椿つばき


大企業音鴨グループの社長令嬢にして次期当主。

数年前は鈴がその位置にいたのだがとある事件をきっかけに鈴が家を出たため妹である椿がその位置に着くことになった。

本編とは違い、姉妹仲はこの時あまりよくなく姉に対してよそよそしい態度をとっている。

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